昨日の本コーナーでは、朝日新聞・文化欄に載った記事を取り上げました。その記事では、国内の映画の興行収入において、米国ハリウッドを中心とする洋画の需要が大きく減少していることを報じました。
今回も昨日に続き、本日の朝日・文化欄にある次の記事を取り上げます。
写真の保存媒体がフィルムからデジタルに移行しました。私も長年、写真を趣味にしています。デジタルがなかった時代は、フィルムを当たり前に使いました。
私はフィルムのカメラを使い続けるつもりでした。しかし、デジタルへの移行は想像以上の速さで、私も気がつくと、フィルムはまったく使わなくなりました。
そんな中にあっても、フィルムが使われ続けた分野があります。
文化財を写真に記録する場合は、できる限り詳細で正確であることが求められます。そのために用いられるカメラは、「シノゴ」と呼ばれる「4×5in伴」以上のフィルムを用いる大判カメラです。
シノゴのフィルムは102×127ミリで、面積は、一般的な35ミリ伴の約13倍です。
シノゴのカメラとして、国内で使われたカメラに「トヨ・ビュー」、あるいは「トヨ・フィールド」と呼ばれた大判カメラがあります。
同カメラの初期型は1959年発売だそうですから、66年前です。国産の金属製大判カメラとしては草分け的な存在です。その後も改良が重ねられ、国内だけでなく、海外でも長年にわたって使われました。
大判カメラを使う利点は、フィルム面積が大きいことだけではありません。
通常のカメラを使い、たとえば高いビルを下から見上げるようにして撮影すると、どんな写真に撮れるか想像できますか? そうです。ビルの上層階へいくほど、狭まり、台形のように写ります。
その効果を強調したい場合は広角レンズを使うといいです。
しかし、文化財や建築物を、研究や保存目的で写真に収める場合は、できるだけ、歪みの少ない形で残す必要があります。
私は大判カメラを触ったこともないので、仕組みはよく知りません。ネットの事典ウィキペディアの記述に目を通すと、大判カメラは、レンズにピントを合わせるためのフォーカシング・リングのようなものはついていないそうです。
レンズは蛇腹の先についており、カメラ背面のピントグラスを見ながら、レンズがついた蛇腹を動かしてピントを合わせるそうです。
蛇腹は前後だけでなく、ある程度の角度で、上下や左右にも動きます。上下に動かすことができれば、「あおり」撮影ができ、高層ビルの撮影について書いたように、ビルの上階へいくほど狭まるのを修正した撮影ができるというわけです。
ここで朝日の記事に戻ります。
朝日が記事で伝えるのは、「トヨ・ビュー」や「トヨ・フィールド」といった名前で長年愛用されてきた大判カメラを作る工場が廃業されたことです。
今年の1月31日をもって営業が終了したのは、大阪府豊中市の「サカイマンツール」です。同社は、2002年11月に、酒井特殊カメラ製作所の事業を引き継いで設立されたそうです。
どんなに信頼のおけるカメラであっても、記録媒体がフィルムからデジタルへ移行したことで大きな影響を受けました。
デジタルカメラは飛躍的に高画素化しています。技術的な進歩により、大判フィルムを使わなくても、超高精細な写真が得られる時代になりました。
また、歪みの補正にしても、デジタル技術でできるようになりました。
そのあおりを受けた同社は、売り上げが落ちました。同社で営業を担当されてきた人は、取材に次のように答えています。
年間で1千台ぐらい売れたこともあったが、近年はほとんど売れなくなった。
同カメラは金属製で、部品に使われるアルミを業者にプレス加工してもらう場合も、1千台単位でなければ採算が合わないそうです。しかし、部品だけ抱えても、肝心のカメラの需要がなければ、やっていけないということでしょう。
これまで、同社の大判カメラで文化財の撮影をしてきた人は、まだ、文化財の撮影には同社のカメラが必要だと考え、カメラの製造終了を残念がっています。
自分が仕事で使うものが作られなくなったら不安でしょうね。
イタリアのチネチッタ撮影所には、さまざまな職人が働いていました。映画制作にコンピュータグラフィックス(CG)が使われるようになったことで、チネチッタで撮影する需要が減り、職人が職を失ったという話を以前聞きました。
どんなものでも、一度失われたものを復元するのは大変です。
日本でも時代劇があまり作られなくなり、時代劇のための衣装や大道具、小道具、髷の技術などが失われないか、懸念されています。
