マイケル一家のその後を描いた三作目には不満足

Amazon Prime Videoで、たまたま『ジ・オファー / ゴッドファーザーに賭けた男』を見たことで、フランシス・フォード・コッポラが監督した『ゴッドファーザー』(1972)と『ゴッドファーザー PART II』(1974)を見ました。

そして昨日は、同シリーズで三部作目、あるいは後日譚に位置付けられる作品を、Prime Videoで見ました。1990年に公開されたときは『ゴッドファーザー PART III』のタイトルでした。

本作は、PARTIIが公開されてから16年後です。本作について書かれたネットの事典ウィキペディアによれば、コッポラ自身は、『コーダ:マイケル・コルレオーネの死』(原題: Coda: The Death of Michael Corleone)としたかったようですが、配給会社のパラマウント映画に却下されたようです。

本作は前二作に比べて評価は高くなく、興行成績も良くなかったそうです。

映像作品を世に送り出したコッポラとしても、自分が作った作品の評価が高くなかったことは、長いこと、彼の心に引っかかっていたことでしょう。

本作が公開された30年後の2020年、フィルムと音声を修復し、オープニングとエンディングを変えるなど、再編集した作品として公開されました。

タイトルは、当初の思いを反映し、邦題は『ゴッドファーザー 〈最終章〉:マイケル・コルリオーネの最期』に変わりました。

Prime Videoにも『PART III』はなく、『ゴッドファーザー 〈最終章〉』がありました。ただ、よく見ると、同じタイトルの動画が二つあり、一つの製作年が1990、もう一つが2020となっています。再生時間が少し違うので、まったく同じ作品ではなさそうなことがわかります。

いずれも、字幕版ではなく、日本語吹き替え版です。私は字幕版で見たかったのですが、吹き替え版で見ました。2020年とクレジットされたほうが「最終章」だろうと思って、それを見ました。

コルリオーネ一家を率いるドンとなったマイケルを軸に描かれています。前作から16年の歳月が流れ、マイケルを演じるアル・パチーノが年を取った男を演じています。

個人的には、パチーノが演じる年齢を重ねたマイケルがあまり魅力的には映りませんでした。良い年の取り方をしていないように見えます。

これは、マイケルを演じた彼の実人生が役柄に反映されている(?)といえましょうか。

前二作に比べて、三作目が個人的にはあまりおもしろく感じられません。それは、本作が再編集される前も、そして編集された作品を初めて見たときにも感じました。

話の筋が、マイケルの家族の話から、彼のビジネスを巡る争いへと移ってしまったことで、肝心の家族がきめ細かく描かれていないことが不満に感じてしまう原因となっています。

登場人物もあまり魅力的ではありません。

一作目と二作目に、パチーノ演じるマイケルが、若きドンとして登場しました。そのマイケルが年老い、活きの良い若者が必要ということで、ヴィンセントが登場しています。

彼は、マイケルの兄のソニーが愛人に産ませた子供です。ヴィンセントが成長してマイケルの前に現れ、ヴィンセントにファミリーのまとめ役を任せる意向であることを描いています。

このヴィンセントですが、チンピラのような感じで、個人的にはあまり好きにはなれません。彼は、父親のソニー譲りで、乱暴者です。

ほかの配役で気に入らないのは、一作目と二作目に登場したトム・ヘイゲンが登場しないことです。トムは、両親に捨てられた孤児として、ドンのヴィトーに引き取られ、彼の子供のように育てられます。

トムは大学で法律を学び、弁護士の資格も持っています。そのトムが本作には登場しません。

代わりに、マイケルの傍で補佐役をするのはハリソンという男です。

彼が登場するのを見たとき、それを誰が演じているかすぐにわかりました。ジョージ・ハミルトンという俳優です。

彼は、米国の刑事ドラマ『刑事コロンボ』に、犯人役で二度出演しています。

一度目は第31話の『5時30分の目撃者』(1975年4月27日放送)。

The Eyewitness | Columbo

二度目は、新シリーズとなった第57話『犯罪警報』(1991年2月20日)です。

An Upper Case Clue | Columbo

ということは、彼が『刑事コロンボ』で二度目の犯人役を演じたのは、『ゴッドファーザー 〈最終章〉』で、ハリソンを演じたすぐあとぐらいになりましょうか。

彼は見るからに冷酷そうな感じです。私生活ではプレイボーイとして知られ、エリザベス・テーラーと浮名を流したことも有名です。

その彼がマイケルの補佐役を演じていて、見ていても、あまりいい気分にはなりませんでした。

ヴィンセントと対立するマフィアのザザも、魅力的な配役には見えません。

一作目の『ゴッドファーザー』は、ライバルのマフィアを演じる役者に貫禄がありました。アクの強さも魅力となっていました。

その点、ザザを演じた役者は、悪役として貫禄が足りません。どこかの中小企業の課長ぐらいにしか見えません。

The Godfather: Part 3 (2/10) Movie CLIP – All Bastards Are Liars (1990) HD

マイケルの長女・メアリーの役をコッポラの娘、ソフィア・コッポラが演じ、1990年版が公開されたときは、彼女の演技が足りないことで、批判が集中したと聞きます。

個人的には、彼女の演技が特別足りないようには感じませんでした。もう少しアクの強い女優に演じてもらったら、違ったメアリー像になったかもしれませんが。

それは、マイケルの息子アンソニーについてもいえます。彼も、もう一つ存在感に欠けるように感じました。

それは役者の演技にあるというよりも、彼らを活かす脚本段階で、人物像の描き方が足りなかった面もあるでしょう。

コッポラが監督したほかの作品の中には、細やかな人情を描いた作品があるのかもしれません。しかし、本作は、それがあまり描かれていないように感じました。

マフィア一家を描くということで、マフィアの抗争を描かないわけにはいかないといった面もあるでしょう。それが本作は、パーティ会場を上空から銃撃するといった派手な設定をしています。

ヘリの攻撃 | ゴッドファーザーPARTIII | 映画シーン

アメリカンコミックを原作とする『バットマン』や『スーパーマン』が、映画でシリーズ化されると、続編が作られるたびに、どんどんと大げさになっていきました。

かつて、『バットマン』が米国のテレビドラマ用に製作されました。その頃のバットマンが扱う事件は、身の周りの小さなものばかりでした。それぐらいの事件が、バットマンに相応しい事件だったといえるでしょう。

Batman Opening and Closing Theme 1966 – 1968 With Snippets

本作では、ヴァチカンや世界的な投資銀行を筋に盛り込み、話を膨らませています。それによって起こされる暗殺事件の描き方は、アルフレッド・ヒッチコックの描き方には到底及んでいません。

マイケルがコルリオーネ一家を担ったことで、家族の幸福が失われ、マイケルの兄、フレドはマイケルの意志によって殺されています。

これだけのことをしたマイケルが人生の黄昏を迎えたときの胸中を、コッポラ監督にはじっくりと描いて欲しかったです。

それなのに、乱暴者のヴィンセントを登場させ、彼に派手なことばかりさせています。

そんなに、人殺しの場面を描くのが好きなのでしょうか。

もう一度『ゴッドファーザー 〈最終章〉:マイケル・コルリオーネの最期』を見たいかと訊かれたら、私は当分は見る気が起きないです。