洋画の低迷は庶民の嗜好の裏返し

昨日の朝日新聞・文化欄に次の記事がありました。

これは速報を報じた記事ではありません。大手映画会社4社でつくる「日本映画製作者連盟」が開いた会見を受けて記事にしたもので、その会見が開かれたのは先月の29日です。

その会見で、昨年に公開された映画作品の興行収入(興収)が発表されています。邦画の興収は1558憶円で、これは、興収を発表するようになった2000年以降では過去最高になるそうです。

そうであれば、会見に臨んだ4社の幹部が上機嫌であったかといえば、そうではなく、一様にすぐれない表情であったそうです。

その理由は、映画全体の興収に表れています。

全体では2069億8300万円で、前年より減少しています。また、記事の見出しから想像できるように、洋画の低迷が目立ち、洋画だけに限ると、前年に比べて30%低い522億8300円でした。

邦画の上位に来ている作品の多くがアニメーションであるのと同じで、低迷する洋画も、実写版の興収がよくありません。

断るまでもなく、映画はテレビと同じで娯楽です。ですから、誰がどんな作品を見てもその人の勝手です。好みはその人によって違います。

私の好みでいえば、記事で紹介されている昨年の邦画興収トップ10の作品は、どれも見たことがなく、見ようとも思えない作品ばかりです。念のため、トップ10を下に紹介しておきます。

順位作品名興行収入
1名探偵コナン 100万ドルの五稜星158.0憶円
2劇場版ハイキュー!! ゴミ捨て場の決戦116.4憶円
3キングダム 大将軍の帰還80.3憶円
4劇場版SPY×FAMILY CODE :White63.2憶円
5ラストマイル59.6憶円
6動戦士ガンダムSEED FREEDOM53.8憶円
7インサイド・ヘッド253.6憶円
8変な家50.7憶円
9あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。45.4憶円
10怪盗グルーのミニオン超変身45.3憶円
2025年2月18日の朝日新聞記事から

記事では、洋画の実写版が低迷している理由を専門家に訊き、簡単に分析しています。また、低迷が続くことで、どのような影響が出るかについても書いています。

ここから先は朝日の記事を離れ、自分の考えを書きます。

途中で書いているように、映画を娯楽として見ている以上、結果は、人々が求める娯楽の対象が変わってきたとしかいうよりほかないと思います。

洋画作品が求められないことがこの先も続いてしまうようなことになれば、日本の配給会社の買い付けに反映され、日本で公開される作品の多様性を失なわれかねない懸念にも及んでいます。

だからといって、個人が好きで見る作品に上から口を挟み、見る作品に注文をつけるわけにもいきません。その結果、日本で洋画の需要が減ったとしても、それはそれで、致し方のないことかもしれません。

邦画作品にしても、アニメーションやテレビドラマの延長のような作品ばかりが好んで見られている印象です。

今は娯楽が多様化しています。人の数は限られるわけですから、あとは、それぞれの分野が、自分の分野に興味を持ってもらえるよう努力し、ファンの獲得合戦が強まるでしょう。

どんなに時代が変わっても、それぞれの人の好みはそれほど変わるものではありません。

村上春樹1949~)がエッセイの中で、自分の作品を熱心に読んでくれるのは、全人口の数パーセントぐらいと書いています。何パーセントだったかはすぐに出てきませんが、一桁のパーセントであったと思います。

最近は本が売れなくなったという話も耳にします。また、売れている本にしても、今回の邦画のトップ10に似たり寄ったりで、ベストセラーになるような本には文芸作品はあまり含まれないように思います。

私は、何かに役に立つような本は基本的に読みません。ほとんどは、推理物などを中心とする文芸作品です。

本の出版部数の集計は見ていませんが、年間の集計があるとすれば、その上位に文芸作品が含まれることは少ないような気がします。

しかし、本を読むのも娯楽のひとつなのですから、誰がどんな本を手に取っても、文句をつけることはできません。お好きな本をお好きなように読んでくださいとしかいえません。

私の映画の好みは、1950年代1960年代といった米国を中心とする作品です。今は、ネットのサービスでそのような作品に接することができる機会が増え、そのような好みを持つ人には良い時代になりました。

アカデミー賞】“ブランド力”はガタ落ち… アカデミー賞が権威を持っていた1930~80年代の作品賞受賞作を解説【アラビアのロレンス】【アパートの鍵貸します】【オッペンハイマー
‘The Apartment’ | Critics’ Picks | The New York Times

興収に表れないような需要も、あるところにはあるのではと私は考えています。