フィルムであれデジタルであれ、カメラに内蔵されている露出計は、同じ方式の露出計です。スマートフォンのカメラ機能で使われるのも同じです。
いずれにも、「反射光式露出計」が内蔵されています。
この露出計に露出を任せる限り、撮影者が望むような露出結果を得られるのは「たまたま」にならざるを得ません。
前回の本コーナーで、写真家でプロカメラマンの野村誠一氏(1951~)が説明してくれている次の動画を紹介しました。
露出をカメラに内蔵されている反射光式露出計に任せる限り、適正な露出を得るのが難しいことがわかります。
カメラに内蔵される反射光式露出計は、被写体にあたる光を測定します。また、被写体が持つ色にも影響を受けます。そして、どんなものも、「反射率18%グレー」に近づけてしまう性質があります。
たとえば、真っ白な紙を画面いっぱいで捉えると、オートの露出計は真っ白には表現しません。グレーっぽい色にしてしまいます。反対に、真っ黒な紙の場合も、真っ黒ではなく、灰色っぽくします。
このような性質を持つことで、自分の写したい被写体が反射率18%グレーに近くない場合は、被写体の明るさが実際よりも明るい傾向か、暗い傾向になってしまいます。
今朝、庭で次の写真を撮りました。私が使うカメラはキヤノンのEOS RPです。RPの露出モードにあるFv(フレキシブルAE)モードで撮りました。撮って出しの画像です。

カメラの露出モードは、できるだけ低いISO感と、使用するレンズのできるだけ小さなF値(開放に近いF値)を選ぶ習性を持ちます。シャッター速度は、このふたつの組み合わせから、カメラが適正と考える露出になるような速度が選ばれます。
撮影に使ったレンズは、キヤノン純正レンズのRF28mm F2.8 STMです。このレンズの最も小さなF値が選ばれています。
被写体の状況がわからなければ、これはこれで悪くないと考えるかもしれません。しかし、私が写した被写体は、光が少ないため、全体的にもっと暗いです。
また、被写体をどのように撮りたいかが考えられていません。絞りが開放のf2.8であるため、野草の小さな花びらの部分にだけフォーカスが合い、そのほかがボケてしまっています。
私はこれほどボカした写真が撮りたいわけではありません。
反射光式露出計の欠点を知った上で、「入射光式露出計」で露出を計測し、露出の組み合わせを決めて撮影します。
私は、フィルム時代に買い求めたミノルタの”AUTO METER IV F”という単体露出計を持っており、今も使用できます。この露出計は、ストロボをカメラから離して使うとき、露出を計るのに重宝します。

上の写真を撮った場所で、このメーターで露出を計測しました。
その結果から次のような組み合わせにしました。
ISO感度 | ISO200 |
F値 | f/5.6 |
シャッター速度 | 1/60 |
カメラの露出モードをマニュアル露出にし、ISO感とF値、シャッター速度を任意で設定して撮ったのが下の写真です。

上の写真と同じ被写体を同じ光の条件で撮りました。2枚の写真の明るさが大きく異なるのがわかってもらえると思います。被写体の光の状態は、下の写真に写っているに近いです。
このように比較すると、カメラ任せの露出が、光の条件によっては相当違う設定をしてしまうのが理解してもらえたと思います。
私たちが手にするレンズ交換式カメラには、フィルム時代を入れれば、半世紀以上の歴史があります。これだけの歴史を持ちながら、露出に関しては、目覚ましい進化が見られないように思われます。
いつの日にか、カメラ任せで正確な露出の写真が撮れるようになるのでしょうか。