日経新聞土曜版に「試して納得」というコーナーがあります。
毎回、ひとつの用途を満たす三種類の商品を選び、それぞれの使い勝手を比較して紹介します。
この土曜日は「ぐっすり眠れる快眠パジャマ」です。私は三種類のパジャマそのものではなく、そういった用途のパジャマが求められていることに少しばかり驚きました。
それほど、人々が眠りについての欲求を持つことになりましょう。
私は関心を持ちませんけれど、紹介されたパジャマがどのような機能を持つのかだけは書いておきます。次の三種類です。
- 宇宙服の技術温度調節
- 体動かしやすい寝返り設計
- 政府専用機にも採用
私は昔から寝つきの良い体質です。と書きましたが、睡眠には体質だけでなく、心のあり方も関係するでしょう。
寝つきがよくても、夜中に目が覚め、そのあと、なかなか再眠できない人もいるでしょう。この点でも、私はそれほど苦労したことはありません。
再眠は入眠とは違った性質を持ち、それがすぐまた眠れない現象を引き起こします。
それは「考え事」です。
夫婦や家族と一緒に暮らす人でも、睡眠は個人で行うことです。眠れないからといって、夫や妻、家族に頼ってどうにかなるものではないからです。
人は常に何かを頭の中で考えています。そして、往々にして、物事を悪い方向へ考えがちです。それが、夜中に目が覚めたときに強まる傾向があるのではありませんか?
そんなときも、他の誰かの助けは求められません。自分ひとりで「解決」する以外ありません。
年を取ってくるとこれから先の心配が増えます。そんなことを、夜中にひとりで考えると、不安でたまらなくなることがあるでしょう。
そんなことが頭の中でぐるぐる回れば、なかなか寝付けなくなります。
そのような人が世の中には多くいて、日経新聞の「試して納得」コーナーで、良く眠れるように考えて作られたパジャマまで登場することになるのでしょう。
夜中に目が覚めたとき、余計な心配や不安を持ちたくなければ、何も考えないことです。といっても、人間は煩悩の塊です。何も考えないことは、口でいうほど簡単なことではありません。
それでも、何も考えないことが「心の薬」となります。
昨年6月頃、本コーナーで「瞑想」について書きました。きっかけは、朝日新聞土曜版の「知っ得 なっ得」というコーナーで、誰でも簡単に取り組める瞑想を取り上げたことです。
そのときのコーナーを監修する人が書いた本も読みました。
それからは努めて、そのときそのときの行動に自分を集中させるようにしています。そうすることで、それ以外のことで自分の頭を疲れさせることが防げます。
といっても、常にそのようにいられるわけではありません。どうしても、あらゆることが頭に浮かび、それに引っ張られてしまうことがあります。
それでも、できるだけ、そのときそのときに自分を集中させることに努力しています。
歩いているときは、歩くことだけに集中するといった感じです。自転車に乗れば、ペダルを踏むことに集中です。
これを睡眠に当てはめれば、眠ることに集中することになります。
私が夜中に目が覚めたときは、余計なことを考え始めないよう、数を数え始めます。一、二、三と数え始め、十までいったら一に戻るか、十一、十二と数え続けるかは、そのときの気分次第です。
あるいは、自分の呼吸に集中するのもいいです。吸って吐いて、吸って吐いてに集中です。
そうしているうちに、また、眠りに入って行けます。
日中に起きている時間も、なるべくなら、そのときにしていることに意識を集中させるようにします。そう仕向けることで、雑念で自分の頭を疲れさせることが防げます。
私は毎週日曜日の午前中にNHK Eテレで放送される「NHK杯テレビ将棋トーナメント」を見るのが習慣です。先週の放送では、羽生善治氏(1970~)が対局をされました。
将棋のプロ棋士は、仕事を通して、ご自分の心の鍛錬をされているように考えることがあります。
あとで知ったことですが、羽生氏が少し前、実父を亡くされたことを知りました。病死されたとのことですから、少しずつ体を悪くされたのでしょう。
父を亡くすことは、プロ棋士にとってもつらいことでしょう。しかし、その間、羽生氏は棋士としてだけでなく、日本将棋連盟の会長職も務められています。
そのような仕事をされながら、自分の私生活を他人にまったく感じさせない生き方をされています。
将棋番組で対局された羽生氏にも、暗い影はまったく窺えません。そのときに臨まれた対極にご自分のすべてを注ぎ込まれていた印象です。
真似のできることではありません。しかし、少しでも、そんな生き方に近づきたいものです。
夜中に目が覚め、なかなか再眠できないと悩むのではなく、朝になるまで自分には眠ることが許されているのだと考え、再び眠りが訪れるまで、わくわくする気持ちでいたらいいでしょう。
快眠を誘うパジャマが取り上げられた新聞のコーナーを見て、こんなあれこれを考えてみました。