銀行の貸金庫に抜け穴があっては堪らない

銀行強盗を描いた映画はいくつもあります。私が思いついたのは、アラン・ドロン19352024)とジャン・ギャバン19041976)が強盗を企てる犯人を演じた『地下室のメロディー』1963)です。

面白いもので、それが描かれる作品を見ると、観客は銀行強盗を働く犯人たちの側に立って見てしまいます。

彼らが狙うのは、フランスのリゾート地、コート・ダジュールのカジノの地下にある金庫です。

ギャバン演じるシャルルという刑務所を出たばかりの初老の男は、自分の身体が利かなくなったため、実行犯に、ドロン演じるフランシスという青年を雇います。

フランシスは定職を持たず、その日暮らしの不良です。シャルルは、フランシスを、どこかの金持ちの男に見せかけ、コート・ダジュールの高級ホテルに滞在させます。

小説でも映画でも、強盗が成功したと描くことはしません。彼らにどんな結末が待つかは、作品を見て確認してください。

MÉLODIE EN SOUS-SOL 1963 (Alain DELON, Jean GABIN, Dora DOLL)

「事実は小説よりも奇なり」といいます。映画『地下室のメロディー』は綿密な計画を立て、犯行をしています。そんな面倒な計画が必要ないような巨額窃盗事件が起きて3週間余り経ちました。

メガバンクの三菱UFJ銀行の貸金庫から、その銀行で働く人間により、持ち出された事件です。

この事件の報道で私が奇妙に感じるのは、これだけの犯行をした銀行員の氏名が未だに明かされないことです。それが銀行員以外であれば、当然、〇〇容疑者と名前が顔写真入りで報道されるところです。

この行員がまだ容疑者でないということは、逮捕もしていないということでしょう。だから、氏名を明かす必要がないということなのかもしれません。

そうなると今度は、当人が盗んだことを白状しているのに、どうして逮捕しないのかとなります。

この事件を三菱UFJ銀行が発表したのは先月22日です。

本日の朝日新聞が、その事件の続報を報じています。

それによると、同行で貸金庫の管理責任者をしていた行員が、2020年4月から今年10月までの四年半の間に、東京都内の練馬支店玉川支店の貸金庫から、約60人の現金や貴金属を地か十数億円盗んだとしています。

三菱UFJ銀行 女性行員が貸金庫から10億円窃取 盗まれて一番ヤバいものとは!?【週刊文春】|花田編集長の週刊誌欠席裁判

この事件を朝日が少し前にも報じましたが、そのときは、同様の窃盗事件は五年ほど前にも、別の銀行で起きていたそうです。

銀行の貸金庫と聞けば、最も信頼がおける、安全な保管場所と考えるでしょう。その金庫に入れてあったものが行員によって盗まれたというのですから、それが報じられたときは信じられませんでした。

事実、同行で支店長も経験した行員は、同行がその発表をしたとき、「あり得ない」と思ったそうです。

しかし、今になってよく考えて見ると、盗める可能性があると記者に答えたようです。それを検証するのが本日の朝日の記事です。

貸金庫がどのように管理されているのか、同行が公式に発表することはないようです。

そこで、朝日が、同行の関係者に取材し、貸金庫の管理と、それが破られた手口の可能性についてを検証しています。

貸金庫は、各支店に備えられているのでしょう。当然のことながら、その金庫がある部屋には、自由に出入りできないようになっています。

貸金庫質の出入りには二種類のセキュリティがあり、ひとつは、行員が立ち会って開閉する手動型です。そしてもうひとつは、カードキーで自動ドアを通り、金庫室に入る半自動型です。

貸金庫を利用する人が銀行を訪れ、自分が貸金庫に入れてあるものを出し入れしたいと申し出たとき、その担当にあたる行員が、金庫室に出入りすることになるのでしょう。

貸金庫質に入っても、それぞの金庫はもちろん施錠されています。

三菱UFJ銀行の規定では、貸金庫を開閉するのに必要な鍵はふたつあるそうです。ひとつは貸金庫の利用者が持ち、もうひとつは、封筒に入れ、顧客の届け出印を押して封印し、銀行が保管しています。

銀行が保管する金庫の鍵は、通常使われることはなく、相続や緊急時など、特別な時にしか使われないそうです。

このようなセキュリティが保たれているため、その金庫から金品が窃盗されることは考えにくいというわけです。

しかし、四年半ほどにも渡って金庫に接触し、十数億円の金品が盗まれる事件が起きました。

その事件を起こす手口の可能性と考えられるのは、顧客本人の鍵を使うことはできませんから、銀行で保管するもうひとつの鍵を使ったことです。

今回の犯行をした行員は、貸金庫の管理責任者をしていたと聞きます。ということで、銀行で預かっている貸金庫の鍵を勝手に使い、それで、顧客の貸金庫を解錠していたのであろうということです。

本日の豆追記
ネットの情報によると、犯人は40代の女性で、事件が起きた銀行で管理職をしていたとのことです。

この手口では、小説や映画化をしても、読者や観客を満足させることは難しいと思われます。

あるいは、松本清張19091992)であれば、女が犯人の事件を扱うことも得意としていますから、面白い読み物にできるかもしれません。

三菱UFJ銀行では、支店の行員がする自主点検のほかに、関連会社が定期点検をしていたそうです。この二重のセキュリティでも、五年間弱に渡り、貸金庫の被害を見抜けなかったというわけです。

同行の関係者は、それについて次のように指摘しています。

(貸金庫の鍵を)保管してあるかは確認しても、封筒が開けた形跡までは調べず、似た印鑑などで再び封印されると気づけない恐れがある。

今回の窃盗犯は、最初は慎重に犯行に及んだでしょう。しかし、自分の犯行がばれていないことに自信を深め、途中からは大胆になり、盗み取る金品の額がふくらんだことが考えられます。

朝日の記事を読み、セキュリティをどのようにすればいいか、自分なりに考えました。

簡単なのは、貸金庫質に防犯カメラを設置し、24時間、映像を記録し続けることです。映像の記録にはハードディスクドライブ(HDD)などを使い、定期的に上書きするようにしておきます。

事実、私の家の庭は、カメラを二カ所につけ、24時間録画しています。

それを、セキュリティを管理する関連会社が、一週間に一回とか、月に一回とかの間隔で、貸金庫質の様子を録画した映像を早送りし、問題がないか確認するのです。

頻繁に貸金庫質に出入りする行員がいることがわかれば、その行員を呼び、その行員と共に、行員が近づいた貸金庫を解錠し、中を確認したりするのです。

手間がかかりますが、銀行が貸金庫の信頼性を取り戻すには、これぐらいことはしなければならないでしょう。

防犯カメラと録画用レコーダーの設置には、それほどの費用はかからないと思います。三菱UFJ銀行ぐらいの銀行であれば、それぐらいの費用はすぐに捻出できると思います。

抜本的に解決するのであれば、貸金庫のサービスを廃止する以外に選択肢がなさそうです。