私は、紙に印刷された本しかない場合を除き、本は電子書籍版で読みます。私が利用するのは、AmazonのKindleです。

Kindle端末で表示される文字は、紙に文字を印刷するのとほぼ同じような技術で表示されると聞きます。だから、電子端末の画面であっても、紙の本を読む感覚とほとんど変わりません。
このKindleには、Kindle Unlimitedというサービスがあります。月額980円支払うことで、該当する電子書籍であれば、何冊でも追加料金なしで読むことができます。
私は先月一カ月、それを無料で利用できる権利を得ました。それを利用し、水木しげる(1922~2015)が、人生の中で苦難に直面したときには心のよりどころにしたというヨハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテ(1749~1832)の教えをまとめた『ゲゲゲのゲーテ』(2015)を読みました。
本書が編纂され、出版されたのは2015年です。おそらくは、その年に水木の住まいを訪ね、いろいろと話を訊くこともしたでしょう。水木が妻と、昔のことを話すインタビューも掲載されています。
本書は、Kindle Unlimitedを利用して読んだので、今は手元にありません。ですので、自分の記憶で書きます。
水木が編集者に話を訊かれたとき、水木は90歳を過ぎていました。しかし、病気などはしていないようで、元気な様子でした。
水木自身もまだまだ自分の人生は続くものと信じ、普通に百歳までは生きられるだろうと話しています。妻もそれを信じ、百三十歳は無理としても百二十歳ぐらいまでは生きられるかもしれないと話しています。それだったら、まだ30年ぐらい、好きなことをして暮らせると語っています。
本書を読んだあと、水木が何歳で亡くなったのか気になり、ネットで調べました。なんと、水木は、本書が発売された2015年に93歳で亡くなっています。
水木の死因を確認しました。これは、事故死といってもいいでしょう。水木はその年の11月、自宅で転倒し、頭部を強打したことで硬膜下血腫を起こしています。
このことは以前の本コーナーで書いたことがありますが、私も、2004年8月末、急性硬膜下血腫により、危うく命を失う危機を経験しています。
私も転倒して頭部を強打するか、強い振動を脳に与えたことが原因です。私にそれが起きたのは自宅ではなく、自転車で急坂を下っていたときです。
私は意識を失ったまま病院へ搬送され、すぐに頭を開いて緊急手術を受けています。私は倒れた瞬間から意識なかったので、そのときのことはわかりません。私の意識が戻ったのは、一週間か十日ほどあとでした。
水木は11月11日に自宅で転倒し、その日のうちに、病院で緊急の手術を受けたそうです。ウィキペディアの記述によると、入院中に頭部打撲が回復することもあったようですが、同月30日に多臓器不全で亡くなったとあります。
水木本人としては無念であったかもしれません。自宅で転倒して硬膜下血腫を起こさなければ、今も存命していた可能性があります。もしも今もお元気であれば103歳です。
元気だった水木は、103歳になってもまだまだ矍鑠(かくしゃく)としていた可能性があります。「まだ十年や二十年は生きるぞ」といったりして。
人の運命はわかりません。
私に起きた急性硬膜下血腫が悪い結果につながれば、私の命は21年前の8月末で途切れていたことになります。
私の意識が戻らないとき、私は譫言(うわごと)で、「三人が出てきて、転がされた」というようなことをいったそうです。
三人で私が思いつくのは、2004年には亡くなっていなかった私の両親と姉です。ひとりこの世に残った私を不憫に思い、「あの世」かどこかわかりませんが、三人がいるところへ私を連れて行こうとしたのかもしれない、と想像したりしました。
水木は『ゲゲゲのゲーテ』で、編集者社から死んだあとのことも訊かれています。水木は無宗教で、死んだあとのことは明確にイメージしていなかったように記憶します。
水木は、死んだら「無」になると考えつつ、「別の形」に変わるのではとも考えると述べています。
こればかりは、どんな宗教家をもってしても、一度死んで生き返った人がいない以上、どこまでいっても、死んだあとのことは誰にもわかりません。
水木がこの世からいなくなって十年です。水城の周りで生きた人は、どのような思いで生きたのでしょうか。
