懲りずに(懲りる必要もないわけですけれど)、Amazon Prime Videoでフィルム・ノワール作品を愉しんでいます。昨日見たのは『危険な航海(原題:Dangerous Crossing)』(1953)です。
題名を見ただけで、物語の舞台が船の中であることがわかります。
主人公は、ルース・スタントン・ボーマンという若い女性です。彼女の家族について、GoogleのAI Geminiに簡単にまとめてもらいます。
劇中でルースが語る生い立ちや家族の背景について、ご記憶の通り、非常に重要な要素として描かれています。
作中の設定やルースの回想によると、彼女の家族構成や背景は以下のようになっています。
- 父親について
- フィラデルフィアの巨大な会社(鉄鋼関連などの大企業)を一代で築いた実業家でしたが、物語の数ヶ月前に亡くなっています。彼の死によって、ルースは莫大な財産の相続人となりました。
- 母親について
- ルースがまだ幼い頃に亡くなっており、彼女は母親の記憶があまりありません。
- 兄弟について
- 兄弟はおらず、一人っ子として父親に大切に育てられました。母親を早くに亡くしているため、父親の死後は強い孤独感を抱えていました。
物語が始まる4カ月ほど前、ルースの父が他界しています。母は彼女が幼い頃に亡くなり、兄妹もいないので、ルースは、父が残した莫大な資産を一人で相続する立場にあります。
こんなルースが、2カ月前、ニューヨークでジョン・ボーマンという男性と知り合い、短い交際期間を経て結婚したばかりです。
その新婚夫婦が、豪華客船に乗り、ニューヨークから大西洋を横断し、英国のサウサンプトンまでの船旅に出るという設定です。
本作には原作があるのかと訊き、次のことを教えてもらいました。
本作は、ミステリー作家の巨匠ジョン・ディクスン・カー(John Dickson Carr)が1943年に発表したラジオドラマ『B-13号室(原題:Cabin B-13)』を原作としています。
このラジオドラマは非常に好評を博し、のちに雑誌に掲載されたほか、テレビドラマ版(『ヒッチコック劇場』などを手掛けたアンソロジー番組内や、のちの1992年のテレビ映画版『Treacherous Crossing』など)としても幾度となくリメイクや映像化がなされています。
ディクスン・カーという名を聞き、あることを思い出しました。江戸川乱歩が残した膨大な記録の中に、彼の名が出てくることです。
本作が製作されたか、それよりも少し前、神戸のあたりにいた探偵小説の愛好家らが発行した同人誌の中に、カーの名があったことです。
神戸は、外国船が入港する港があることで、船の中で読み捨てられたりした米国の推理小説などが数多く手に入る状況にありました。海外の推理小説を中心とする小説の愛好家が神戸にいて、彼らは原書のまま読むか、自分たちで翻訳して、早い段階から、米国の推理小説を楽しむ環境があったようです。
このあたりについても、Geminiに解説してもらいます。
ご記憶の通り、まさに日本の本格ミステリの黎明期を支えた神戸の若者たちと、江戸川乱歩の深い関わりですね。
大正から昭和初期にかけて、神戸には横溝正史や、のちに『新青年』などで活躍する西田政治らがいました。彼らは若い頃から大変な海外の探偵小説(当時は「探偵趣味」と呼ばれました)の愛好家で、神戸の街で海外の新しい推理小説情報をいち早くキャッチし、同人活動や情報交換を行っていました。
その後、江戸川乱歩が『二銭銅貨』などでデビューすると、神戸の若者たち(特に横溝正史ら)は熱烈なファンになり、乱歩との間で熱い手紙のやり取りが始まります。それが縁で横溝は上京し、のちに乱歩も参加した「探偵趣味の会」などを通じて、日本の探偵小説壇が形作られていきました。
本作の主人公 ルースは、乗船後まもなく、夫のジョンと離れ離れになってしまいます。「貴重品を預けてくる」といって船室を出たきり、いくら待っても、ジョンが現れません。
結婚後まもなく、おそらく初めて乗った豪華客船で、夫が消えてしまったのです。これ以上不安に感じることはないでしょう。乗船券などはジョンがすべて持っているので、彼女は自分の身分を証明できるものが何一つありません。
最終的には船長に会ってもらい、事情を説明します。しかし、彼女のいうことをなかなか信じてもらえません。乗船名簿にも、ルースとジョンのカップルが乗船したことが載っていませんでした。
ルースが旧姓のルース・スタントンとして、一人で乗船したことになっています。
だから、船長としても、ルースがいうジョンという男性はおらず、彼女が勘違いしているか、精神的に少し不安定になっているのでは、と考えてしまうのも無理のないところです。
船にはポール・マイングという頼りがいがありそうな、専属の医師が乗船しています。ルースはマイング医師に助けられつつ、それでも、彼を完全に信じることもできず、ジョンの行方を捜すことになります。
ルースの夫ジョンはどこへ消えたのか。ルースはその後どうなるのか気になる人は、本作で今後の展開を確認してください。
