私はフィルムの時代から写真撮影を趣味としています。
その時代に私が使ったカメラは、ヤシカから発売されたコンタックスRTSとRTS IIです。このカメラを選んだ理由は、ヤシカ・コンタックス用のカール・ツァイスレンズが使えたからです。
実は、この2台のほかにもう一台、ヤシカ・コンタックスマウントのカメラを持っています。”YASHICA FX-3 SUPER 2000”というカメラです。今も、新品同様の状態で手元にあります。
このカメラについて書こうと思ったのは、YouTubeで次の動画を見たからです。
本動画では、ネットのPRONEWSで伝えられた内容に、配信者の考えも交えて動画にされています。
本動画で紹介されるのが、私がフィルム時代に手に入れたヤシカのFX-3であったというわけです。
このカメラをオマージュしたようなカメラが登場するらしいことが話されています。デジタルの時代ですから、フィルム時代そのままのカメラが発売されるわけではなく、主にボディスタイルを再現するデジタルカメラといったところでしょう。
一部には、フィルムを見直す動きが見られます。しかし、フィルムは現像代も含めてお金がかかりすぎます。ですので、これからフィルムをメインに使う動きはごく一部に限られるでしょう。
本カメラにしても、フィルムの巻き上げレバーらしきものはついています。しかし、フィルムを装填するわけではないので、レバーは飾りに近いものでしょうか。
また、レンズ交換式の一眼レフカメラのように見えますが、レンズは固定されています。しかも、搭載されている撮像素子がコンパクトデジタルカメラ並みということもあり、写りそれなりといったところでしょう。
ビューファインダーも使えず、背面の液晶モニタを見ながらの撮影となります。
ともあれ、この動画を見たことで、手元にあるFX-3について書いてみたくなりました。
造りは、コンタックスRTSやRTS IIに比べれば、それなりです。私がこのカメラを手に入れたのは、電池を使わなくても使えることでした。
電池は、LR44というボタン電池を2個直列に使うようになっています。しかし、電池を使わなくてもシャッターが切れるのです。
打ち上げ花火を写真で撮るのであれば、電池を使わない機械式カメラのほうが断然有利です。
打ち上げ花火の撮影であれば、ISO感度が高い必要がありません。フィルムの時代は、ISO(当時は同じ意味で「ASA」が使われました)100で十分です。
昼光用のデイライトタイプを使い、カメラを三脚に固定します。花火が打ち上がるあたりにカメラを向けてセットします。フォーカスは無限遠でいいでしょう。
レンズのF値はf/5.6とかf/8でいいです。
ここからが重要なポイントです。
レンズにはキャップをつけたり、団扇(うちわ)などで、レンズから光が入らないように覆っておきます。
撮影モードは「バルブモード」です。つまり、シャッターが開いた常態です。
このようにして、花火が打ち上がる音が聞こえたら、レンズの覆いを外し、露光を始めます。そのまま露光を続け、夜空に大輪の花が開き、それが消え去ったら、また、レンズを覆い、一枚の写真の撮影を終えます。
こんなふうに撮影するので、打ち上げ花火の撮影には、電池を使わない機械式カメラが重宝するのです。
電池を使うデジタルカメラでも同じことができます。しかし、露光中も電池を消費し続けます。
本カメラを手に取って改めて感じたのは、フォーカスが合わせやすいことです。
フォーカスを合わせるフォーカシングスクリーンには、スプリットイメージとマイクロプリズムを合体したタイプのものがついています。
私は、このFX-3ニモ、カール・ツァイスのレンズをつけて使いました。いずれも自分でフォーカスを合わせるマニュアルフォーカスレンズです。

デジタル時代の今はオートフォーカスレンズが主流です。それに比べて、マニュアルフォーカスレンズは扱いが難しいように考えられます。しかし、それを使った当時、特別難しく感じることはなかったように思います。
そう感じたひとつには、フォーカスが合わせやすかったことがあります。
今のデジタルカメラは、「マット式スクリーン」が標準装備されています。フォーカスが合っているかいないかは、像がぼけているかいないかで確認します。
これは便利なようですが、正確にフォーカスを合わせるのには、「スプリット式スクリーン」や「マイクロプリズム式スクリーン」のほうが有効のように思われます。
「スプリット式スクリーン」というのは、スクリーン中央部に円形になった部分があります。円の中は真ん中からふたつに分割されています。その隣り合うふたつに分かれた像が合致していなければ、合致させることでフォーカスが合います。
いろいろなタイプがありますが、FX-3は、円が上下に分かれています。フォーカスが合っていないときは、上と下で像がずれます。それを、レンズのフォーカシングリングを左右に回転させて、上下の像が合致するとフォーカスが合ったのがわかります。
FX-3は、このスプリットのほかに、マイクロプリズムがついてます。スプリットの円形の外側に、円の帯がドーナツのようについており、その部分がマイクロプリズムになっています。
マイクロプリズムも原理はスプリットと同じです。それが小さく分割されて並んでいます。これもフォーカスが合っていないと、ふたつの像がずれます。
マイクロプリズムの場合は、フォーカスが合っていないとキザギザに見えます。それが滑らかに見えるようにしてフォーカスを合わせます。
実際にやってみると、デジタルカメラで主流のマット式スクリーンに比べ、スプリットやマイクロプリズムのほうが、フォーカスを簡単に、そして、確実に合わせられるように感じるでしょう。
ミラーレス一眼カメラにもこの方式のフォーカシングスクリーンがあるといいのですが、そもそも論として、ミラーレス一眼カメラにはフォーカシングスクリーンが存在しません。
フィルムで写真を楽しんでいた頃、私は、写真を撮らないときでも、ファインダーを覗くのが好きでした。ファインダーを覗くと、現実とは違う世界が見えるように感じたりしたからです。
江戸川乱歩(1894~1965)もカメラとレンズには並々ならぬ好奇心を持っていました。それらからイメージが膨らみ、作品へと昇華されることもあったでしょう。
レンズ交換式カメラであっても、ミラーレス一眼カメラは、スイッチを入れなければ、ファインダーの像が見えません。そのファインダーも小型のモニタで、それに眼を近づけて見ているだけです。
ヤシカは、京セラに吸収されました。京セラを離れたあとは、いくつかの企業に移動しています。現在はどのような状態なのか、私はよく知りません。はじめに吸収したのが京セラであったのが間違いの基だったように思わないでもありません。
デジタル時代の今、FX-3をそのままのフィルムカメラとして登場させるのは無理でしょう。しかし、FX-3ユーザーだったひとりとしては、精密なペンタプリズムを持つ光学式ファインダーの素晴らしさを再認識させてくれるようなカメラとして登場して欲しいと夢を膨らませたりします。
