どんなマイクも使い方次第

前回の本コーナーは、自分の声を、ZOOMのフィールドレコーダーのF2に、オーディオテクニカAT9912という小型マイクをつけて録ったことを書きました。

今回は、同じレコーダーに、別のマイクをつけて声の収録をしてみました。使ったマイクは、VM-Q1という中華製の安価なコンデンサーマイクです。

ZOOM F2とVM-Q1

本マイクは、ミラーレス一眼カメラで動画を撮るとき、カメラのアクセサリシューにつけて、より良い音を収録しようと購入したものです。

EOS RPに外部マイク VM-Q1

本マイクに限らず、カメラにマイクをつけて音を録ることは、できれば避けたいことを知りました。

どんな高価で高性能なマイクを使おうとも、音を発する被写体から離れてしまったら、決して良い音を録ることができないからです。

カメラにマイクをつけてしまったら、カメラにストロボをつけたときと同じです。カメラの理想的な画角とマイクやストロボが合致すればいいですが、そうでないことが大半です。

マイクでいえば、被写体に近づいて撮るのであればいいですが、被写体から離れてしまったら、良い音では録れません。被写体からカメラを離せば、カメラについているマイクも一緒に遠くに離れてしまうからです。

ショットガンマイクだからといって、狙った音を遠くから狙い撃ちするように録れるわけではありません。

被写体から1メートルも離れてしまったら、使い物になる音は録れないと考えるべきだというのが原則になります。

2022年版:ショットガンマイクは買うな! 音質は95%が距離とセッティングで決まる。ショットガンマイクはワンマンオペレートには適さない。

この説は誠にそのとおりです。しかし、私が主に撮るような動画には、必ずしも当てはまらないといえます。

YouTuberが自撮り動画を撮るのであれば、確かにそうだと思います。しかし、私は自撮り動画を撮ることはありません。また、カメラに向かって何かを話すこともしません。

その昔、民生用ビデオカメラを使っていた頃のことを思い出してください。

そのようなビデオカメラは、家族や行事の記録を撮るのに利用することがほとんどだったのではありませんか? 私もそのような用途でビデオカメラを使いました。その撮影の時に録れる音は、その場の雰囲気を伝える音になります。

もちろん、狙った音は録れず、クリアな音で録れているわけでもありません。しかし、それが記録映像であれば、そんな音でも特別不満には感じなかったのではないですか?

今の感覚でそのビデオを見返すと、たしかに、良い音で録れていないことには気がつきますけれど。

そんなわけで、ビデオを使って撮影していた頃は、マイクを別に用意し、そのマイクでより良い音を録ろうとは考えませんでした。

テレビ局が番組のためのビデオ撮影をするのであれば、テレビ視聴者に見てもらうために、より良い音が録れるようにします。

外へ出て撮るようなときは、カメラや専用のレコーダーに有線や無線でつないだマイクを出演者に持たせ、道行く人に何かを訊くような場面では、マイクをその人に近づけて話す言葉を録ります。

素人がビデオ撮影するときは、そんな手のかかることはまずしないと思います。

私がミラーレス一眼カメラで撮る動画も、その時代のビデオ撮影と変わりません。その場の雰囲気が環境音として録れればいいだけなので、カメラに内蔵されているマイクで構わないぐらいです。

動画が撮れるカメラを市場に提供するメーカーとしても、普通の個人が撮る動画は、本格的な動画撮影に使われることを想定していないのではないでしょうか。

そのような使い方をするのは、YouTubeに代表されるネット配信目的でカメラを使うなど、ごく一部の人に限られます。

それだから、カメラには昔からマイクが内蔵され、手軽に動画と音声が収録できる構造にできているのです。そして、多くの個人は、その構造のカメラで撮った動画で満足しているのです。

私は、カメラに内蔵されるマイクよりも良い音で撮れるかもしれないと外部マイクのVM-Q1という安価なマイクを購入したというぐらいのことです。

しかし、私は写真を撮ることが主なので、マイクをカメラのアクセサリーシューにつけっぱなしでは邪魔です。そんなこんなで、いつしか、本マイクは使わなくなりました。

こんな経過を経て、使わなくなったVM-Q1を久しぶりに持ち出し、自分の声を録るのに、F2につけて使ってみたというわけです。

VM-Q1で録った私の声を音声ファイルにしたものを下に紹介します。前回の更新から冒頭部分を音訳したものです。

自サイト「小型システムで自分の声を録音」途中まで

自分では、思ったよりも良い音で録れたように感じます。

マイクには、毛がふさふさしたウィンドジャマーがついています。それをつけたまま使いました。それがついていることで、息がマイクにぶつかったときに生じるであろう風切り音を和らげてくれると考えたからです。

マイクと口の距離はだいたい20センチぐらいでした。F2を左の掌に収め、指でマイクを持って録音しています。

最終的な決め手は、マイクと口の距離です。これが的確であれば、安価なマイクであっても、この程度の音が録れることの証明にはなってくれたでしょうか?

この組み合わせでアンビエントの収録をしても良さそうに感じました。一番の魅力は、小型であることです。どこへでも気軽に持ち出せます。

惜しむらくは、F2はモノラルでしか収録できないことです。しかし、これは、そういうものだと割り切って使うことにします。