8ミリ映画は良い夢のようなもの

前回の更新では、昔、私が趣味にしていた8ミリ映画についても触れました。

デジタル時代の今は、スマートフォンにも動画撮影機能が搭載されています。また、YouTubeのような動画共有サイトができたことで、個人が動画を撮影するばかりでなく、自分が撮った動画を不特定多数の人向けに簡単に配信できるようになりました。

私が8ミリを趣味にしていた頃は、普通の個人が映像を撮影することは限られたことだったように記憶しています。同年代で、8ミリをやっている人はいませんでした。

ましてや、自分が撮影した8ミリフィルムを、家族以外の人に見てもらう機会など皆無でした。

当時はもちろんインターネットもありません。8ミリが一般的な趣味でなかったことで、新聞やテレビがそれを話題にすることもありませんでした。

そのため、情報は雑誌から得るしかありませんでした。

8ミリを始める前から、私はある月刊雑誌を定期購読し、毎号、楽しみに目を通しました。玄光社から出ていた『小型映画』という雑誌です。

8ミリに特化した雑誌のため、記事も広告も8ミリに関するものばかりです。

どんな分野でも詳しい人がいます。8ミリの世界にもそんな人がいて、雑誌で詳しく書いていました。そんな記事にわくわくしながら目を通したものです。

雑誌を眺めているだけでは満足できなくなり、自分も8ミリの撮影をしたくなりました。

私は、富士フイルムシングル8方式を選び、親にねだって初めて買ってもらったカメラはフジカシングル8 Z450というモデルです。450というのはレンズのズーム倍率を表しています。4.5倍のズームレンズがついていました。

フジカシングル8 Z450
私のオンボロ8mmカメラ フジカシングル8 Z450

私の家で顔なじみのカメラ店へ父親と一緒に買いに行きました。

そのとき、店の人が、ニコン製の8ミリカメラを参考に見せてくれたのをよく憶えています。その後にニコンからR8とR10というモデルが発売されましたが、それに切り替わる前のカメラです。

ニコン R10 スーパー

カメラ名は憶えていませんが、とても高品質のカメラでした。実際に手に取り、ファインダーを覗きながら、ズームレバーを操作したりしました。

とても滑らかにズーミングができました。

私は、自分が買う予定だったZ450をやめ、そのニコンの8ミリカメラが欲しくなりました。しかし、それは自分の中だけで押さえ、予定通りのカメラを買いました。

あのとき、ニコンの8ミリカメラを手に入れたら、それはそれで満足しただろうと考えたりします。

8ミリの時代に、今は当たり前の、オートフォーカスはありませんでした。すべて、自分でフォーカスを合わせなければならないマニュアルフォーカスです。

8ミリカメラの専門誌『小型映画』には、繰り返し、8ミリカメラの扱い方を指南する記事が載りました。その中には、フォーカスの合わせ方もありました。

フォーカシングスクリーンは、マイクロプリズム・スピリット方式だったように記憶します。

今からすると特徴的だと思うのは、「そのズームレンズの最望遠にしてフォーカスを合わせ、そののち、自分が撮影したい焦点距離に戻して撮影する」といったように書かれていたことです。

今のカメラはオートフォーカスですから、そのように指南されることはありません。しかし、理屈は理解できます。

レンズは、焦点距離の数字に比例するように、被写界深度が浅くなります。要するに、フォーカスの合う前後の幅が薄くなるということです。

その原理を利用して、より正確にフォーカスを合わせようというわけです。

過ぎ去った遠い昔は、夢のように思えます。私にとっては、懐かしい良い夢です。8ミリカメラで撮影した父も母も姉も今はこの世に存在しません。家族を撮影した私もやがて、いつの日か世からいなくなります。

普通の個人が撮影した個人記録は、関係者がいなくなったあとは、消える運命にあるでしょう。

それでいいのだと思います。