Amazonの電子書籍は、安売りキャンペーンをたびたびします。年初にもあり、それを利用して3冊購入したことは、本コーナーで書いたとおりです。
この時に獲得したポイントが昨日還元されているのに気がつきました。このタイミングに合わせるように、再び同じキャンペーンが始まりました。先月31日から4日(午後11時59分)までの期間に、該当する電子書籍を2冊で10%、3冊で15%、5冊以上で20%分のポイントが還元されるキャンペーンです。
私は今回もこのキャンペーンを利用し、松本清張の作品を3冊購入しました。
そのうちの1冊は、『松本清張地図帖』という小々凝った1冊です。清張の作品集で、以下のように、長編の代表作が10作品収められています。
・砂の器
・点と線
・火と汐
・波の塔
・Dの複合
・眼の壁
このラインナップには、私がすでに電子書籍版を単体で購入したものがいくつも含まれます。それらを購入する前に本書の存在を知っていたなら、この1冊で済ませられたでしょう。
本書が特徴的なのは、本書を編集した帝国書院の昭和32年版『中学校社会科地図』を復刻し、清張が作品の舞台にした場所を示していることです。ほかに、作品に登場する鉄道路線や駅、清張の年表などが添えられていることです。
これより前に電子書籍端末にダウンロードした清張作品を順次読み進めたのち、本作を読むのを楽しみにしています。
昨日は、追加料金なしで楽しめるAmazonのKindle Unlimitedを利用し、清張の長編作品『死の発送』を読み終えました。
本作は、『週刊公論』に1961年4月10日号から連載が始まっています。当時は『乾いた配色』の題であったそうです。連載する『週刊公論が』その年の8月21号をもって休刊となってしまい、清張の作品の連載もそこで一度止まってしまいます。
その翌年、同じ出版社の『小説中央公論』の5月号と10月号、12月号に連載されています。この連載が終わった20年後の1982年、連載されたものに加筆がなされ、『死の発送』に改題し、カドカワノベルズ(カドカワ・エンタテインメント)から刊行されたということです。
清張の作品を読んでいますと、後年になるほど悪女が登場しますが、本作は清張が作家デビューして10年ほどで書いたもので、推理に重点を置いて書かれています。
本作で最も興味深いのは、列車の時刻表を基にするトリックです。
作品の途中で、次の図が登場します。
いずれも、東京の上野駅と田端駅から東北方面へ向かう東北本線の列車の発着時刻を、列車の種類ごとに並べて図にしたものです。
一番上の「家畜輸送車」(家畜車)は田端発で、各駅停車で時間をかけて走行していきます。6月15日は、栃木の小山駅を出たあと、この輸送車を利用して競走馬を運んでいた厩務員一名が、「馬の様態が急変したため、すぐに近くの獣医に診てもらいたい」と臨時に停車してくれるよう車掌に掛け合います。車掌は渋々それを承諾しますが、この突発的な出来事により、結局、栃木の矢板駅に10時間も停車するという異常事態となります。
一番下は田端駅発の「貨車」で、これに荷物を預けるため、出発の1時間ほど前、ひとりの中年男性が人が入れられそうなほど大きな古いトランクを運び込み、手続きをしました。
その手続きを受け持った人の証言によって浮かび上がった人物とよく似た人が、貨車の出発より1時間10分あとに上野駅から発車する急行「津軽」に乗って東北を目指しています。
17日の午前8時頃、郡山駅から2駅先にあたる五百川(ごひゃくがわ)駅近くの草むらから、大きな古いトランクが発見されます。
地元の警察が発見された古いトランクの中身を調べると、中からは殺された男の死体が出てきます。
殺された男の人相が、前日の午後8時30分頃、田端駅で古いトランクを「貨車」に積んでくれるよう頼んだ男と似ていることがわかります。
警察は、怪談のような話を相手にせず、古いトランクを受け取った係の人間の証言を疑い、見間違えだろうと判断します。
殺された男を知る三流夕刊新聞の記者・底井武八が独りで執念の取材を続け、自分の知る男が問題の古いトランクを預け、そののちに何者かによって殺され、自分が預けた古いトランクの中から発見されたのに違いない、と真相を追う筋書きです。
途中で紹介しました図にじっくり目を凝らし、殺された男と犯人の動きを追うことが、本作の醍醐味といえましょう。
昨日読み終えた作品について書き終わりましたので、次の清張作品をまた読み始めることにしましょうか。きりがありませんねぇ(´・ω・`)