あなたは五輪にどの程度関心を持つでしょうか。
私も子供の頃は大人の世界を知らず、何の問題意識も持たず、無邪気にテレビで五輪中継を見ていました。しかし、大人になるにつれ、五輪への興味を失いました。
ここ20年、あるいはそれ以上、五輪には背を向けています。
個人的には、五輪の年が巡るたびに不安になります。個人的な話にしばらくお付き合いください。
私は、両親と唯一の姉弟だった姉もすでに亡くなりました。そして、両親と姉の亡くなったのが、いずれも五輪が開かれた年でした。
母は1992年に亡くなりましたが、この年にはバルセロナ五輪が開かれました。
父と姉は2000年に亡くなりましたが、この年にシドニー五輪が開かれました。
そして、2004年にアテネ五輪が開かれましたが、この年の8月下旬、私自身が生命の危機に遭いました。
最寄駅から自転車で帰宅する途中、急坂で転倒し、頭部を強打したことで急性硬膜下血腫を起こし、1週間から10日ほど意識不明となりました。あとで聞いた話では、1時間対処が遅れたら助からなかったということでした。
このように、偶然かもしれませんが、五輪の年に肉親を亡くし、私自身の命もなくすことを経験しているため、五輪の年には良いイメージを持てません。
そこへ持ってきて、未だに東京五輪を強行するとしている今年は新型コロナウイルス(COVID-19)の感染が世界規模で広がっています。感染しても軽症で住む人がいる一方、重症化して亡くなる人がいます。
それが五輪の年に起きたことで、ほかの年に起きる以上に個人的には不安感を募らせていたりします。ま、深刻には考えていませんが。
COVID-19の感染者や死者が中国や日本などに限られていたとき、欧米の国々は、対岸の火事を見るように、低い関心度でした。
それが今は、ヨーロッパが感染拡大の中心地域となり、米国も感染者が爆発的に増えています。欧米の国々の人々が当事者となり、パニック度が高まっています。
現金といえば現金ですが、パンデミック状態になったことで、初めて自分にも関わりがあることと考えるようになり、欧米の国々からは、東京五輪を予定通り開催することへの強い懸念が表明されることが増えました。
本日の朝日新聞も、「東京五輪の延期論、続出 米国陸連と水連、ブラジル委も」の見出しをつけた記事を載せています。
直近では、20日に、米国の水泳連盟が、米国五輪・パラリンピック委員会へ、「東京五輪を1年延期するよう、提唱してもらいたい」といった内容の公開書簡を送ったことを明らかにしたそうです。
これに歩調を合わせるように、同じ米国の陸上連盟が、「国際オリンピック委員会(IOC)に延期を働きかけてほしい」旨の書簡で、米国五輪・パラリンピック委員会へ要望したことが明らかになっています。
これまでも、世界のトップアスリートが、SNSなどを使って、大会を予定通り行う事への不安や不満を発していることが報道されたことはありましたが、競技連盟が国の委員会へ要望することが出始めたことは、事態が大きく動いているといえましょう。
朝日の記事は、外国のメディアの論調が、予定通りの開催に批判的になっていることも伝えています。
米国では、すでにニューヨーク・タイムズが、開催に反対したのに続き、20日、ワシントン・ポストが、「東京五輪は停止せよ。今すぐに」というコラムを掲載したそうです。
ほかにも、ノルウェーの五輪委員会が、「状況が世界規模で終息するまで東京五輪は開催すべきではない」との文書をIOCのトーマス・バッハ会長宛に送付したことが20日に公表したそうです。
また、ブラジルの五輪委員会が、東京五輪を1年間延期するよう求めたとの声明を発表し、英国の陸上連盟の会長も、「確実に延期すべきだ」と地元メディアに答えているようです。
未だに東京五輪の延期や中止に傾いていないのは、IOCと日本の大会祖組織委員会、そして、日本の大手マスメディアだけとなりました。
