自分で自分を追いつめる男

上下二巻からなる松本清張19091992)の長編小説『状況曲線』1988)を読み終えたので、それについて書いておきます。

本作も『週刊新潮』に連載し、それが終わったあと、単行本化されています。本作が連載された当時、同週刊誌で「禁忌の連歌」というシリーズが組まれ、4作品が、1976年1月1日号から1980年2月14日号まで、4年と2カ月間、1号も休まずに連載されています。

本作はその2作目に当たります。連載されたのは、1976年7月29日号から1978年3月9日号にかけてです。本シリーズのほかの3作品と本作で違う点があります。それは、連載後すぐに単行本化されなかったことです。

ほかの3作品は連載が終わった年か翌年には単行本になっています。であれば、本作品も1980年には単行本になっていておかしくありません。それが、単行本として世に出たのは1988年です。それはなぜでしょうか。

私はいずれもAmazonの電子書籍版で読みました。本作の電子書籍版は、「平成23年11月発行の第23刷(平成21年7月改版)を底本とし、仕様上の都合により適宜編集を加えた」と記されています。

本作を読み始めたあと、本コーナーで本作を簡単に触れる機会があったとき、本作の主役を「味岡(あじおか)」というように書きました。味岡はとある建設会社で専務をしています。上下巻の上巻では味岡の心理状況だけが描かれており、上巻においては味岡正弘が主役というよりほかありません。