暇にまかせてといいますか、映像好きの気持ちにまかせて動画を一本作ってみました。
いろいろな小物が入った引き出しを引っ張り出し、あれこれと捜し物をしました。先日の本コーナーで書きました、8ミリ映画に関係する小物です。
それらは自分にとっての宝物のようなものばかりです。他人から見たら、どうということもないものに見えてしまうかもしれません。
それで思い出しました。我が家が火事になったときのことです。自分の家が火事になるなんて考えたこともありませんでしたので、火事を対岸の火事と考えていました。それが、火の粉が自分に降りかかってしまったのでした。
その時のことを思い返せば、自分もショックでしたが、その時すでに視力を完全に失っていた亡母を避難させるのに必死だったことを思い出します。
英国を代表する画家・ターナー(1775~1851)の作品に、1834年10月16日深夜に炎上した国会議事堂を描いた作品があります。
手元にある『巨匠の絵画技法・ターナー』(ウィリアム・ハーディ 著|倉田一夫 訳|エルテ出版)(1989年6月10日:第一刷発行)で確認してみます。
色彩に魅せられていたターナーであったため、この大火災にも魅了されてしまったようです。その火災をターナーは、ウェストミンスタのテームズ河岸に集まった群衆のひとりとして目撃したそうです。興奮してスケッチをするさまを、同書からの抜粋で紹介しておきましょう。
この火災は、自然には、熱帯地方の落日でさえほとんど見られない、文字どおり燃え上がるような色彩を広く現出させた。炎のピンクやスカーレット、イエロー、そして白熱する木材や熱灰が、冷たく深いブルーの夜空やこれらの映ったテームズの川面と対照をなし、画家にとって思いがけない魅力的光景となった。ターナーはこのスペクタクルに興奮し、視点を変えようとして対岸を駆け回って、目にしたままをデッサンや水彩に残した。
興奮してスケッチに走り回るターナーの姿が、映画のワンシーンのように、目に浮かぶようです。
私もターナーに倣い、自宅の火災時に現実を忘れてスケッチにかけずり回りたかった、ところですが、その時の私はといえば、すぐ上で書いているような自分にとっての宝物類を必死に外に運び出しました。
通りかかった人が荷物の運び出しに加勢してくれましたが、「そんなものよりもっと大事なものを運び出せ」といわれた言葉が私の記憶に残っています。その忠告には耳を貸さず、私はその人には「そんなもの」にしか見えないのであろう自分の宝物を必死に運び出し続けたのでした。
そのような災禍をくぐり抜けて今も私の手元にあるものを紹介する動画を作ってみました。途中まで撮影し、現像にも出さずにとってあった8ミリフィルムです。フィルムを入れた袋に、サインペンで【20ft】と書いてありますから、20フィート分撮影が済んだか、それとも【20フィート】分残っているフィルムです。
本動画のナレーションも、いつものように、私、インディの鞭がしています。
動画中でも説明していますが、ここに登場する8ミリフィルムは、スーパー8とシングル8とふたつあった規格の内のシングル8方式のフィルムです。この方式の開発元である富士フイルムが製造し、販売していました。
ご覧になればおわかりのように、フィルムはカートリッジに入っています。そのため、途中でフィルムをムービーカメラから取り出しても、中のフィルム全体が感光してしまうということはありません。ですので、入れ直せば続きの撮影に使えます。
もちろん、カートリッジから出ている部分のフィルムは感光し、使えませんけれど。
動画に登場するフィルムは「RT200」というタイプでして、「RT」の「T」は「tungsten(タングステン)」の「T」。また、「200」はISO感度(かつては「ASA感度」でした)です。
今はデジタルカメラ(デジカメ)が普及し、民生用のコンパクト・デジタルカメラ(コンデジ)のほとんどがフルオートになってしまったため、撮影環境に応じて色温度を調節することもなくなりました。
当時の8ミリ・ムービーフィルムは、撮影条件によって、使うフィルムが別に用意されていました。
電灯光下で撮影する場合は、RT200のようなタングステンタイプのフィルムを用います。蛍光灯下は撮影が難しく、RT200でも綺麗には発色しませんでした。
太陽光では「デイライト・タイプ」を用います。
シングル8は、「R25」(「R」のうしろの数字は感度で、数字が小さいほど感度は低く、粒子が細かくなります。スチル写真のフィルムでいえば、【ISO100】が標準で、ポジフィルムの「ベルビア」は【ISO50】といった具合です)という製品がありました。
色温度ということでいえば、絵画の世界では非常に重要な要素です。偶然、火災の話でターナーの名が登場しましたが、ターナーは西欧絵画の分やで色彩の魔術師ともいわれました。
技術的に水彩画の要素が多分にオーバーラップするため、ターナー独自の表現になっています。
なお、今回の動画の編集には、私が現在試用中のビデオ編集ソフト、Vegas Movie Studio 8です。
本ソフトを立ち上げますと、今日時点では「期限切れまであと26日」と表示されます。このソフトの試用期限は30日。ということは、使い始めてまだ4日しか経っていないことになります。
それでも、ビデオ編集ソフトは使い方に共通部分が多くあり、使い始めたソフトでもなんとか使えます。
また、使うことで発見する機能もあります。昨日発見したのは、録画済みの映像を手直しできる機能です。
ビデオカメラで収めたビデオ映像は、全体的に明度と彩度が低く、肝心の、フィルムに磁気コーティングされた部分がよく見えませんでした。それで、撮り直そうと思いました。が、ものは試しで、映像の明度と彩度を上げてみたら、案外いい感じになりました。
そんなこんなで、今ではこの動画編集ソフトのVegas Movie Studio 8に惚れ込んでいます。
以上本日は、8ミリ・フィルムを紹介するためにVegasで作った動画を紹介しながら、色彩にまで話を広げてみました。
2024年1月12日、本投稿で紹介している動画をネットの動画共有サイトYouTubeを通じて紹介する形に変更しました。
その際、私が使うBlackMagic DesignのDaVinci Resolve Studioのカラーページにある[自動カラー]を適用しました。