Amazon Prime Videoでまた旧い米国映画を見ました。
前回見たのは『美人モデル殺人事件』というタイトルで、タイトルだけ見ると安直に感じました。それに対し、今回見たのは『恐怖の叫び』(1947)で、人の感情がそのままタイトルになっていて珍しいと思いました。
そこで、GoogleのAI Geminiに、本作が日本で公開されたか訊きました。
『恐怖の叫び』は、当時日本の劇場では未公開(劇場未公開)となっています。
バーバラ・スタンウィックやエロール・フリンという当時の一大スターが出演している作品でしたが、日本ではリアルタイムでの劇場公開は見送られ、のちにテレビ放映やソフトなどを通じて日本に紹介されることになりました。
昭和22年で、日本はまだ戦後の混乱期だったでしょう。この時期も、作家の星新一らは映画を楽しんだようですが、一般庶民は、それどころではなかった、かもしれません。
原題は”Cry Wolf”です。この意味合いについて、Geminiに解説してもらいます。
原題の 「Cry Wolf」 は、英語の慣用句で 「嘘の警報を鳴らす」「オオカミ少年のようなことをする(実際には何もないのに、大げさに騒いだり嘘の危険を知らせたりする)」 という意味です。
イソップ童話の『オオカミ少年(The Boy Who Cried Wolf)』が由来となっており、「嘘や偽りの警告を繰り返していると、いざ本当に危機が迫ったときに誰も信じてくれなくなる」という意味を含んでいます。
この映画のタイトルとして考えると、非常に巧みなダブルミーニングや皮肉が込められています。
映画の冒頭は、森の中にできた曲がりくねった道を車が走っています。その車を追うように、女性がまたがった馬が疾走しています。
マージョリー・C・カールトンの小説を原作とする、サスペンス・ミステリー作品です。
車がついたのは、周囲には民家が一軒もない森の中の邸宅です。車から、一人の女性が下りてきます。彼女が本作の主人公 サンドラ・デマレストです。
演じているのは、このところの私にとってはおなじみとなったバーバラ・スタンウィックです。
サンドラは、夫が亡くなったことを新聞で知り、夫の実家を初めて訪問したのです。
妻が夫の死を新聞で知るなんて変な夫婦と思われるでしょう。また、訃報が新聞で取り上げられるということは、それだけ知られた家の人間であるということです。
サンドラが訪問したのはコードウェル家です。今の主は、エロール・フリン演じるマーク・コードウェルです。主といってもまだ歳はそれほどいっておらず、サンドラと同年代といっていいでしょう。
オープニングで馬にまたがっていた女性もコーウェル家に戻ってきました。彼女は、マークの姪のジュリーです。
コーウェル家に現在暮らしているのはマークとジュリーだけです。執事やメイド、馬の世話をする使用人などがほかにいます。
人間関係がもう一つよく掴めません。ジュリーはマークの娘ではなく姪です。だとすれば、彼女の親はどこにいるのだろうと思ってしまいます。また、どうして姪が伯父あるいは叔父と暮らしているのか、説明がありません。
そして、冒頭で書いたように、サンドラは夫の死を新聞報道で知りました。そんな夫婦があるでしょうか。
サンドラと夫 ジムの「奇妙」な夫婦について、Geminiに解説してもらいます。
実はこの二人の結婚には、少し変わった裏事情(契約結婚)がありました。
- 契約による結婚だった大学時代の知り合いだった二人は、大恋愛の末に結婚したわけではありません。ジムには「結婚して定められた条件をクリアしなければ遺産を受け取れない」という事情があり、一方のサンドラは自身の研究や学業(地質学の博士号を目指していました)を進めるための資金を必要としていました。
- 「半年だけの偽装結婚」の予定だったお互いの利害が一致したため、「半年間だけ夫婦という形を取り、その後離婚する」という契約であらかじめ結婚していたのです。そのため、普段は同じ屋根の下で生活を共にしておらず、サンドラは夫の死を新聞の訃報で初めて知ることになりました。
ジムは実家を預かるマークに、遺産相続のためだけに「結婚」という形だけを取ったことを伝えていなかったのでしょう。だから、サンドラが彼の妻だといっても、理解してもらえません。
サンドラとしては、ジムの死に顔をせめて見せて欲しいということと、遺産を受け取る権利が自分にもあることをマークに伝えます。
