クロップ撮影についてN氏の見解

昨日、YouTubeで次の動画を見ました。

【野村誠一写真塾No356】「初心者にとってワイドレンズが難しい理由とは?」 「都会の中心部、新宿御苑で大鷹の交尾のシーンを捉えることができた。」

プロカメラマンで写真家でもある野村誠一氏(1951~)の動画です。

タイトルに「初心者にとってワイドレンズが難しい理由とは?」とあったので、どのような話をされているのか興味を持ち、見ました。

しかし、肝心の話はごく一部だったので、いささか拍子抜けしました。

本動画の長さは13分16秒です。オープニングが約30秒あり、本題に入る前に、近々予定されている野村氏の個展の紹介が15秒ほどあり、45秒過ぎぐらいから、ワイドレンズ云々の話が始まります。

しかし、私が期待した話は2分30秒ぐらいで終了してしまいます。正味1分45秒ぐらいしかそれに関する話は聞けません。

撮影は東京の新宿御苑内でされています。野村氏がカメラを手に持ち、御苑内を歩いて写した動画が流れ、久しぶりに御苑に来たことや、御苑内でオオタカの交尾シーンを撮影できたことなどを話されています。

ほかに、キヤノンのフラッグシップ機であるEOS R1に搭載されている視線入力についても触れています。

本機能は、カメラが撮影者の瞳の動きを検知し、撮影者が見つめている部分にフォーカスを合わせてくれる機能です。

野村氏は、写真を撮る時にファインダー内の隅々に瞳を動かして確認することが多いため、視線入力は便利に使えないというような話でした。

さらにまた、35ミリフルサイズをAPS-Cにクロップして使うのは、使う比率がキヤノンの場合はフルサイズの1/1.6に縮小するということです。

デジタルで撮影した画像を鑑賞するのは、PCの液晶画面だったりするでしょう。最終的な表示媒体のサイズが同じであれば、小さな画面を拡大して表示することになり、視覚的にはそれほど変わらないかもしれませんが、元々大きな画像より、小さな画像を拡大した方が、構造的には粗い画像になります。

2分弱の間にこんな具合に話を詰め込んだことで、ワイドレンズ云々のつっこんだ話を聞かせてもらうことが叶わず、物足りない内容となりました。

私はフィルム一眼レフカメラの時代から写真撮影を趣味にしています。フィルムの時代に持っていたレンズはいずれも単焦点レンズで、広角から順に35ミリ、50ミリ、85ミリ、200ミリの4本を持っていました。

この中で私が最も好きで、そればかり使っていたのが標準レンズの50ミリです。あらゆるものをこれ一本だけで撮っていました。

私が持っていた広角は35ミリでした。デジタル時代の今の間隔では、35ミリでは広角といった印象が薄いかもしれません。そんな準標準ともいえる35ミリでしたが、私はあまり使いませんでした。

私の場合は、広角が難しいというより、私がよく撮る被写体では使いにくかったという印象です。

昔も今と同じように、私が撮る被写体は身の周りのものがほとんどです。その中に、家で飼っている愛猫がいます。猫をフレームに収める場合、35ミリだと、かなり近づかないと大きく写せません。

その点、50ミリであれば、35ミリほど近づかずに、フレーム内に適当な大きさで捉えることができます。

85ミリを使えば、50ミリよりもフレームに収めやすいと考えられるかもしれません。しかし、今度は逆に、フレームが狭く感じ、動き回る猫を撮るのが私には難しく感じられます。

4本とも、自分でフォーカスを合わせるマニュアルフォーカスレンズです。35ミリは広角だったため、マニュアルでフォーカスが合わせずらかった記憶があります。

そんなこともあり、50ミリのレンズがちょうど良い焦点距離に感じました。

レンズの焦点距離は、自分が撮りたい被写体をフレーム内に収めるためのものばかりではありません。焦点距離が変われば、描写性能が変わります。

そのあたりのことを、野村氏は、ワイドレンズについて語った2分弱の中で簡単に触れています。

私が今使うカメラは、キヤノンのミラーレス一眼カメラのEOS RPです。私がキヤノンのRFマウントのために買ったレンズはRF28mm F2.8 STMが一本だけです。

Canon EOS RPにRF28mm F2.8 STM

商品名からわかるように、これは、焦点距離が28ミリの単焦点レンズです。このレンズを手に入れたとき、本当は使い慣れた焦点距離の50ミリのレンズが欲しかったのですが、そのときは、部品不足などの理由ですぐに手に入らず、次善の策としてこのレンズを選んでいます。

