新しい年を迎えたのに合わせたように、私はAmazonの有料会員向けに提供されているPrime Videoで、毎日のように、古い映画を愉しんでいます。
昨日もそんな一本を見ました。見たのは『帽子から飛び出した死』(1939)です。原題は”Miracles for Sale”で、直訳すると『販売のための奇蹟』です。どちらにしても、ちょっと変わった題名ではありませんか?
変わっているのは題名だけではありません。中身も変わっています。
本作を見始めると、字幕は表示されるのに、俳優が台詞をしゃべりません。代わりに、音楽のようなものが聴こえたと思います。
本作は86年前の作品で、もしかしたら、サイレント映画なのかと思いました。
しかも、はじめのシーンは、どこかの戦場です。といっても緊迫感はなく、いかにも、何かのセットのような感じです。こんな調子で続くのなら、見るのをよそうかとも考えました。
すると、動画の再生がストップしました。おそらくは、動画の再生で何らかのトラブルが起きたのでしょう。
そこで、一度元に戻し、もう一度はじめから動画の再生を心ました。すると、今度は俳優の台詞が聴こえ、サイレント映画でないことがわかりました。
兵士にひとりの女が連れてこられます。その女が密告したことで、二百人とかの人数の人間が犠牲になったなどといっています。その罪で、これから処刑するというわけらしいです。
彼女は台の上に仰向けに寝かされ、その上に木箱が被せられます。箱からは頭と足が出ています。その箱の真ん中あたりを機関銃のようなもので撃つと箱がふたつに分かれ、胴体が真っ二つなる、というマジックなのでした。
昔にテレビで同じようなマジックを見た覚えがあります。古典的なマジックのひとつです。
昔、引田天功(1934~1979)というマジシャンが人気を博しました。
戦場のように見えたのはセットで、本作の主人公のマイケル・モーガン(マイク)が、興行師に、自分のマジックショーを披露し、売り込む場面だったことがわかります。
本作にはマジシャンが多く登場します。それに加えて、悪魔を研究する博士や、霊魂の存在を信じる学者、降霊術師も登場します。
そんな人々の集まりの中で殺人事件が起こるのです。
第一の殺人事件現場はホテルの一室です。殺されたのは悪魔を研究するサバト博士です。その部屋は鍵がかかっており、ドアチェーンまでかけてありました。
というわけで、一見すると、いわゆる密室殺人です。
こんなふうに書くと、シリアスな作品と思われてしまうかもしれません。実態はそれとは正反対です。終始喜劇的に展開します。
事件が起きたことで、ギャビガンという警視が捜査にあたります。操作には人気マジシャンのマイクが協力します。
殺人が起きた一室に検視官らが到着します。その部屋にマイクとギャビガンがいます。検視官がふたりに声を掛けます。「死体はどこにあるのですか?」。
ふたりが目を離したすきに、なんと、サバト博士の死体が煙のように消えています。
そのあと、第二の殺人事件が起きます。その現場にもギャビガンとマイクが向かいます。ふたりで調べているとき、マイクが別のことを調べていた間に、今度は、ソファーに座っていたはずのギャビガン警視の姿が忽然と消えています。
ほかにも、机に置かれたタイプライターが、透明人間がタイプを打つように動き出し、第三の殺人事件が起こると文字を打ったりします。
また、殺されたはずのサバト博士が姿を見せることも起きました。
はじめから終わりまでこの調子で話が展開されます。本作が上映された米国の映画館の館内は、観客の笑いが絶えなかったでしょう。
86年も前の作品なのに、ちっとも古臭くありません。着ている服にしても、今とそれほど変わりません。撮影技術もしっかりしていて、ぎこちない部分がひとつもありません。
現代に本作をリメークしても、本作以上の作品にはできないかもしれません。脚本もよくできていて、スピーディに話が展開します。
AmazonのPrime Videoには、私の知らない作品がまだ多くありそうです。そんなわけで、またそれを利用して映画を見たら、本コーナーで紹介することになるでしょう。
