世田谷一家殺害事件の犯人像から受ける「ちぐはぐ感」

本日は大晦日です。24年前のこの日、東京・世田谷で家族四人が何者かによって殺害されているのが確認された事件がありました。

正式な事件名は、世田谷の上祖師谷三丁目で起きたことから、「上祖師谷三丁目一家4人強盗殺人事件」というそうです。

警察の懸命な捜査にも拘らず、犯人を検挙できないまま、24年の歳月が流れました。

今は、YouTubeのようなネットの動画共有サイトができ、それを利用する人が増えたことで、警察で殺人事件などを含む事件の捜査にあたって来た元警察官が、YouTubeなどを使い、現場に近い立場から、発信することをしています。

今年もその事件が発覚した日が近づいたことで、そのようなYouTube動画にいくつか接し、本サイトでも紹介してきました。

本日は、元警視庁捜査一課・殺人犯捜査第一係の佐藤誠氏のYouTubeチャンネル「佐藤誠の警察OBチャンネル」に次の動画があるのに気がつきました。

【深掘り】 ズバリ! 佐藤・山口が検証”世田谷事件”

本動画では、佐藤氏は訊き役に回り、ゲストの本事件に対する考察を、リモートによって訊いています。

ゲストとして出演されているのは、元大阪府警察警視の山口雅之氏です。

私も本未解決事件には興味を持ち、過去に二度ほど本コーナーで取り上げ、つい最近も新たな更新をしたばかりです。

私は、本事件に関心を持ちつつ、基本的なことを確認しないまま24年を過ごしてしまいました。

事件の第一発見者は、被害に遭った宮澤さん宅の隣りに住む、宮澤さんの妻の実母です。その女性が被害者宅の隣に住んでいることは頭で理解していただけで、その二軒がどのような感じだったか、自分の眼で確認したことはありませんでした。

今回紹介した動画に写る映像を見ると、二軒は壁を接するように隣り合い、いわゆる二世帯住宅です。壁がくっついているとはいえ、玄関は別々で、それぞれの家は、玄関を通じてしか行き来できない構造だそうです。

被害者宅の隣りの家には、もともとは、宮澤さんの妻の姉夫婦が住んでいました。また、姉夫婦が所帯を持つ頃に、宮澤さんの妻と妻の姉の父が病死ししたことで、姉妹の母も姉夫婦の家に同居していたようです。

宮澤さんの妻の姉の夫は大手自動車会社に勤めていましたが、その後独立し、1992年だったと記憶しますが、姉の夫が英国で事業を展開するためでしょう、姉夫婦は英国に移住しています。

そんなわけで、姉夫婦の家は、姉妹の母親がひとりで、姉夫婦が帰国するまでの留守番のように暮らすようになったそうです。

そして、運命の2000年に、姉夫婦の息子が中学生になるタイミングで、日本に帰国し、元の家に住むことを始めていたようです。英国にひとり残って仕事をしていた姉の夫も、事件の直前には日本へ戻っています。

私が本事件について知らなかったことといえば、世田谷の上祖師谷に宮澤さん一家が住み、そのすぐ隣に姉夫婦の家があることは頭で理解していましたが、その家がどこにあるのか、地図で調べて見たことはありません。

他人のプライバシーに無断で接近するように感じていたからです。

しかし今回、それを敢えて犯し、Google Earthを使って、事件があった家を捜しました。そしてそれを見つけることができました。

それを見つけて少し驚いたのは、その二軒が、公園の中にあるように見えたことです。

Google Earth「世田谷一家殺害事件現場付近」

事件が起こる前から、宮澤さん宅がある辺りは、公園の拡張が始まっていたようで、元々はもっと周りにあった家が次々に移転し、宮澤さん宅と隣りの姉夫婦の家が公園の中に取り残される形となったようです。

宮澤さん宅のすぐ後ろには、公園内に設けられたスケートボードの練習場があります。本事件について書かれたネットの事典ウィキペディアを読むと、夜の遅い時間にそのスケートボードの練習場を利用する若者がいたため、ときには、宮澤さんがそれを注意し、対立することもあったようです。

前回、本事件について本コーナーで取り上げたタイミングで、本事件の犯人の侵入経路が、宮澤さん宅の中二階にある浴室の窓であると警察が判断したことが正式に発表されています。

その侵入経路について、本ページで紹介する動画にゲストとして出演した元大阪府警 警視の山口氏が、全面的には賛成できないとの本音を漏らされました。

宮澤さん宅の浴室の窓が写る写真が動画に登場しています。それを見ると、おそらくはアルミサッシで出来た窓で、曇りガラスがはめられた窓は、想像していたよりも小さなものでした。

ガラスは二枚で、そこから侵入しようと思えば、半分の面積の部分から中に入り込む必要があります。

犯人が現場に残した靴のサイズは27.5センチ、あるいは28センチです。男性としても大きな靴のサイズといえます。

犯人が事件当日に着ていた衣服や所持品も、多くが現場に残されたため、わかっています。

犯人は、当時若者の間で流行ったデザインのクラッシャーハットをかぶり、ユニクロ製の黒いジャンパーを着ています。その上、腰には深緑色のヒップバッグを提げています。また、首には緑地に赤とオレンジの格子柄がついたマフラーを巻いています。

