人は誰も、明日のわが身に災難が降りかかると思っては生きてはいません。そんなことを常に思っていたら、気が休まりませんから。
2トントラックのハンドルを握っていた70歳代の男性もそれが起こる瞬間まで、そんなことは頭になかったはずです。
70歳代の男性トラック運転手は、瓦礫に埋まった運転席で、救助されるのを待っています。
思わぬところで思わぬことが起きるものです。
今月28日、埼玉県八潮市内を走る道路の交差点で、大規模な道路の崩落が起きました。崩落は翌日と翌々日にも起き、陥没箇所が広がりました。
道路が陥没した地点を地図で捜しました。おそらく、下に埋め込んだ地図の地点で起きたものと思われます。
交差点の近くには市役所や市民文化会館、中央公園などが点在しますので、市の中心部付近であろうと思われます。
地図で見る限り、交差点を県道54号線(千葉県道・東京都道・埼玉県道54号松戸草加線)が通り、交差点にはほかに、4方向からの道路が交差しています。その交差点が陥没してしまったことで、交通だけに限っても、多方面に影響が出ているであろうことが想像できます。
この陥没を伝える本日の朝日新聞の記事を参考に、道路の下がどのようになっているかや、なぜ今回の大規模な陥没が起きたのか、記事に書かれていることを紹介します。
県道の地下約10メートルのところには、直径が約4.75メートルという大きな下水道管が設置されているそうです。それが設置されたのは、1983年ということですから、施工されてから今年で42年です。
下水道管は、交差点まで西方向からつながっており、交差点で県道を離れ、北東方向を走る道路の下へとカーブをしています。
本事故を報じた下のニュース映像で使われた図を見ると、周辺の自治体で排出された下水が最終的に一本の下水道管に集約され、三郷市にある下水処理場「中川水循環センター」に届く直前であるのがわかります。

そこへ向かう下水道管が、陥没した交差点の下で、北東方向へ折れ曲がざるを得ないのも、下水処理場が祖納法然にあるからと理解できました。
専門家の話では、下水道管がカーブしていたことが、今回の陥没の原因になったのではとしています。
管が折れ曲がった部分は、どうしても下水の流れ方が遅くなります。そのことで、汚物などの有機物がどうしてもそこに溜まりやすくなります。
朝日の記事では、専門家の説明で、下水道管が腐食、破壊された原因について書かれています。私は専門的なことがわかりません。わからないまま書いて間違ってもいけないので、詳しい説明は省きます。
汚水から硫化水素というものが発生し、それが酸と結びついて硫酸に変化し、それが管を腐食したのであろうととりあえず理解しました。
今回の事故があった交差点の周辺には住宅や商業施設が立ち並んでいます。それらから汚染水が流れ込むのですから、その量は大変なものでしょう。
事故が起きた交差点から西方向は、道路の下を5メートル弱の下水道管が敷設されています。道路を利用する人は、そんなことはまったく考えず、毎日のように道路を利用してきたでしょう。
記事によると、陥没した穴の内部は、土砂や瓦礫のほか、雨水を流すための別の管が破損したことで、水が溜まっているとのことです。
記事が書かれた時点では、下水道管の破損個所は特定できていないそうです。
今回の事故で、通信ケーブルも断線し、NTT東日本によると、インターネットや光電話が最大で約1300回線、固定電話が最大で約400回線が利用できない状態にあるということです。
こんなことが起きることを、交差点の周辺で暮らす人も、下水道管が埋められた上の道路を利用する人も、前日まで、考えてもいなかったでしょう。
道路が陥没したことで、道路から穴の底へ転落したトラックの運転手は、転落の瞬間、何を思ったでしょうか。
今回の現場と同じように、耐用年数を超えた下水道管が全国で使われているものと思います。
地下深いところに詳しいのは、村上春樹(1949~)が『世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド』(1985)に登場させた、地底に暮らす「やみくろ」ぐらいのものでしょうか。