歴史に名を残す画家であっても、はじめから自分の思うとおりに絵具を扱えたわけではないと思います。中でも、油絵具を使って絵を描く画家は、その傾向が強いと私は考えています。
私がもっとも敬愛するのが17世紀のオランダの画家 レンブラント(1606~1669)であることは、本コーナーでもよく書くことです。
この土曜日(11月29日)、朝日新聞土曜版「be RANKING!!」は、「好きな西洋人画家」でbeモニターにアンケートを採りました。
調査方法は、「欧米で活躍した著名な西洋人画家から、油彩画家を中心に70人に絞り込み、複数回答で選んでもらった」と書かれています。回答者は2502人だそうです。
それだったら、レンブラントがランキングされないわけはないだろうと思ったら、ランキング外です。
このアンケートを採った朝日新聞の40代の女性記者は、幼い頃からアンリ・ルソー(1844~1910)が大のお気に入りの画家で、中学生の頃は、公園や温室へ出かけて、ルソーが絵に描いたように、南国の植物をスケッチしたりしたそうです。
そのような経験があったからか、近世以降の西洋人画家に絞ったアンケートにしたそうです。であれば、レンブラントはランキングの対象でなくても仕方がありません。
しかし、レオナルド・ダ・ヴィンチ(1452~1519)やヨハネス・フェルメール(1632~1675)がランキング上位に入っているのはなぜだ? という気になりますが、固いことをいうのはよしておきましょう。
一般の人にも知られた画家がランキングされただけと理解しておきます。
有名な画家であっても、描きながらスタイルを自分のものにしていったのではないかという話に戻します。
レンブラントは63歳まで生きましたが、晩年になるほど、絵具の扱いが自由になっているように感じます。レンブラントほどの画家であっても、自分の手を使って描く中で、新たな発見をしたのではないかと思います。
筆の先につけた絵具は、すべてが自分の思い通りになるものではありません。その変幻自在の油絵具を扱いながら、ある瞬間に、会得するようなことがあります。
そうか、こんなふうに扱えばいいのか、と。
それに気がついた瞬間は、興奮し、しばし、気分が高揚状態になります。頭の中を、自分以外にこんな絵具の扱い方はできないだろう、というような考えが渦を巻き。
私も油絵具を扱っていて、新たな気づきを得ることがあります。私が最近気づいたのは、なるべく、色を混色しないことです。絵具は他の色と混ぜるほど、輝きが失われていきます。
レンブラントは、晩年になるほど、より鮮やかな色をそのままカンヴァスに載せるようになります。生の色に近い絵具の塊が複雑に絡み合うことで、描かれた絵が永遠の生命力を持ちます。
これは口でいうほど簡単なことではありません。しかし、それを自分の手で実現できたときは、心が震えます。
晩年のレンブラントは、震える心で油絵具と戯れたのではないか、と想像します。
