シネマっぽいカメラは誰向け?

カメラメーカーの意識が、デジタル一眼レフカメラからミラーレス一眼カメラへ移行したことで一番変わったと感じるのは、動画を撮るための機能を強化したことです。

ここへ来て、その路線で一歩先を行くソニーFX30あたりを意識したカメラが、キヤノンニコンから立て続けに発表されました。いずれにも共通するのが、電子ビューファインダー(EVF)がついていないことです。

これでは、写真も撮影できるといわれても、私は使う気にならないです。背面のモニタでは、晴れた日の戸外では使い物にならないからです。

あの手のカメラで写真を撮る人は、強い陽射しの下でどんなふうに適正露出を得ているのでしょう。

ニコンのZRは、ニコンとしては初めてのシネマカメラを売りとするカメラです。

ただ、ニコンで写真を楽しむ人は、「価格.com」のクチコミ掲示板を見る限り、「自分は動画は撮らないから縁がない」という人が少なくなさそうです。

メーカー各社は動画機にも力を入れていますが、どのあたりのユーザーへ向けて製品開発しているのか、私にはよくわかりません。

YouTubeで自撮り動画を熱心に撮るような人であれば、この手のカメラと相性がいいかもしれません。しかし、レンズ交換式のカメラを使う人で、YouTubeに定期的に動画を上げるような人はごく限られます。

映像クリエイターというような人を各カメラメーカーが「看板」のように使っていますが、彼らにしても、どれだけの力量と、動画への熱量を持つのかわかりません。彼らとて、5年後10年後にどうなっているかわかりません。

本コーナーで何度も書くように、私は昔から映像に強い興味を持ちます。昔は、8ミリ映画を趣味にしました。

当時は、自分が撮った8ミリを他人に見せるようなことはありませんでした。自分で見るか、家族に見てもらうかです。それでも、動く映像が撮れることに喜びを感じたものです。

今にして思えば、8ミリカメラというのはよくできていました。しっかりと握れるグリップがあり、光学ビューファインダー(OVF)を覗きながら、映像の撮影を確実にできました。

ニコン R10 スーパー

それに比べて、ミラーレスから派生した動画も撮れるカメラは、基本的に、スチルカメラのスタイルです。しかも、EVFが省かれたものは、写真を撮るときのようにカメラを構えつつ、液晶モニタを見ながらの不安定な撮影スタイルになります。

個人的には、なんとなく中途半端な印象です。

リグを組むことで、さまざまな部品をつけることができ、そうすれば、本格的なシネマカメラになるといいます。しかし、普通の個人が、そんな大げさなカメラを使ってまで撮影する対象は何ですか?

自撮りYouTuberにしても、大げさなカメラにする人は多くないのではないですか? とすれば、大げさなシネマカメラは、映像を本格的に撮るような人になりましょうか。

シネマカメラと普通のカメラの境界って?Nikon ZR Lumix S9 SIGMA fp

それだとしても疑問が残ります。

映像製作を本業とする人は、アマチュアが使うような、動画も撮れるカメラではなく、はじめからプロ用に作られた本格的なシネマ専用カメラを選ぶだろうからです。

ALEXA 35 Xtreme – The Guided Tour – More Speed. Less Data.

商業映画の製作現場で、アマチュアが使うようなミラーレス一眼カメラを使う状況が想像できません。

商業映画であっても、たとえば、映像製作会社を長年経営されている桜風涼(はるかぜ・すずし)氏のように、個人が使うようなカメラで実際に製作される例があることは知っています。

切り抜き・映画カメラマンと称する奴から「映画用カメラ、PLレンズ以外はシネマを名乗るな!」とコメントが来た。このクソ野郎を駆逐する! こんな奴が日本映画をダメにしているんだ!

しかし、それは規模の小さい製作現場など、例外的な話ではなかろうかと思います。カメラが立派であれば立派な作品が撮れるとは思いませんが、よりしっかりしたカメラを使うのが一般的であると想像します。

こんなことを考えると、YouTuber向けとしか思えない動画も録れるカメラの位置づけが私にはわからなくなってしまいます。

8ミリの時代から、趣味として動画を楽しむ私としては、昔の8ミリカメラのデジタル版のようなカメラが登場してくれたらいいのにと前から考えています。

写真撮るカメラではなく、動画を撮ることに特化したカメラです。これでは、従来の民生用ビデオカメラと変わらなくなってしまいますか?

ビデオカメラ然としたカメラではなく、昔の8ミリカメラのような動画専用カメラを私はイメージしています。

これだったら、個人が、撮ることだけを趣味とするようなことが実現できるように思います。ただ、このコンセプトで製品化するのは難しそうですね。

ともあれ、写真も撮れる的なシネマカメラは、個人的には食指が動きません。同じような動画でいいのであれば、今使っているミラーレス一眼カメラでも撮れます。わざわざ、シネマカメラを売りにするカメラを使うまでもないです。

リグを組んでゴテゴテにする気になりません。そんな大げさなカメラを個人が持っていても、無駄に目立つだけです。そして、撮れる映像が、普通のミラーレスで撮った映像と変わりがないのであれば、何をしているかわからなくなります。

日本のカメラメーカーが「迷走」しているように感じるのは私だけでしょうか。