少し前、Amazon Primeで古い米国映画を見たことを書きました。
私はAmazonの有料会員であるため、追加料金なしで楽しむことができます。
昨日の午後、それを利用し、また、米国の古い作品を見ました。今回見たのは『ローラ殺人事件』(1944)です。ご存知ですか?
本作が制作された1944年といえば、終戦の前年にあたります。日本は米国に攻撃され、大変な状況にありました。一方の米国は_聞くところによると、どこかの野蛮な国が戦争とかいうものをやっているらしいですな。ご苦労なことです。といったありさまで、本作のような非常に優れた作品を粛々と作っていたのでした。
平日の午後にNHK BSで放送される「シネマ」の時間に、米国の古い作品が放送されるのを知り、興味を持ったら録画して見る習慣です。
そんな私ではありますが、これまで、『ローラ殺人事件』という作品を見たことがありませんでした。もしかしたら、NHK BSの「シネマ」で、これまでに放送されたことがないかもしれません。
タイトルを見ただけで、殺人事件を扱う作品であることがわかるので、予備知識を持たなくても、楽しめそうだと考えて見ました。
見始めて、監督と製作がオットー・プレミンジャー(1905~1986)と映し出されたとき、そこで再生を一時停止し、本当にそうなのか確認しました。確かに、プレミンジャーの作品であることがわかりました。
私もプレミンジャーについて詳しいわけではありません。どうやら、彼の初監督作品です。
私がプレミンジャーと聞いてすぐに連想したのは、監督としてでなく、唯一俳優として出演したビリー・ワイルダー監督の(1906~2002)の『第十七捕虜収容所』(1953)です。
その作品で彼は、捕虜収容所で多くの捕虜たちを監督するドイツ軍将校を嫌味たっぷりに演じています。その演技は何度見ても楽しめます。
『ローラ殺人事件』のタイトルですから、ローラという人物が登場します。ローラは独身の若い女性で、広告代理店で働いています。このローラが何者かに銃で頭部を打ち抜かれ、惨殺死体として発見されたところから物語が始まります。
本作はプレジンジャーの演出とモノクロームの映像、そして、脚色が素晴らしいです。無駄な台詞がなく、スピーディに展開します。
同じ原作を日本で脚色したら、余計な台詞が盛りだくさんになるなどして、本作のように軽快には進まないでしょう。
また、日本で同じような作品を映画化すれば、惨殺された女性の死体をスクリーンに登場させるかもしれません。本作では、殺人事件を扱いながら、殺害場面は一切描かれていません。死体も登場しません。血の一滴も映りません。
監督のプレミンジャーが描きたいのは、ローラの周りにいた人間たちだけだからです。
事件を捜査する警部補のマクファーソンが聴き取りに向かったのは、ローラと交際していたウォルド・ライデッカーという男の住まいです。
ライデッカーは、高名なエッセイストで、ラジオにも番組を持っています。年齢はローラよりかなり上でしょう。いつもきちんとした身なりをし、高慢な性格の持ち主です。
私は本作に出演する俳優がひとりもわかりませんでした。魅力的なローラを演じたのはジーン・ティアニー(1920~1991)、そして、ローラに惚れているライデッカーを演じるのはクリフトン・ウェッブ(1889~1966)です。
警部補のマクファーソンの質問に答える形で、ライデッカーがローラに初めて出会った5年前のある昼の話をします。
そのとき、ライデッカーはレストランでランチを摂るところでした。ライデッカーは有名人です。そのライデッカーに仕事の依頼をしようと、ローラが近づきます。
しかし、ライデッカーはローラににべもなく、「これだから田舎者は困る。お嬢さんは礼儀というものを教わらなかったようだな。見てのとおり、私は今食事中だ。すまんが、邪魔をせんでもらいたい」といったように、ローラをあっさり退けさせます。
ローラは美女で、黙っていても男性の方から近づいてきます。ローラはローラで男と付き合いたい気持ちをいつも持ち、自分のタイプのがっちりして、ハンサムな男性であれば、すぐに恋仲になってしまいます。
恋愛に関しては自信家であったローラが、ライデッカーに見向きもされなかったことで、内心は傷ついたかもしれません。
しかし、意外なことに、ライデッカーは実はローラに興味を持ち、横柄な態度で、ローラが働く広告会社へやって来て、勝手に、食事の予約をしてしまいます。
自分が才能にあふれていると自負するライデッカーですから、自分が望むものはどんなものでも手に入ると考えています。ところが、自分本位のところがあるローラの扱いには手こずり、ライデッカーはローラに振り回されています。
そんなローラが、ある金曜日、何者かに頭部を銃で撃たれ、この世から消えてしまったのです。
殺人事件を捜査するマクファーソン警部補は、ローラの住んでいた家へ行き、彼女の日記や身の周りの品々を調べたりします。何度もローラの家へ行き、そこで時間を過ごすうち、マクファーソンは、もうこの世にはいないローラに恋心を募らせるようになっていきます。
さて、ローラは誰にどんな理由で殺されたのでしょう。結末が気になる人は、どうぞ本作をはじめから終わりまでご覧になってください。
やはり古い作品はいいです。私は現代の新作をほとんど見ません。昔の作品の方が自分に合っているからです。
Amazon Primeには私好みの作品が数多くナインナップされています。次々に見て行ったら、時間がいくらあっても足りません。
急がず、一作一作時間をかけ、丁寧に見ていくことにします。