マークは、何かのためにそう振る舞っているのか、他者を受け入れない冷たさがあります。姪のジュリーのことも厳しく監視し、教育しています。
ジムの棺が閉じられたあとだったため、サンドラがジムの死に顔を見ることは叶いませんでした。
サンドラがコーウェル家についたとき、最初に顔を合わせたのはマークの兄のチャールズでした。サンドラがチャールズに、自分が唐家を訪問した理由を伝えると、それなら、とマークに会わせてもらったのです。
なんだかよくわからなくなってくるでしょう。マークに兄がいるなら、コーンウェル家は兄のチャールズが継ぎそうなものだからです。
どんな理由があってのことか、兄は実家を出て、今は、上院議員をしています。彼は、ジム死亡の知らせを受け、仕方なしに実家に戻り、要件を済ませたあとは、すぐに戻っていきます。
サンドラと形ばかりの結婚をしたジムが、マークとどのような関係かといえば、マークの姉か妹が、ジムとジュリーの母親にあたります。
つまり、ジムやジュリーからすれば、マークは伯父か伯父になります。
この母親と彼女の夫もすでにいないので、関係がわかりにくくなります。早死にの一族なのでしょうか。母親が健在であれば、関係がもっとすっきりするでしょう。
マークは一族の遺産を管理するのが仕事のように見えます。これといって仕事をする様子がありません。そこで、彼の仕事について、Geminiに教えてもらいます。
マークは屋敷の中に立ち入り禁止の秘密の実験室(研究室)を持っており、そこで何やら研究を行っています。
作中では、彼は邸宅にこもりきりで、一般の会社勤めのような仕事をしている様子はありません。むしろ、一族の財産や屋敷の管理を背負いながら、この謎めいた実験室での研究に没頭しているのが大きな特徴です。
冒頭で、マークの姪のジュリーが馬を走らせていました。実は、サンドラも乗馬が好きなようで、二人で森の中を馬で走り回るシーンがあります。
見たところ、サンドラを演じたバーバラ・スタンウィック自身が馬を操っているように見えます。そこで、スタントウーマンを使わずに彼女自身が馬に乗っているのかと訊きました。
お気づきの通り、バーバラ・スタンウィックは乗馬がとても得意で、ハリウッドでも屈指の乗馬上手な女優として知られています。
彼女は西部劇などの出演作も多く、スタントをあまり使わずに自分で馬を乗りこなすことでも有名でした。『恐怖の叫び』の中でも、森の中の曲がりくねった道を馬で颯爽と駆けるシーンなどがありますが、あれは代役なしの本人による見事な乗馬姿です。
前回の更新で、『美人モデル殺人事件』を製作した当時の20世紀フォックスが、いかに巨大な撮影資本を持っていたかについて書きました。
本作を製作したのはワーナー・ブラザースです。こちらも当時は、広大な施設を持っていたことをGeminiに教えてもらいました。
ハリウッドの黄金期(1930〜1940年代)には、大手映画会社(メジャースタジオ)はどこも自社で広大な土地を抱え、その中にいくつもの巨大な撮影ステージ(サウンドステージ)や、野外セットを組むオープンセット(バックロット)を持っていました。
ワーナー・ブラザースの場合、主な拠点はカリフォルニア州バーバンク(Burbank)にありました。
ワーナー・ブラザースのスタジオの特徴
- 巨大な敷地と設備:何十面ものサウンドステージ(防音型の巨大な屋内撮影所)に加え、野外にはアメリカの田舎町、住宅街、西部劇のセットなどが組まれた広大なバックロットがありました。
- 効率的な「工場」システム:当時のワーナーは「映画は効率よく量産するもの」という方針があり、セットを使い回したり、敷地内で衣装から小道具、現像まですべて完結させたりする体制をきっちり作っていました。そのため、森の奥の屋敷や実験室といったセットも、このバーバンクのスタジオ内に巧みに組み上げて撮影されていました。
本作に登場する森が、ワーナー・ブラザースが所有する敷地内だったのかは、Geminiに確かめていないので、わからないとしておきます。
ジュリーを演じた若い俳優 ジェラルディン・ブルックスも、上手に馬を操っていました。当時は西部劇に出演することもあるなどして、馬に乗れるというのも、俳優の一つの条件といった面があったのかもしれません。
このあと、サンドラはどのような扱いを受け、何を知ることになるのかなどは、本作をご覧になって確かめてもらうよりほかありません。