この格好で、果たして、狭い浴室の窓から侵入出来たのかと私も疑問に思わなくもありません。

これまでの報道によると、浴室には犯人が履いていたテニスシューズ「スラセンジャー」の足跡は残っておらず、足跡は浴室を出た廊下から始まっているそうです。

また、窓枠などに、犯人が来ていた衣服の繊維のようなものは残されていないとされています。

衣服や帽子、マフラー、ヒップバック、はめていた手袋などを窓枠などにこすりつけることなく、侵入できるものでしょうか。

犯人の装備は「重装備」に分類できるでしょう。

浴室の窓から侵入云々を別にしても、たとえば、強盗目的でどこかの民家に侵入するにしては、身につけていたものは邪魔にしかならないような気がします。

外国映画で民家に盗みに入る犯人を描くとしたら、身につけるものは最小限にし、狭いところでも簡単に潜り込めるような格好で描くはずです。そうでなければ、説得力がないからです。

犯人が履いていた靴ひとつとっても、無駄に大きすぎるように感じます。

本ページで紹介した動画に出演した元大阪府警・警視の山口氏は、直感として、物取り目的の犯行ではないのではと話されています。

私も実はそのような印象を持っています。

金銭を盗むのが目的であれば、わざわざ凶器の柳刃包丁を持参するでしょうか。柄の長さを加えれば30センチ程度もあります。それを犯人が持参し、実際に使っています。

山口氏は、犯人の目的は、宮澤さん一家を殺害することにあったのではとご自分の考えを述べられています。私も山口氏と近い考えを昔から持っています。

殺害方法が残酷で、特に、宮澤さんの妻と、宮澤さん夫婦の娘に対しては、顔や上半身を刃物で何度も射して命を奪っています。このような行為は、何らかの恨みを犯人が持っていたことを窺わせます。

宮澤さん夫婦の息子には発達障害があったということです。それと関係するのかどうかわかりませんが、その息子だけは、寝ているところを、首を絞めて殺しています。

事件が起きたのは、24年前の12月31日に日付が替わるか、替わる少し前の30日深夜に起きたと見られています。

その日、宮澤さんは帰宅するのが遅かったのでしょうか。中二階に通じる階段の下で殺されていた宮澤さんの服装が外出着だそうです。

帰宅すれば、すぐに自宅で過ごすときの格好に着替えるか、夜であればパジャマなどになっているでしょう。宮澤さんが外出着のまま亡くなっていたということは、帰宅してすぐか、帰宅したまま、すぐには寝室のある中二階へは上がらず、玄関を入ったところにある書斎で、もしかしたら、その部屋にあるPCにスイッチを入れ、何らかの仕事をしていたのかもしれません。

犯人の犯行の「手際」が良いように私には思えます。

深夜の時間ですから、家の中は電気が消され、暗かったはずです。勝手がわかっている自分の家であっても、真っ暗だったら、電気の紐さえどこに下がっているかわかりません。

犯人が初めて忍び込んだ家の中が暗く、どんな間取りになっているかわからなければ、どの部屋にどのような人間がいるか見当もつきません。

ところが、犯人は夫婦の息子が眠っていた中二階の部屋へ入り、ベッドで眠っていた息子を絞め殺しています。その部屋に、息子の父や母がいるとは考えなかったのでしょうか。

そういったことを考えると、犯人が宮澤さん宅に入ったのは、犯行時が初めてだったとは思えません。もしかしたら、以前に宮澤さん宅を訪問したことがあり、どこに階段があり、間取りがどうなっているか、ある程度は把握していたのではないでしょうか。

そして、侵入経路ですが、玄関から入った可能性がまったくないとはいえないように考えます。

私が気になったのは、犯人が事件当日、黒いジャンパーの下に着ていたトレーナーに、2色の蛍光剤が付着していたことです。トレーナーは過去に何度も洗濯されていますが、その蛍光剤は、洗剤で洗い落された形跡がないことから、前に洗濯したあとについたのであろうことが推察できます。

そして、宮澤さん宅の一階の一部が車庫になっていますが、その車庫から、3色の蛍光剤のついたあとが警察の調べで見つかっています。この車庫に犯人が侵入した形跡はありません。

宮澤さんは学生時代に演劇に興味を持っていたことがわかっています。

宮澤さんが使うPCのブラウザには、劇団四季のサイトがお気に入りに入っていました。また、犯人がそのPCを操作し、そのサイトから、その劇団のチケットを購入した形跡が残っていたとウィキペディアにはあります。しかし、チケットの購入には成功しなかったそうです。

途中で書いたように、これまでにわかっている犯人の服装は、他人の家に忍び込み、強盗殺人を目的とする人間の服装としては「重装備」に感じます。

犯人がヒップバッグに入れたハンカチには、フランス製の香水「ドラッカーノワール」の香水が染みこませてありました。

全体的に、なにか、ちぐはぐな感じがしなくもありません。

もちろん、警察はこれらのことは百も承知で、あらゆる可能性から24年間懸命の捜査をしてきたでしょう。

本事件が解決されることを私も願っています。