年が明けて間もない3日の夕方、AmazonのPrime Videoで、アーサー・コナン・ドイル(1859~1930)のシャーロック・ホームズシリーズ(1887~1927)を原作とした映画『シャーロックホームズ死の真珠』を見ました。
内容は、ホームズシリーズの短編のひとつ『六つのナポレオン』(1904)を基とするものでした。
ドイルが残したホームズシリーズは、大半が短編小説で、その数は56もあります。いずれも雑誌に連載されたものです。ホームズ物には長編小説があります。発表順に次の四編です。
私がホームズ物に接するようになったのは2023年2月です。当時、NHK BSで、原作のテレビドラマが始まりました。それ以前に、私はホームズ物の原作とドラマを見たことがありませんでした。
ドラマを一度見て面白さにハマり、ドラマは録画してすべて見ました。また、それと並行して、ドイルの原作にも接しています。
テレビドラマは、限られた放送時間に収める関係上、短編が目的に適っています。そうした関係から、四編ある長編のうち、私が見たテレビドラマでは、『バスカヴィル家の犬』だけが映像化されたように記憶しています。
のちにドラマ化されたものでは、長編をドラマにしたものもあるようです。
ホームズ物としてはじめに書かれた『緋色の研究』を、Amazonの電子書籍版で読みました。本作で、ホームズと、ホームズの活躍を記録する役目を果たすことになる医師のワトスンの出会いの場面が描かれています。
本作の原題は”A Study in Scarlet”です。翻訳するときに、”scarlet”を「緋色」と訳したのでしょう。
私が「スカーレット」と聞いて連想するのは絵具の色です。水に溶け、速乾の絵具にアクリル絵具があります。私は今使うのは油絵具ですが、それ以前は、アクリル絵具を長いこと使っていました。
私が使ったことがある絵具に「スカーレット・レッド」がありました。それを、本作のタイトルで「スカーレット」と聞いて連想しました。
黄色味を帯びた美し赤色です。
本作のタイトルを、ドイルが”A Study in Scarlet”とした理由はわかりません。奥深い意味があるのでしょう。
無彩色の中にスカーレット・レッドが置かれると、それだけが際立って感じられるでしょう。平板な日常の中で起きる一瞬の輝きやひらめきのようなものを表現しているのでしょうか。
本作をAmazonの電子書籍版で読んだと書きました。私は今月途中まで、通常は月額980円かかるKindle Unlimitedを3カ月間無料で利用できる権利を得ています。
今回読んだ『緋色の研究』が、このサービスに該当したことで、追加料金なしで読むことができました。
実は、Kindle Unlimitedを無料で利用できる権利が3カ月間延長されました。その理由については、本コーナーの別の更新で書くことになるでしょう。
そのような理由で、ドイルが残したホームズ物の残り三篇の長編も、追加料金なしで読む予定です。
本作の電子書籍版には、ふたりの識者の解説がついています。そのひとつを読んだことで、本作が発表された翌年に、世紀末のロンドンで、今も未解決のままの連続殺人事件が起きていたことを知りました。
聞いたことはあるでしょうか。「切り裂きジャック」事件です。
今にして思えば、ドイルは本作を起点として、世紀末のロンドンを舞台に、ホームズ物を次々と発表していたことになります。ドイルが書くホームズの推理が人々の想像を超えていたため、ドイルが切り裂きジャックの犯人ではと疑われたという逸話を見聞きしたことがあります。
本作で起きた事件の現場は、とても静かなものでした。誰も住んでいないの空き家の一室には電気がつき、ひとりの盛装した中年男が、もの凄い形相で死んでいるだけです。
男には外傷はなく、争った形跡もありません。ただ、部屋の床には、血の跡が残っています。そして、男の身体の上に、金の指輪が載っていました。
退屈を極めていたホームズがこの事件に非常な興味を持ち、解決のために動きます。
本作で、二つ目の事件が起きたあと、唐突に第2部が幕を開けます。その話が空き家で起きた事件とどうつながるのか、はじめはわかりません。ロンドンから遠く離れた北米中部の、地平線まで生き物の気配がない原野が舞台だからです。時代は西部開拓時代です。
そこで、そのとき、生きるか死ぬかの運命にあった老人と五つの愛らしい女の子がいました。男はジョンといい、娘はルーシーといいます。血のつながりはありませんが、ジョンはルーシーを自分の命より大切に思い、大切に大切に育てています。
この原作をドラマ化したときは、米中西部で起きたことを、回想で簡単に紹介することが多いそうです。しかし、米国での出来事を描かなければ、なぜ、ロンドンの空き家でその男が殺されなければならなかったかわかりません。
私はこのあと、ホームズ物の長編三作を読むつもりです。読み終えたら、そのつど、本コーナーで取り上げることもあるかもしれません。