映像における音の話です。
YouTubeで動画を見ると、音がついていない動画はありません。探せばあるかもしれませんが、あったとしても、極めて希なケースになるでしょう。
民生用ビデオカメラが登場する以前、個人が映像を撮影できるのは、8ミリ映画用カメラぐらいでした。
私は昔から映像に強い興味を持ったため、8ミリで撮影を楽しみました。
8ミリ映画のフィルムには、コダックが開発したスーパー8と、富士フイルムが開発し、孤軍奮闘したシングル8の2規格がありました。私は富士フイルムのシングル8を使用しました。

どちらの規格にも共通することがあります。8ミリ映画の歴史の終盤になるまで、サイレントであったことです。昔の商業映画のサイレント映画と同じです。撮ったフィルムに音が同時録音されることはありませんでした。
その時代から、アマチュアが製作した8ミリ映画のコンテストがありました。それらに応募される作品は、サイレント作品もあったかもしれませんが、音をつけた作品が主だったように記憶します。
ある年、『小型映画』主催のコンテストで受賞した作品の上映会と受賞式を、東京の砂防会館まで見に行ったのを憶えています。その年は、NHKで美術デザインをする人が個人的な趣味で作った作品が大賞を受賞しました。輪廻転生を描いた作品だったように記憶します。
本来はサイレントの作品にどうやって音をつけたのでしょう。多くは、フィルムとは別に、磁気テープで音を作り、フィルムと同期させて上映したのです。
フィルムの駆動と磁気テープの駆動は別なので、これを同期させるには工夫や技術が必要でした。高度な技術を用いれば、唇の動きに声を同期させるリップシンクロが実現できました。
こんなふうに、8ミリ映画は、その歴史の終盤まで、音がついていないのがデフォルトでした。
その終盤になって、撮影時に音を同時に録音できるフィルムが登場しました。フィルムの端に、磁気テープと同じような素材をコーティングすることで実現されました。
フィルムの駆動は、1コマごとに停止し、露光が終わったらまた1コマ移動させるといった動き方をします。これを、商業映画の場合は1秒間に24回、8ミリの場合は18回繰り返します。
このような動きをするため、テープレコーダーに比べて、音を録るのは苦手といえましょう。
同時録音できるカメラは、カメラにマイクをつけて音を録音しました。これも、音を録音する環境としては最悪です。8ミリカメラ自体から大きな駆動音が発せられるからです。そのカメラにマイクをつけて録音するのですから、録音された音がどんなものかは想像いただけると思います。
それでも、8ミリカメラで音も同時に録音できるは画期的だと思ったものです。
ただ、同時録音できるフィルムで撮影し、編集をすると酷い音になりました。
8ミリフィルムの編集には、編集用の透明なテープを使います。フィルムとフィルムの間に隙間ができてしまうため、編集した箇所では音が飛んでしまいます。
アマチュアの8ミリカメラだけでなく、テレビ局が取材に使用した16ミリカメラは、音は同時に録れないものがほとんだと思います。
NHKの「新日本紀行」や「NHK特集 シルクロード」などの昔の映像を見ると、映像と音が、今の動画のようには、ぴったり同期していない映像が多く見られます。
デジタル時代の今は、どんなカメラでも、動画と音が収録できるのが当たり前と考えられています。
YouTubeには、デジタルカメラを使って作られた動画が無数にあります。その多くは、自分が知っていることについて解説するような動画です。
私は、説明動画から離れ、純粋に動画を撮るとき、彼らは音をどのように扱うのだろうと考えます。
自分が動画に登場したり、登場しなくても、声だけで何かを説明する動画であれば、使いたいのは自分の声です。その声が明瞭に録れることを考えるでしょう。
私が考えるのは、自分の声を使わない動画を作る場合のことです。
YouTuberもYouTubから離れ、子供がいる人であれば、運動会などの学校行事へ出かけ、我が子をカメラに収めたりするのではありませんか。
私が8ミリカメラやビデオカメラを使って撮った映像は、家族や家で飼っている犬猫が主で、プライベートな被写体ばかりだったといってもいいでしょう。
家族に見せるだけの映像です。それを作品にするつもりもなく、8ミリであれば、たまにスクリーンに上映して、見てもらいました。
ビデオと8ミリで決定的に違うと感じるのは、日常性と非日常性です。昔のブラウン管テレビで見たビデオは日常的な印象です。8ミリカメラで撮るのも日常的な映像です。しかし、それをスクリーンに上映すると、非日常性が強まるのを感じました。
ともあれ、こんなふうに、私にとっての映像や動画は、極めてプライベートなものです。
YouTuberも、そのようなプライベート動画を撮ることもあるだろうと思います。そんなとき、音はどう扱っているのか気になります。
日常的なスナップを動画に撮るときは、いい音で録れないことはわかっていても、カメラ内蔵のマイクや、カメラに小さなマイクをつけて音を録っているのでしょうか?
プライベートな動画なので、YouTubeにそのような動画が上がってくることはありません。だから、プライベートな動画の音をどう扱っているのか気になった次第です。
デジタルカメラで映像と共に録れる音は、現実の音です。あとはその音を、どうすれば良い音に録れるかが研究対象になります。
映像と音を別に撮り、録っていた時代を思い返したとき、不自由だった昔のほうが、音の扱いや効果を考えていたように思えます。音を独立した表現と強く意識していたからです。
便利になった今、音を重要な表現要素として考えることの大切さといったことを考えたりしています。
さらにいえば、映像と音が不可分ではなかったため、映像の表現も自由だったように考えます。逆の言い方をすると、映像と音が俯瞰になった今は、映像と音の表現が不自由になったといえましょう。
