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日々の独り言

レンブラントの油彩技法が私の目指す到達点

昨日、描きかけの油彩画に加筆しました。いくら時間をかけても、望むような感じにならないと半分諦めていました。

亡くなって今年で27年になる母の生前の姿を描いています。その当時は、とうに視力を失っていましたが、家の中で猫を抱いているところを私が写真に撮り、それをもとに描いている小さな絵です。

同じ写真から何回か描いて試しましたが、うまくいかず、これで何度目かの挑戦です。今回は思いつきで、支持体はカンヴァスではなく、何かのときに使おうととってあった1センチ程度の厚みを持つ板です。

サイズは、ほぼSM(サムホール 22.7×15.8センチ)です。

写真をもとに描くといっても、写真を見るのははじめだけで、あとは何も見ず、絵具をつけていきました。こうすることで、固有色に必要以上に縛られず、自由に色を扱える気分になれます。

小学校の低学年の子供たちが、たとえばクレヨンを使って自由に描いた絵を見ますと、うらやましく感じることがあります。固定観念に縛られず、思いが向くままにクレヨンを走らせてることができているからです。

年齢を重ねるにつれ、固定観念は強まってしまいます。これは絵を描く行為でも同じです。

それが絵の世界で実現できた一人は、フィンセント・ヴァン・ゴッホといえましょう。完成度という点ではいささか物足りないものがありますが、精神を解放させた点では、学ぶべきところがあります。

大人の、それも自称を含めた画家であっても、人物を魅力的に描ける人は少ないです。人物に限らず、風景や静物であっても、初心者ほど写真のように描けることを目指しがちで、鑑賞者の多くも、写真のように描かれた絵を称賛したりします。

私が初心者だった大昔も、はじめは写真のような絵に大いに驚嘆したものです。

昔からテレビの美術番組には接しており、西洋の画家は知っていましたが、身近なところで、リアルなイラストレーションに興味を持ちました。

その当時、私がその出来栄えに驚いたのは、たとえば、斎藤雅緒(さいとう・まさお)氏が描いたイラストレーションでした。当時はイラストレーションを扱う雑誌(『イラストレーション』)を定期購読しており、それを通して、斎藤氏を知りました。

斎藤氏たちが描くリアルなイラストレーションはハイパーリアリズム(スーパーリアリズム)などと称され、ブームとなっていました。写真よりも本物らしくイラストレーションです。

斎藤氏がそれらを描くのにエアブラシを使っていることを知り、早速、電動式のエアコンプレッサーやハンドピースなど一式揃え、真似をすることをしました。

同じ期のイラストレーターに、空山基(そらやま・はじめ)氏もいました。空山氏が主に描くのは女性で、全身がメタリックな女性の体をしたロボットなども描いています。

私が所有する空山基氏の作品集『セクシー・ロボット』の表紙
(昔に買ったもので、表紙が汚れています)

空山氏は鉛筆や筆を主に使い、薄く溶いた絵具で色付けをしていることを知りました。ハイライトは砂消しゴムを使ったようです。これらの技法にも早速興味を持ち、自分で真似たこともあります。

こんなことをしていた時期は、NHK-FMのリクエスト番組名が『サンセットパーク』に変わる前の『夕べの広場』(これは東京発の番組で、そのほかの多くは『夕べのひととき』と呼ばれていたようです)宛にリクエストカードを時期に重なります。

リクエストする曲に合わせたようなイラストを描いては、リクエストしていたことを思い出します。まだ、個人向けのPCが広くは発売されていない頃です。

同じ頃、『エイリアン』という映画が話題になりました。グロテスクなモンスターが登場する作品ですが、そのモンスターを作り出したのがH・R・ギーガーで、彼はエアブラシで小さな点まで表現できてしまうことを知り、驚嘆したものです。

これらの過程や経験を経たのち、私の関心が向かった先が、レンブラントに代表される西洋古典絵画なのでした。

以来、レンブラントが自在に用いた油絵具がうまく扱えず、苦労に苦労を重ね、現在に至っています。未だに先の光明が見えません。が、昨日、そのわずかなヒントを得たように感じることができました。

過去に何度も同じような手ごたえを感じながら、未だにものになっていませんので、今回も空振りの可能性が大ではありますが。

西洋絵画の歴史をザッと見ますと、レンブラントらが登場するまでは、実物に近い絵にすることに力を注いだように感じます。私がひと頃までハイパーリアリズムの世界に浸ったようにです。

油彩画の祖ともいわれるヤン・ファン・エイクの作品は、細部まで一切手を抜かず、実物のように描いています。

それがレンブラントの作品では、信じられないほど雑に絵具がつけられているように感じます。

レンブラントにしても、はじめから晩年のような絵具の扱いをしていたわけではありません。彼の画集を初期の作品から辿れば、初期は人の肌にしても、色の付け方は滑らかです。

それが、晩年になればなるほど自由になり、それが人物を生き生きと見せ、圧倒的なマチエール(絵肌)を獲得しています。

どうでしょう。現役の画家の中で、晩年のレンブラントのような油絵具の使い手がどれぐらいいるでしょうか。

現代においても、写真のように描く画家や作品が相変わらず尊ばれる傾向が残っています。ネットの動画共有サイトYouTubeを見ても、写真のように描く工程の動画が再生回数を稼いでいます。

人の好みはそれぞれで、そうした画風を求める人がいてもいいでしょう。しかし、たとえば人物を描くとき、本物そっくりに描くのだといって、肌をのっぺりと表現してしまったら、マチエールの魅力を捨て去ってしまったのと同じことに気がつくべきでしょう。

ディエゴ・ベラスケスの作品にもレンブラントに通じる技法があります。それが国王夫妻や王女を描いた作品であっても、細部まで克明に描くことはしていません。

近づいて見ると、絵具がデタラメに塗られているように見えながら、ある一定の距離をあけて見ると、それ以上ないほど本物のように見えるように描かれているのです。

同じような技法をしっかりと手に入れたいものですが、自分が生きている間にそれが実現できますかどうか。

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