肌の色が死んでいる

昨日の本コーナーでは、油絵具の扱い方について書きました。

その中で、朝日新聞土曜版「be RANKING!!」が、「好きな西洋人画家」でアンケートを採ったことを伝え、その結果についても書きました。

そのアンケートでは、本来は近世以降の西洋人画家に絞ったアンケートだったはずなのに、ランキングの2位にレオナルド・ダ・ヴィンチ14521519)が入っています。

おかしいといえばおかしいのですが、それだけ、ダ・ヴィンチが多くの人に知られているということです。

ダ・ヴィンチといいますと、代表作の『モナ・リザ』がそうですが、「スフマート」の技法をダ・ヴィンチが採用したことが有名です。

レオナルド・ダ・ヴィンチ『モナ・リザ』 ― ルネサンスと現代

油絵具というのは、色の基となる顔料染料を油を主成分として練ってあります。油というのは、水のように蒸発しないので、乾燥はしません。

だから、油で練られた色の粉も乾燥しません。その代わり、時間をかけて固まります。

そのような性質を油絵具が持つのを利用して、ダ・ヴィンチはスフマートによって自分の作品を描いています。具体的には、絵具を少し支持体に載せ、それを筆や自分の指の腹を使って薄く伸ばして広げた層を何層も重ねています。

私はダ・ヴィンチの作品が日本に来たときに、その企画展が開かれている美術館へ行き、自分の眼で見ました。見ましたけれど、見ていて、わくわくした気持ちが起きませんでした。

巧みには描いていると思います。しかし、描かれた人間の皮膚の色が、死んでいるように見えました。それは、塗られた油絵具の色が死んでいるように見えるということです。

たとえば、赤い色の絵具があるとします。顔の皮膚の中で、口紅を塗った唇を別にすれば、チューブに入った赤の色をそのまま使える色合いはありません。

それでも赤い色の絵具を人の肌に使いたければ、白の絵の具で彩度を下げなければなりません。しかし、どんな色でも、白い色を加えると、明度と彩度は高くなるものの、白の絵具が多くなるほど、彩度は低下してしまいます。

ダ・ヴィンチはそのようにして彩度を下げた色を、しかも、薄く塗り伸ばすようにしているため、色の生命観が失われています。

ダ・ヴィンチでなくても、人の顔を描くのに、いわゆる「肌色」を作って、その色を顔の部分に一様に塗ってしまったら、生き生きした色には見えません。

油絵具で魅力的に色を使おうと思ったら、昨日の本コーナーでも書きましたが、なるべく色を他の色と混色しすぎないことです。

それを徹底したのが点描画法ですが、それがシスティマティックになりすぎてもおもしろくなりません。

それを魅力的にやったのが印象派絵画の一部の画家で、その元祖といえるのが、私が敬愛するレンブラント16061669)であるというわけです。

レンブラント、自画像

もちろん、絵画作品の好みはそれぞれ違っていて一向に構いません。ダ・ヴィンチこそが最高の画家と思う人は、そう思われたままでいいです。私とは好みが違うというだけのことです。