報道しない自由 K高校事案

今月5日に開幕した「第107回全国高等学校野球選手権大会」は、参加校と戦前の予想や、その結果とは別に、ひとつの事案が人々の関心を集めています。

本大会を日本高等学校野球連盟と供に長年主催する朝日新聞は、大会前の2日、「49代表校 記者が分析」と題し、全国各地の事情を知る朝日の記者6人(東京が2人、大阪が4人)が、座談会によって行った戦前の予想を記事にしています。

「有力校」を4校、それを「追う8校」を分析したのち、「実力校」「旋風期待」「勢い注目」に分け、それに該当する高校の戦力を数行でまとめています。

有力校横浜、健大高崎、智弁和歌山、東洋大姫路
追う8校神村学園、西日本短大付、花巻東、山梨学院、京都国際、沖縄尚学、仙台育英、関東第一
実力校津田学園、聖隷クリストファー、高知中央、聖光学院、天理、明豊、日大三、県岐阜商、広陵、鳥取城北
旋風期待東大阪大柏原、未来富山、中越、弘前学院聖愛、敦賀気比、叡明、小松大谷、市船橋、豊橋中央、岡山学芸館、北海、綾羽、高川学園
勢い注目尽誠学園、鳴門、旭川志峯、日大山形、青藍泰斗、松商学園、東海大熊本星翔、開星、明秀日立、済美、佐賀北、宮崎商

春の選抜大会で準優勝し、本大会でも優勝候補に上げられていた智弁和歌山は、初戦で、花巻東に敗れています。

広島県代表は広陵高校です。広陵はC記者により、次の分析がされました。

広陵は1年夏から甲子園のマウンドを経験している堀田が大黒柱で、広島大会決勝を完投した。打線は6試合で37四死球、14犠打。22盗塁と堅実な攻めをする。

この広陵は試合前から注目されました。私はその段になって、広陵が本大会に出場すること自体を問題視されていることを知りました。

それを知って初めて、YouTubeで、関連動画を見ました。それらの動画で伝えられていることの真偽は置き、問題とされた事案を確認しました。

高校野球は、ほかの部活動より早く、夏の大会で負けた時点で、3年生が引退します。全国大会に出場できるのは全国で49校しかありません。ですので、全国の大多数の高校は、7月の時点で、3年生がいない新チームになります。

広陵高校の昨年の成績は記憶していませんが、全国の強豪校ですから、昨夏も甲子園大会に出場したのでしょう。それでも、8月の中頃には、3年生が引退し、新チームに生まれ変わっています。

野球部に残るのは翌年に最上級生となる2年生と1年生の部員です。

学校側も把握する事案が今年の1月に野球部内で起きています。

1年生のひとりの部員の頬や胸を叩いたり、胸ぐらを掴むなどの暴行事案です。それがどの程度のことであったのかは、部外者にはわかりません。

広陵はその事実を高野連に報告し、3月に、厳重注意の判断をされています。その時期には、広島県でも、春の県大会に向け、対戦相手を決める組み合わせ作業なども始まっていたでしょうか。

過去には、部内の暴力事案により、1年間の対外試合禁止を申し渡されてケースもあります。それと比較すると、広陵に下された厳重注意は軽すぎるのではという声が挙がっても不思議なことではありません。

広陵は、夏の大会を有利に戦うため、シード権をかけた春の県大会へ出場しています。そして、夏の広島県予選を勝ち抜き、甲子園大会への出場を勝ち取りました。

本大会が始まる前ぐらいからでしたか、野球部内で暴力被害に遭った当時の1年生、今は2年生になった部員は居たたまれなくなり、寄宿していた野球部の寮から抜け出し、自宅に戻ったりしています。

そのことで、自分の息子が暴力被害に遭っていることに驚いた両親が、学校側から説明を求めたり、ネットのSNSを活用して、事の真相を発信することを始めたようです。私はネットのSNSは見ていないので、なんともいえません。

それとは別に、いじめ被害に遭った息子の両親は、警察に被害届をしたと聞きます。

親がそれほどの対応をしなければならないところみると、単なる「いじめ」では済まない事案であることを窺わせます。

同校の野球部内で暴力を振るわれるなどされたその生徒は、その後、別の高校へ転校せざるを得なくなったそうです。

本事案を知った人々は、ネットのSNSで、学校側や高野連に不満をぶつけるようになりました。

このようにして、問題は瞬く間に大きくなりました。しかし、本大会を高野連と主催する朝日新聞は、昨日まで、それを伝える記事を一本も出していません。

それどころか、Yahoo!ニュースを利用し、朝日新聞の系列にある日刊スポーツが、また、例によって「コタツ記者」が「コタツ記事」を書き、広陵高校の野球部内で起きた暴力事件そのものではなく、その事案をネットで問題視する行為自体を批判的に書いた準有名人のブログを紹介するありさまです。

広陵高校は、広島県大会を勝ち抜き、全国大会へも出場しました。そして、1回戦に勝利しました。それでも、同校への批判が収まらず、この土曜日(9日)、急転直下の判断をします。

大会開催中であるにも拘わらず、以後の試合を放棄し、出場を辞退する決断をしたのです。その考えを、土曜日のうちに高野連側へ伝え、了承されると、翌日曜日の朝、広陵高校の野球部はバスで地元に帰っていったそうです。

大会中の出場自体は、夏の選手権大会では初めてのことだそうです。

この事態の急変を受け、朝日新聞は重い腰を上げました。本日の1面の下方に、「高校野球 広陵が出場辞退」の見出しで、ようやく記事にしました。

本事案が問題視され、ネットで盛んに取り沙汰された時点で、そのことを、本大会の主催者である朝日新聞は記事にして、是非を問うべきでした。

1面のほか、8面のスポーツ面と最終面の社会面で本事案を取りあげています。

朝日は、事の是非を部活動のあり方やSNSとの付き合い方だけから論じるのではなく、本事案をマスメディアがどのように報じたかなどの検証をする必要があります。

私はそれが本事案における一番の問題点だと考えます。

本更新の途中で触れたように、本大会を主催する朝日新聞は、本日の紙面で報じるまで、本事案を取りあげていません。それは、大会を主催する新聞社として、正しい行動だったのでしょうか。

高野連の最高顧問は4名です。そのひとりの角田克氏(1965~)は、朝日新聞の社長で、本大会の会長です。本大会の責任者といってもいいでしょう。

高野連の役員名(2025.5.21)

その角田氏は、広陵高校の野球部で発生した暴力事案は、地方大会への出場を禁止するほど悪質なものではなかったと判断したのでしょうか。

今になって、広陵高校は第三者委員会を設置し、事の真相を調査するとしています。

しかし、この手の委員会は「お手盛り」であることが知られています。調査委員会といいながら、実際のところは、調査される側の罪を軽減したり、「禊(みそぎ)」に利用されるといった具合にです。

今回の委員会もどれほどの意味を持つかはわかりません。

今は、新聞やテレビの報道を見る人々の目が厳しくなっています。真実を報道するとしながら、真実から人々の目を背けさせる行為が横行することに、人々が気がつき始めたからです。

今回も、その流れの一環で、該当する高校への厳しい視線とは別に、それをもっと取りあげなければならなかったはずの朝日新聞社へも、批判の目が向かっていると私は感じています。