日本のマスメディアは呆れたもので、ギリシャのアテネで採火された聖火が日本に運ばれてきたことを呑気に伝え、今になっても、「さあ、日本に聖火が届きましたよ。大会が始まるのが待ち遠しいですね!」とばかりに、国民の志気を高める報道をしています。
こんな日本のマスメディアの報道が、先の大戦時のメディアの姿に重なって見えます。
日本が勝ち目のない戦争に引き込まれました。戦闘能力に劣る日本が、戦争に勝てることははじめからありませんでした。それなのに、当時の新聞やラジオは、「一億火の玉となって戦え!」とばかりに、国民の戦意を鼓舞する報道に徹しました。
いよいよ負け戦が見える状況になっても、「日本軍の大勝利」と大本営発表をそのまま国民に伝え、事実と異なる報道で、死なずに済んだはずの多くの国民の命を危険に晒しました。
毎年、8月の終戦の日が巡りくるたび、今のマスメディアは「二度と戦争を起こす過ちだけは繰り返すな」といった報道をします。
しかし、今も、権力者に多くのマスメディアが従う体制は、昔と少しも変わりません。
今は、安倍晋三政権に独裁政治を許すように、大手新聞社やテレビ局の幹部連中が、安倍首相の招きに応じて食事会に馳せ参じています。
多くのマスメディアは、トップが毒まんじゅうを食らっているのですから、正義感に燃える記者がいても、上層部には逆らえず、権力になびく報道をしてしまいます。
世界の人々が今夏の東京五輪などとんでもないと考えているのに、未だに日本のマスメディアは、26日、復興の象徴である福島から、聖火リレーがスタートする、などと伝えるありさまです。
福島の県民の多くは、自分たちが五輪に利用されていることを知っています。それだから、五輪になど期待せず、冷めていると聞きます。
全国紙の読売新聞、朝日新聞、日経新聞、毎日新聞、産経新聞と北海道新聞が、大会のスポンサーになっています。
大会スポンサーは、世界で展開できる「ワールドワイドスポンサー」と国内に限定された「リージョナルスポンサー」があり、国内限定でも以下の3つに分類されるそうです。
- JOCゴールドパートナー(ティア1)
- JOCオフィシャルパートナー(ティア2)
- JOCオフィシャルサポーター(ティア3)
読売、朝日、日経、毎日はオフィシャルパートナーですから、「ティア2」にあたり、産経と北海道新聞はオフィシャルパートナーですので、「ティア3」になります。
世界展開できるトップのスポンサーは料金が桁違いで、トヨタのスポンサー料は2000憶円との話があります。その一方、国内に限定されたスポンサー料はトップに比べれば安く、日本の新聞社が加わるティア2は、1社あたり60憶円程度と見る話をネットで見つけました。
しかも、日本の4紙は相乗りの形でスポンサーになっているそうですから、60憶円を4等分する形で資金を出しているのでしょうか。それでも15憶円程度とすれば、少ない金額ではありません。
スポンサー料金の扱いが、延期や中止の場合に契約でどうなっているのか知りませんが、もしもドブに捨てるようなことになることがわかっていれば、新聞社としては、無理を通してでも、大会を予定通りに開くよう、東京五輪・パラリンピック組織委員会へ、圧力をかけることもしかねません。
先の大戦時の軍部とメディアに重ね合わせれば、戦争によって国民が苦しんでいても、自分たちの新聞の販売部数や広告収入を優先し、軍部に戦闘状態を続けるよう圧力をかけるようなものです。
予定通りに行うのであれば、聖火リレーが始まるのは4日後の26日です。一旦始めてしまったあと、途中で止めるようなことにでもなれば、五輪の歴史に日本が、恥ずかしい足跡を残すことになるでしょう。
残り4日、実質3日の間に、安倍政権と大会組織委員会は、正しい判断を下せるでしょうか。東京五輪開催には、それが決定する以前から反対だった私は、高みの見物を決め込むことにします。