昨日の本コーナーでは、ニコンから発表されたZRというシネマカメラに関わる話題を取りあげました。
今回は、それに付随する話題になります。
本日、YouTubeで次の動画を見ました。
本動画では、ニコンのZRに加え、キヤノンのEOS C50、富士フイルムのFUJIFILM GFX ETERNA 55(”ETERNA”の発音ですが、元々は「エターナ」だったらしいです。しかし、社長が「エテルナ」と発音したことで、両方の呼び方になってしまったと、本動画の配信者が話しています)という、いずれも発表されたばかりの映像撮影に特化された3機種の性能を順に見ていく内容です。
私は、本動画でZRを紹介する部分で気になったことがあったので、本更新をしています。配信者の伝え方が気になったのではありません。
配信者は、ニコンの公式サイトに上がっているZRの紹介記事を画面右側に表示させる形で、本カメラについて語っています。
ニコンは、ZRというシネマカメラに、おそらく初めて32bit floatで録音できる音声システムを搭載しています。それを説明する文章を読み、32bit floatを使ったことがなかったり、それについてよく知らない人を勘違いさせるのではないかと感じました。
その部分を、ニコンの公式サイトから引用させてもらいます。
ZRは内蔵マイクにより32bit floatの録音に対応。ダイナミックレンジの広い録音ができ、手動でゲインを調整せずに済みます。 小さな声での会話や突然大きな音が鳴るシーンの撮影などでも、歪みのないクリアーな音声を収録できます。Φ3.5mmのステレオミニジャックマイクなど外部機器でも32bit floatの収録が可能です。
この説明を読んだ人は、32bit float録音できることで、カメラに内蔵されたマイクで「歪みのないクリアーな音声を収録」できると勘違いしてしまいかねません。
私は、32bit floatで録音できるZOOMのレコーダーを3機種所有し、32bit float録音の凄さを日々実感しています。
たとえば、ZOOMのハンディレコーダー、H1 XLRに私が持っているMXLのV67というコンデンサーマイクをつけ、本コーナーの冒頭を音訳する自分の声を収録することをしています。

32bit float以外のレコーダーで、たとえば人の声を録音する場合は、録音を始める前に、入力ゲインを適正に調節しておく必要があります。
大きすぎる声や小さすぎる声で録音してしまったのでは、聴き取りやすい音声にはならないからです。
ZOOMのH1 XLRには、入力ゲインを調節できるノブはついていません。それを調節する必要がないからです。32bit floatで録音すれば、録音が終わってから、どんなに大きな音も、どんなに小さな音も、ちょうど良いゲインに自由に変更できるのです。これこそが、32bit floatの凄いところで、私が最も気に入っている点です。
ZOOMは32bit floatについて、サイトで、32bit float録音における「振幅値の段階が40億以上」と書いています。
32bit floatがそのような抜群の能力を持つことを知れば、ニコンがRZに搭載した内蔵マイクから入ったデジタル信号を、32bit floatで扱うことにより、どんな音でも、歪みもなくクリアに録れると勘違いされそうです。
たしかに、カメラ内蔵のマイクであっても、条件が揃えば、ニコンがサイトで書いた文章の通りになるケースもあります。
たとえば、カメラに超広角レンズをつけ、誰かや自分のすぐ近くにカメラをセットし、カメラに向かって話すようなケースであれば、32bit floatの効果で、内蔵マイクだけで、「それなりの音声」が録音できます。
長年映像製作会社を経営され、YouTubeでも活動をされている人に桜風涼氏がいます。桜風氏が過去に配信した動画で、マイクの正しい使い方を説明されています。
桜風氏が、正しいマイクの使い方をわかりやすく解説してくれていますね。どんなに高価なマイクであっても、マイクと被写体、つまり何かを話す人との距離が最大で50センチ以上離れてしまったら、決して良い音声で録音できないと話されています。
しかも、人の声を録るのであれば、無指向性のマイクは使わないとも話されています。ZRに内蔵されているマイクがどんなタイプなのかはわかりません。
仮に、ある程度の指向性を持つマイクであったとしても、内蔵マイクで良い音が録れるとは考えにくいです。
32bit floatで録音すれば、「振幅値の段階が40億以上」もあるのですから、余裕でカバーできると考えるかもしれません。しかし、実際に使ってみればわかります。良い音で録れていない音声を、32bit floatで良い音声に変換することはできません。
私が、本コーナーの更新をするごとに音訳し、それをH1 XLRにつけたコンデンサーマイクで録音すると書きました。
同じことを、同じくZOOMのレコーダーで、32bit floatで録音できるF2と付属のラベリアマイクで同時に録音し、録音結果を本コーナーで比較したことがあります。
F2に付属するマイクはラベリアマイクなので、マイクは胸元につけて使います。なおこのマイクは、無指向性です。
胸元に取り付けるのですから、口からの距離は近いです。十分、良い音で録れる条件です。
しかし、そのようにして録音した音声ファイルを、いつも使うH1 XLRにコンデンサーマイクをつけて録音した音声ファイルを比較すると、H1 XLRにコンデンサーマイクで録音した音声が断然良い音に感じました。
マイクと被写体の距離に問題がなくても、使うマイクの性能が結果に表れるということです。これは、32bit floatでも同じです。
このことからわかるのは、32bit floatで録音するときも、できるだけ良い条件で録音する必要があるということです。
カメラ内蔵のマイクも性能が向上しているでしょう。しかし、単体のマイクの性能には劣ります。ましてや、カメラに内蔵されているので、カメラ内から発せられるノイズを拾ってしまう可能性もあります。
そして、一番肝心なことは、桜風氏が本ページに埋め込んだ動画で解説してくれているように、マイクと被写体との距離が、50センチ以上離れてしまう条件では、アウトだということです。
より良い条件にしたいのであれば、マイクと被写体との距離を、コンデンサーマイクであれば、20センチ以内が望ましいそうです。
また、ダイナミックマイクはコンデンサーマイクに比べて感度がかなり低いため、このマイクは、口に近づけて使わなければ、よい音で録音することができません。
このように、マイクの正しい使い方を知れば、32bit floatを使おうとも、カメラ内蔵マイクで良い音を録音するのはかなり難しいであろうことがわかってもらえると思います。
マイクはカメラに取り付けるものではなく、誰かが話す場面を撮るのであれば、話す人にできるだけ近づけなければノイズ塗れになります。
それは、32bit floatでも決して補えません。
このあたりの考え方が、ニコンの公式サイトの記述では、勘違いする人がいるかもしれないと考え、本投稿をした次第です。
