「音響外傷」という外傷に聞き覚えのある人は少数かもしれません。
私は2022年9月、自分がその外傷を負うまでは、そんな外傷があることも知りませんでした。もっとも、私の場合はそのことで医院へ行っていません。ですので、医師によって私の外傷がそれだと診断されたわけではありません。
私の場合は、庭でゴミを燃した際、ゴミの中に切った竹があり、その節が破裂した際の大きな音がその症状を引き起こしました。
そのとき、私の耳が影響を受け、すぐに聴こえにくくなりました。
私の場合は、それまで通常に聴こえていた音の聴こえ方が変わりました。たとえば、救急車のサイレンの音が、通常よりも甲高い音に聴こえました。
人の話す声も聴こえにくくなったように記憶します。
それが突然起きたことだったので、どうなったのか自分ではわかりませんでした。しかし、それが起きる直前に大きな音を聴いたことはわかっていたので、それが原因であることは認識していました。
私も含め、医学の専門知識を持たない一般の人は、人間の耳の構造を知りません。耳の奥には鼓膜があり、それが音によって振動し、音として聴こえるようになんとなく理解しています。
私は自分に起きたことについて知ろうと、ネットで検索をしました。その結果、「音響外傷」という外傷があることを知りました。
また、YouTubeで「音響外傷」を検索したことで、次の動画が見つかりました。
この動画を見ることで、人間の耳の構造がおぼろげながら理解できました。
人間の耳の奥には、羽毛のようなものが生えているそうです。耳に音が入ると、その羽毛のようなものが、風にそよぐように振動をするのでしょう。
その振動が脳へ送られ、音として理解できる構造となっているようです。
この羽毛のようなものは、非常に精細にできているのでしょう。だから、大きな音が耳に入ると、傷つきやすいようです。
音響障害は、この羽毛のようなものが、耳から入った大きな音で、剥げた状態になることをいうようです。
体の他の部位にある羽毛も、一度剥げてしまったら、別の羽毛が生えてくるのを待つしかなくなります。
耳の中にあって音を読み取る羽毛のようなものは、体の他の部位のように、剥げたあと、すぐに別の羽毛が生えてくるわけではありません。
そのため、音響外傷について書かれたネットの事典ウィキペディアによると、現代の医療では治療法が確立されていないと書かれています。
それを読み、当時の私は、一度失われた聴力は、現代の医学を持ってもどうしようもないのかと考えました。
幸いなことに、私の音響外傷は、医療行為をまったくせず、半年か一年程度で自然に元に戻ってくれました。今は、それ以前と同じように、外界の音を正常に聴くことができます。
この外傷を負ったとき、どうしてあのような聴こえ方をしたのか、自分なりに考えました。
それは、小さな音を録音したときの状態に似ているように思います。
私が便利に使っている録音機器に32bit floatで録音できるものがあります。
それ以外の、昔からある録音機器で小さな音を録音し、録音した音のボリュームを上げて聴いた時の音を想像してみてください。
おそらくは、肝心の音が大きくなるのと同時に、雑音のボリュームも上がり、騒音が大きくなっただけのように聴こえるでしょう。
それと同じようなことが、音響外傷を負ったときの聴こえ方に現れているのだと考えます。
音を感じ取る羽毛のようなものが剥げてしまい、音として認識しにくくなります。それでも無理に聴こうとして、それ以外の音が大きくなり、肝心の音も、通常とは違う聴こえ方になってしまうのでしょう。
今回こんなことを書いたのは、昨日の朝日新聞に次の記事があるのを見たからです。
記事によると、陸上自衛隊北部方面総監部の一等陸尉の男性は、1993年に自衛隊に入隊以来、射撃訓練や装甲車の操縦などで、激しい騒音が伴う任務にあたってきたそうです。
その結果として、1997年頃より、聴力の異常に気がつくようになったそうです。2021年にはその症状が悪化し、両耳の難聴が公務災害と認定されたそうです。
こうしたことから、男性は、遮音性脳の高い耳栓を十分に支給しなかったことをはじめ、耳栓の着用を徹底するよう啓発しなかったこと、必要な聴力検査の実施を怠ったことなどで国を提訴しています。
この記事を読み、私が3年前の9月にそれを負った音響外傷を連想したというわけです。
本件が音響外傷であるかどうかはわかりません。記事にもその外傷名は出てきません。しかし、記事から状況を連想し、もしかしたら、その可能性が高いのではと考えました。
自衛隊で日常的に訓練をする人は、普通の人が接することがないような大音響を浴びることがあるでしょう。それは、耳にとっては好ましいことではありません。
その結果、音が聴こえにくくなるのは、職業病で済ますわけにはいかないでしょう。音が聴こえにくいことは大きな障害になるからです。
その傷害のつらさは、自分で経験してよく理解しました。
それでいて、これまで、この外傷について話題になることがほとんどないように感じます。それだから、同じような症状を持つ人も、他の人には話さず、こんなものかと自分を納得させている人も少なくないかもしれません。
今回の提訴を契機として、聴力保護について積極的に議論され、それが広く認識されるようになることを望みます。
音が聴こえにくいのは、小さな障害ではありません。
