絞りを開けた写真ばかり撮っていませんか?

スマートフォンで鮮明な写真を撮れるようになったこともあり、フィルムだけの時代に比べ、写真を楽しむ人が増えました。

カメラを使って写真を撮る人は、背景を暈(ぼか)かした写真を好む傾向があります。

私はフィルムの時代から写真撮影をしています。私の場合は全くの趣味で、被写体も身の周りの物ばかりです。

フィルムの時代は、ヤシカ・コンタックス用カール・ツァイスレンズが使えるヤシカ・コンタックスのRTSとRTS IIが私の愛機でした。今もRTS IIは手元に残しています。

ヤシカ・コンタックスRTSⅡボディ

私はプラナー50ミリのレンズが好きで、それでばかり写真を撮っていました。また、絞りも、解放から2段分絞ったf/2.8で撮ることが多かったです。

ヤシカ・コンタックス用カール・ツァイス プラナー50mm F1.4

昔のカメラ雑誌などを読むと、解放からその程度絞って撮ることが推奨されていたこともあってです。

こんなふうに昔から写真に接してきたので、今も必要がなければ、絞りを絞って撮ることは多くありません。

数日前、YouTubeで次の動画を見ました。

f5.6を超えて撮影すべき理由(あなたの想像とは違います)

本動画で語られていることを、GoogleのAI Geminiにまとめてもらいました。

動画の主なポイント

  • 被写界深度の現在と過去
    • 1941年の映画『市民ケーン』では、被写界深度を深くする(ディープフォーカス)ことが斬新なテクニックでしたが、当時は十分な光量を得るのが困難でした [00:13]。しかし現代では、f/5.6ですら「絞った(高い)数値」として扱われ、開放付近で撮影することが一般的になっています [00:38]。
  • 「回折(ディフラクション)」を恐れる風潮への疑問
    • 「f/11以上に絞ると回折によって画像が柔らかくなりすぎる(ボケる)」と言われる一方で、「現代のレンズはシャープすぎる」と矛盾した文句を言う人がいます [01:07]。完璧主義や技術的な数値ばかりを気にするあまり、映像表現が画一的になっていると動画では指摘しています [01:51]。
  • 絞る(f/16やそれ以上)ことのメリット
    • 圧倒的なディテールとリアリズム: 近年、AIやCGI、バーチャルプロダクションによる背景が主流になる中、あえてf/16などで撮影すると、その場の空気感(木の質感や草の匂いまで感じられるようなリアルな描写)が蘇ります [03:25]。
    • 「ボケ疲れ(Bokeh Fatigue)」からの脱却: あらゆる作品で背景を大きくぼかす手法が定番化していますが、時にはそれが陳腐に感じられることもあります [04:44]。
    • 色彩やコントラストの向上: ツァイス(Zeiss)などのレンズは、絞ることでコントラストや周辺のシャープネスだけでなく、色再現性も向上するというメリットがあります [05:12]。
  • ディープフォーカスは「ハードモード」
    • すべてのディテールが画面にハッキリと映り込むため、撮影時のミスなどもごまかしがきかなくなります [05:47]。しかし、真の美しさは「技術的な完璧さ」ではなく「個性(ソウル)」にあり、あえて常識やトレンドから外れることで独自の表現が可能になると締めくくっています [05:55]。

本動画を見て、レンズの絞りについて、今一度考えました。指摘されているように、今は、絞りをできるだけ開き、対象物以外を暈かした表現が主流です。

レンズを製造・販売するメーカーも、よりF値の小さなレンズの開発競争をしています。

レンズの購入を考える人も、より小さなF値のレンズを求め、手に入れたら、開放でばかり撮ったりするのでしょう。

もちろん、絞りを開いた表現も表現の一つです。しかし、それでばかり写真を撮っていたら、表現の幅を自分で狭めてしまいます。

本動画を見て、私は、レンズを絞って写真を撮ることの大切さに気付かされた思いです。

f/16以上に絞って撮ったことはあまりないと思います。

もうひとつ、私が本動画を見て気になったのは、レンズを絞り込んだ時に起こるとされている「回析」についてです。動画では、回析が起こることで、画像が「甘く」なるといっています。

そこで、この「甘さ」と、絞りを開いたときの「ボケ」との違いを解説してもらいました。また、回析はどの程度気にする必要があるのか、それともほとんどないのか、についてもアドバイスしてもらいました。

絞り込んだときに起こる回折(ディフラクション)による「甘さ」と、絞りを開けたときの「ボケ(ピントが外れている状態)」は、現象としても見た目の印象としてもまったく別物です。

ご自身の経験で「あまり感じたことがない」というのも、実際に多くの人が実用上ほとんど気にならないレベルであることが多いため、非常に自然なことです。

それぞれの違いや仕組みについて整理してみました。

1. 絞りを開けたときの「ボケ」

  • 原因: 物理的にピントが合っている面(被写界深度の範囲)から外れた前後の光が、センサー上で広がってしまうことで起こります。
  • 特徴:
    • 主役が浮き立ち、背景や前景がとろけるように柔らかくなります。
    • ピントが合っている部分はシャープで鮮明です。

2. 絞り込んだときの「回折(ディフラクション)による甘さ」

  • 原因: 光が小さな絞り羽根(f/16やf/22など)を通過する際、「光の回折現象(波のように広がろうとする性質)」が起き、光が干渉し合って点像が少し広がってしまう物理現象です。
  • 特徴:
    • 画面全体(ピントが合っているはずの場所も含めて)、全体的にピントの芯がわずかにボヤけたような、コントラストが少し低下したような「全体的なキレのなさ」になります。
    • いわゆる「ピンぼけ」とは異なり、すべてにピントは合っているのに、拡大したときに解像感が少しスポイルされるような状態です。

なぜあまり気にならないのか?

動画の作者も「回折を過剰に気にして理論ばかり気にする風潮」を批判していましたが、以下の理由から実際の撮影ではそこまで深刻な問題にならないことが多いです。

  • レンズやセンサーの進化: 現代のレンズ設計やデジタルカメラの画像処理、あるいはマウントアダプター経由であっても、実用的な絞り(f/8〜f/11程度)であれば、回折の影響は微小です。
  • 表現上のメリットとのトレードオフ: たしかに極端に絞ると理論上の解像感はわずかに落ちるかもしれませんが、それ以上に「画面全体のディテールや空気感がしっかりと写し出される」というメリットの方が、表現として魅力的であることが多いためです。

私の場合は昔から、写真で何かを表現しようというものではありません。手近にカメラがあるので、身の周りの物で気になるものがあればそれにカメラのレンズを向ける、といった程度のことです。

ですから、ボケと回析の甘さの違いを意識するレベルにも達していないと思います。それでもその違いを知ったことで、レンズの絞りを絞って撮影して見て、自分でもその違いを少しは実体験として知りたいと思いました。

カメラ開発が行き所を失ったことが、レンズ開発にも当てはまるところがあるでしょう。だから、今は、どんなカメラやレンズを使っても、撮れる写真に差が出にくいといえましょう。

だから、考え方を変え、レンズを絞って撮ることで、他人とは少し違った味わいの写真を撮れる可能性がないでもありません。

他者との差別化だけを目的とするのではなく、自分でそれを納得でき、自分で撮った写真を自分で楽しめれば、それだけ楽しみが広がるように感じます。