フィルムの時代の話でも書いたように、私は広角レンズを得意としていません。そんな私が28ミリの広角レンズを使うことになってしまったというわけです。

実際に使ってみると、自分の眼で見た視野に近いように感じ、目の前のものや情景をスナップ的撮るのであれば、便利に使えそうに感じました。

ただ、猫などの小さな被写体をこのレンズで大きく撮ることは難しいです。大きく撮りたければ、より近づかなければならないからです。

そんなこともあり、咄嗟に大きく撮りたいときは、カメラのクロップ機能を使います。

EOS RPは35ミリフルサイズの撮像素子が搭載されていますが、それよりも、キヤノンの場合は、1/16小さいAPS-Cサイズにクロップして撮影することができます。

その機能を使った撮影について野村氏が簡単に触れています。

カメラでクロップした撮影で撮れる絵は、撮ったあとに小さくトリミングするのと同じことだと話しています。それは野村氏が述べるとおりです。

この話は、35ミリフルサイズとAPS-Cを比較する話にも通じます。

35ミリフルサイズ用の焦点距離35ミリのレンズをAPS-Cにつけて使うと、焦点距離がキヤノンの場合は1.6倍の56ミリ相当のレンズとして使えるという考え方があります。これも考え違いです。

35ミリのレンズは、APS-Cで使っても、性能的には35ミリのレンズのままです。

テレビでよく見ていたタレントに実際に会ったら、テレビで見るよりほっそりしていたとということがあるでしょう。これも、撮影するレンズによって見え方が違う例といえます。

人物を胸から上をフレーム内に収めるバストショットで撮影した場合を想像します。

焦点距離が24ミリと100ミリのレンズで、人物を同じ大きさのバストショットで撮影し、見比べます。24ミリはほっそりと見えるのに対し、100ミリはややふっくらと見えるのではないかと思います。

それが24ミリと100ミリのレンズの性能の違いになります。24ミリよりも広角、100ミリよりも望遠になるほど、広角と望遠の写り方の違いが明確になります。

広角になるほど、遠近感が強まります。遠くにあるものがより遠くに感じるように写るということです。

人間の身体にも厚みがあります。頬や耳、そして後頭部と、後ろにあるものほど遠ざかります。身体も同じです。

望遠は圧縮効果が高まります。広角とは逆で、頭部や身体が圧縮されたように写ります。

今はテレビ番組で使われるカメラにも変化があり、スチルカメラと単焦点レンズで撮影されることがあるかもしれません。

しかし、スタジオのテレビカメラには、かなり高倍率のズームレンズがついているのが普通でしょう。

スタジオで出演者を撮る時は、出演者に近づいて撮ることは通常ありません。少し離れたところから出演者を大きく写そうと思ったら、ズームレンズの望遠域が使われます。

望遠レンズが持つ圧縮効果について書きました。望遠で撮ると、実物よりふっくら撮れるのでしたよね。というわけで、テレビで見るよりもほっそり見えることが起こるという理屈になります。

【知ってた?】望遠レンズの圧縮効果とはなんなのか。仕組みから活用方法まで詳しく解説します!

ほっそりと撮って欲しい願望を持つ女性を撮る時、望遠域ばかりを使うと、撮影のあと、実物よりぽっちゃり撮れた写真を見て、機嫌を悪くされるかもしれません。

そのほかにも、広角と望遠では、フォーカスの合う被写界深度も違います。

今は広角から標準、望遠までを一本のズームレンズで撮ることも少なくありません。ズームレンズは便利ですが、安易に使うと、それぞれの焦点距離が持つ効果に気を使わない使い方になってしまいます。

そうならないためには、ズームレンズを使いながら、焦点距離を意識し、あとは、カメラを構えたまま被写体に近づいたり遠ざかったりして使うようにするといいでしょう。

できれば、単焦点レンズで広角から望遠まで揃えるのが理想です。

広く撮りたいから広角。遠くのものを大きく撮りたいから望遠という面もありますけれど、それ以外にも、焦点距離によって表せる表現があるということです。

野村氏には、改めて、ワイドレンズの突っ込んだ話をしていただければと思います。

【広角で失敗する理由】画角が広いとなぜ難しいのか?その改善方法とコツ【写真家】