似非人権派の落とし穴と雲隠れ

松本清張19091992)の短編小説『一年半待て』1957)があります。

これを読むと、いろいろなことを考えさせられます。日頃、弱い者の味方になり、素晴らしい人だと周囲からいわれているような人ほど、自分がしていることへの自信が揺らぐきっかけになるかもしれません。

細かいことを書いてしまうと、まだ読んでいない人の楽しみを奪うことになりますので、粗筋を書くことは控えます。

作品は変わった体裁になっています。読者が接する文章は、ある人間によって書かれたものです。それは一種の告発文で、すべてが終わったあと、実はこうでしたと真相を暴いています。

世間をまんまと騙した人間は、悲劇のヒーロー、あるいはヒロインに祭り上げられます。その人間に手を貸すのは、弱い者の味方を自認するような女性の評論家です。評論家が世論を喚起し、罪を犯した人間を庇い、罪人の罪を軽減させます。