清張の持ち味は守備範囲の広さ

前回に続き、酒井順子氏(1966~)が、松本清張1909~ 1992)の作品に登場する女性を彼女の視点で分析した『松本清張の女たち』からの話題です。

本書はまもなく読み終わります。

本書では、女性が良くも悪くも「活躍」する作品を抽出し、そこで見せる女性たちの行為と、それを描いた清張の考えなどが推測されています。

清張作品の全貌を知らなければ、とても一冊にはまとめられません。私も清張作品にはそれなりに馴染んでおり、読んだことがある作品が多く登場します。

しかし、私の場合は読み終わると内容を細部まで憶えていません。ですから、酒井氏の本書を読み、あの場面はそうだった、と思い返すことの連続です。

清張の作品は、登場人物が、有名無名にかかわらず、全国各地へ移動するのも特徴のひとつです。それは、好奇心が旺盛で、自分の知らない土地を自分の眼で確認したいという清張の心持ちが反映された結果といえましょう。

ひとりっ子で両親と一緒にいなければならない宿命のようなものがありました。それだから、成長すると、暇を見つけては、ひとりでぶらりと、かつて本で読んだ山や湖を見るために現地へ出かけることをしたそうです。

酒井氏について書かれたネットの事典ウィキペディアを見ると、宮脇俊三19262003)の『時刻表2万キロ』1978)を読んだのがきっかけで、鉄道ファンになったそうです。

清張は、『点と線』1958)をはじめとして、鉄道を仕掛けとして多用しています。

【予告編】点と線

酒井氏が清張作品に近づいたきっかけも、自身の鉄道好きが影響してのことでしょう。

『砂の器』1961)で清張が書くまで、おそらくは近在の人にしか知られていなかったのかもしれない木次線の「亀嵩駅」を訪問したと、酒井氏は本書で書いています。

【砂の器①】奥出雲の映画ロケ地を再訪した

あれは十年以上前になるでしょうか。私は、「秘境駅」に興味を持ったことがあります。世の中には、全国に点在する秘境駅に興味を持つ人がいて、その駅を訪問しては、それをリポートしてくれています。

そんな人が配信するリポートを見て、自分も秘境駅を楽しむようなことをしました。

【JR山陰線】餘部駅 120%満喫する 余部鉄橋と駅設置のドラマ 空の駅

秘境駅を探訪するひとりの活動がかつて取材され、テレビ番組になっています。その動画をネットですべて見ることもしました。その中に、亀嵩駅も含まれていたように記憶します。

清張の好奇心の強さは、自分の仕事である、小説の執筆でもいかんなく発揮されます。だから、こんなことにも興味を持って書いていたのかと思わされることに出くわします。

清張が1967年『週刊朝日』で発表した中編小説に『歯止め』があります。私が本作を読んだかどうか、記憶はたしかではありません。

主人公は、高校生の息子を持つ主婦の江利子です。

本作が発表された当時は、「受験戦争」や「教育ママ」といった言葉が流行していた、と酒井氏が書いています。

受験競争が激化しているというのに、江利子のひとり息子は、性に目覚めてしまい、勉強にちっとも身が入りません。成績が低下するばかりの息子を見て、江利子はひとりで気を揉みます。

そんな折、夫の田舎を訪れ、驚くような話を耳にします。

同じ悩みを持った主婦が、息子を夜な夜な”添い寝”したことで、息子の性欲が安定し、勉強に身が入るようになったという話です。

実際に、世の中に似たようなことがあるのかどうかは知りません。あったら、それは、近親相姦です。

私たちは、他家の実情を窺い知ることはできません。

今になって、父親が実の娘に関係を迫り、娘が成長後、その悲劇を告白する例が明らかになっています。母親と息子、兄と妹、姉と弟、姉と妹、兄と弟、さまざまなケースが想像できます。

漏れ聞くところによりますと、フランスのエマニュエル・マクロン大統領(1977~)の妻は、驚くなかれ、「実の父親」であるという信じられない話があります。妻が実の父親ですよ。混乱してしまいますね。

【閲覧注意😱】フランス大統領マクロンの闇 ―結婚したのは父親だった?―

清張が1969年に発表した『指』では、女性同士の性愛も描いています。守備範囲が広いですね。

酒井氏の本書からは、もう一度ぐらい、本コーナーで取りあげるかもしれません。