本日、本サイトで、YouTubeで見つけた次の動画を紹介しました。
AdoramaチャンネルのGavin Hoey氏の動画です。
私はHoey氏の動画を昔から見て、参考にすることが多いです。今も、Hoey氏の新しい動画を見つけるたびに、本サイトで紹介しています。
私が本サイトでHoey氏の動画を初めて紹介したのは、雨が降るアムステルダムの街中を自転車で走る女性を、流し撮りする様子の動画であったと記憶します。今から10年前の動画です。
今回の動画は、3週間前に配信されたものです。配信された直後に紹介することができず、今になってしまいました。
Hoey氏は、YouTubeで活動を始められた頃から、照明を使った撮影に挑んでいる印象です。
デジタルで写真を表現するようになってからは、ISO感度が大幅に高感度になったため、その場の自然な光だけで写真を表現する人が多いです。
プロの写真家であっても、ストロボやライトは必要ないという人までいます。
しかし、ストロボやライトを使うことで、より豊かな光の表現ができることは疑いようがないことです。ただし、スナップ的な写真でそれを実現することは難しいです。あくまでも、モデルや静物を使った写真表現においてです。
今回の動画で、Hoey氏は、四つの照明器具を使っています。
場面の設定は、女性作家が、タイプライターを前にして、執筆作業をするところです。書いてはみたものの、気に入らない原稿がいくつも丸めて捨ててあります。
作家が創作をしているのは夜の設定です。彼女を照らすのは、頭上の裸電球という設定です。
デジタルカメラになってストロボを使う機会が減りました。そして、もしも素人が使うとすれば、暗い被写体を明るく照らすためです。
しかし、今回の撮影では、夜の雰囲気を作ることが目的です。
ストロボで全体を明るく照らし、裸電球が灯すであろう以上の明るさになってしまったのでは、すべてが台無しです。
そこで、まずは、裸電球の明るさが正しく表せる露出をマニュアルで設定します。
Hoey氏は、自分が望む被写体深度にするため、F値にf/5.6を選んでいます。そのF値をもとに、裸電球が裸電球の明るさになるよう、ISO感度をISO400、シャッター速度は1/125に設定しました。
この設定で撮影したら、裸電球は本来の明るさに映りますが、肝心のモデルが暗く写ってしまうので、ストロボで光を加えなければなりません。
まずは、彼女のうしろの高い位置から、小さなストロボを当てます。このストロボは、主に頭部に当てます。裸電球が反射した光を表現するため、ストロボの発光部にオレンジ色のフィルターをつけます。
次は、向かって左側から、夜の雰囲気を出すためのストロボです。
ホワイトバランスについての説明が本動画にはないように思いますが、3200ケルビンぐらいの色温度に設定してあるのかもしれません。
この状態でストロボを発光させると、その光は青くなります。向かって左側からのストロボは、暗部を補うための補助ストロボの役目を果たします。
そして、向かって右側のストロボです。このストロボが彼女を照らすキーライトの役目を果たします。ストロボにはグリッドをつけ、背景にストロボの光が広がらないようにしています。
このような仕掛けをすることで、Hoey氏が望んだ、女性作家の表現が完成します。
YouTubeには、プロや素人で写真を撮る人の動画が数多くあります。残念なことは、その多くが、「機材の紹介屋」になってしまっていることです。
撮影するのには機材が必要ですが、毎回の動画が機材紹介では、本末転倒です。視聴者は、どのようにして、写真表現を深めることができるのかに関心があります。
日本で写真を撮る人は、ストロボやライトに工夫を凝らす人があまりいないように感じます。自然の写真もそれはそれでいいのですが、ときには、工夫して表現する様子も見せてほしいものです。
ともあれ、ストロボは、暗いから使うものだけではありません。であるなら、どんなに高ISO感度になっても、ストロボの出番はなくならないということです。
私にはHoey氏の真似はできそうにもありません。しかし、彼のストロボの扱いを、ほんの少しでも自分のものにしたいと思いました。
