デジタル動画は撮ったままのアスペクト比で使うのが理に適っている

前回の本コーナーでは、映画のワイド画面について書きました。

画面が横長になる以前は、スタンダードサイズといわれる、アスペクト比サイレント映画時代の1:1.33、そして、その後の改良版の1:1.375でした。

テレビ放送が本格的になったのは1950年代です。アナログ時代のテレビ画面は1:1.33のアスペクト比です。

テレビ放送が始まると、テレビ局は次々にテレビ映画を作って放送し、茶の間の人気を独占するようになります。

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テレビ時代が到来したことに、映画作品を作って映画館で上映するシステムを持つ映画会社は危機意識を持ったでしょう。

そこで、映画館に来なければ体験できない映像を提供するため、アスペクト比を横に広げたワイド画面を開発しては、観客に映画の映像の凄さを訴えました。

各社の開発競争により、さまざまな形式のワイド画面がいくつも登場しました。それらのワイド画面の中には、登場して数年で消えてしまったものも少なくありません。そのひとつが、前回の更新で取り上げた、本来の姿のビスタビジョンです。

Hollywood’s Forgotten Format

本システムで、ムービーフィルムをどのように用いることでそれを実現したかについては前回の更新で書いたとおりです。単純化して書けば、フィルムを水平方向に移動させる撮影と映写の技術です。

本来のビスタビジョン以外は、ムービーカメラも映写機は、フィルムは垂直方向に駆動させる構造です。

本来のビスタビジョンが数年で消えたあとも、そのワイド画面のアスペクト比は残り、「ビスタサイズ」の作品が数多く作られました。

横長の画面にするため、画面の上下をマスクで覆って撮影したり、撮影後にマスクをかけてフィルムに焼き付けることをします。

撮影後にビスタサイズにすることを前提に撮影された映像には、マスクで隠れる部分に録音マイクなどが写り込んでいるものがあります。

ビスタサイズには2種類あります。アメリカンビスタの1:1.85とヨーロピアンビスタの1:1.66です。これらが生まれた当時、将来に登場するテレビ受像機(テレビ)モニタのアスペクト比がビスタサイズに極めて近いものになるとは予想していなかったかもしれません。

ハイビジョン放送を楽しむテレビのアスペクト比は、1:1.78です。テレビだけでなく、PCのモニタも、このアスペクト比を採用したものが主流でしょう。

私は、一旦は関心が薄れていた動画に、今ま少し、興味を持っています。今私が持つのは、動画におけるアスペクト比です。

きっかけは、動画編集ソフトのDaVinci Resolve Studioのバージョン19から搭載されている「フィルムルック・クリエーター」というプラグインのおもしろさに、遅ればせながら気がついたことです。

DaVinci Resolve 19 新機能|Resolve FX

Davinciを使って動画の編集をする人の中には、アマチュアであっても、ムービーフィルムで撮影したように見せる効果を求める人がいます。私自身も、動画に強い関心を持っていたときは、その真似事のようなことをしました。

Davinciを提供するBlackmagic Designが、そうした要望に応えるため、2年程度かけて開発したプラグインだと聞きます。

本プラグインでできることは、それ以前のプラグインの中にもありました。それらをひとつにまとめて提供するのがフィルムルック・クリエーターというわけらしいです。

実際にそれを使ってみると、とてもおもしろいです。

カラー編集に適したRAWやLogといった本格的な動画形式でなく、通常のMP4で撮ったお気楽動画でも、フィルムルック・クリエーターを適用するだけで、フィルムで撮ったっぽい映像に見えるので嬉しくなります。

本プラグインには「フィルムゲート」という設定項目があります。そこに用意されている6種類のゲートを適用するだけで、それぞれのアスペクト比の動画になります。

これは、35ミリフィルムのスタンダードサイズで撮影する際、あるいは撮影したあと、黒いマスクをかけて、ワイド画面に見せるのと同じ理屈です。

スチル写真で、必要な部分だけをクロップするのと同じことです。写真をクロップすることは、元の画像の部分を切り取って拡大するわけですから、画質は低下します。

映画の場合も、画質の低下を承知した上でワイド画面にしたということです。フィルム性能の向上があって実現したテクニックともいえます。

デジタルカメラで動画を撮影できるようになったことで、本来のビスタビジョンの撮影が復活したことに気づかれたでしょうか。

本来のビスタビジョンは、スチル写真の1コマに相当するフィルム面積を撮影に使ったのでしたよね? デジタル時代の35ミリフルサイズのカメラが、かつてのビスタビジョンカメラにあたります。

ビスタビジョンとは何ですか?

このカメラを使い、動画の撮影をすれば、アスペクト比は16:9のモニタ比にぴったり収まります。ということは、ほぼ、ビスタビジョンと同じアスペクト比のワイド画面の動画が撮れるということです。本来のビスタビジョンと同じ画質です。

なんと素晴らしいことでしょう!

ビスタサイズよりもワイドなアスペクト比にシネマスコープがあります。アスペクト比は1:2.35です。アナモルフィックレンズを使ってその比率を得るのが本来の形です。

SIRUI 35mm F1.8 Anamorphic | Shot on LUMIX GH5S

それを使わず、ビスタサイズ相当に撮った映像の上下にマスクをかけて、それらしく見せる方法もあります。

マスクをかける方法は、クロップするのと同じになりますから、手間をかけて、画面の面積を小さくするだけになってしまいます。

最終的に映画館のスクリーンに上映するためにシネマスコープ風にするのならわかりますが、16:9のテレビモニタやPCモニタで見るためだけにシネマスコープ風にするのは、あまりお勧めできません。

上下に黒い帯がついた画面になり、郵便受けの中から外を眺めるような映像になってしまうからです。

本来はそこに映像を表現できる空間があるのに、それを黒い帯で塞いでしまったら、狭苦しく感じてしまうだけです。

ワイドな画面にしたかったら、小細工はせず、16:9のモニタにぴったり収まる、ほぼビスタサイズをそのまま使うのが、画質の点もふぃくめ、最も理に適っていると私は考えます。

何しろ、35ミリフルサイズのカメラで動画を撮るだけで、本来の姿のビスタビジョンが実現できてしまうのですから。

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