昨日の本コーナーでは、日経新聞の記事で使われている人物写真の光の扱いがよろしくないように感じ、それについて書きました。
その更新で使ったのが、日経の記事にあった次の写真です。
今現在、女子柔道の「女子チャンピオン」的存在の奥富夕夏氏(1998~)を紹介した記事で添えられた奥富氏の写真です。
光の扱いを工夫せずに撮っているため、顔に下向きの影が出て、奥富氏の良さが出ていないように感じました。
この写真と比較するため、昨日の朝日新聞にあった次の写真も紹介しました。
こちらは、「認定特定非営利活動法人カタリバ」の広告に使われている写真です。
二枚は人物を正面から撮影していますが、光の扱いを少し工夫するだけで、見え方が異なることがわかると思います。二枚目の写真は、ポートレイト撮影で基本となる反逆光で撮影しています。
この更新に、適当な動画があれば、それを添えるつもりでした。
ネットの動画共有サイトYouTubeで探したら、次の動画が見つかりました。プロの写真家で、ポートレイトを専門に撮影されているRYo氏の動画です。
Ryo氏は、「強気の発言」を売りにされています。思ったことはズバズバいえばいいと私も思いますので、Ryo氏の日頃の発言は気になりません。
むしろ、カメラや撮影機材のレビューばかりをする人が増えたので、それらへの不満解消の役目を果たしてくれています。
そんなRyo氏の今回の動画は、逆光条件でより美しく撮るためのテクニックを披露してくれています。
はじめから終わりまで見て、結局、昨日の更新に本動画を埋め込まないことを決めました。
理由は、私が考える、逆光や反逆光でのポートレイト撮影の考え方とは少し違うように感じたからです。
Ryo氏の今回の動画では、逆光撮影時で工夫すべき三つのパターンを、実際の撮影風景も交えて紹介してくれています。
私は、二番目に紹介された、補助光を使わないで撮った写真が好みです。Ryo氏としては、顔が暗く感じるので、気に入らない(?)のかもしれません。
一番目は、レフ版を使った撮影です。太陽光を専用の板に反射させ、その光で、モデルの顔を明るく撮影する方法です。
この考え方自体は間違っていません。ただ、今回の作例で、反射させた光が強すぎるため、顔が明るくなり過ぎているように感じます。これでは、逆光で撮る意味が薄れてしまいます。
今回は作例で、こんな風に撮影するというように、撮影風景を見てもらうのが目的だったかもしれません。
仕事として撮影するときは、反射光の強さをもっと慎重に決め、バックの自然光より若干弱い反射光になるようにしているでしょう。
撮影行為とは関係ありませんが、動画を見ていて、あることに気がつきました。
今回のモデルは、白い薄地のワンピースを着ています。そのモデルに太陽光が当たることで、スカートの部分が透けて見えています。
写真を撮るとかに関係なく、同じようなスカートを履く女性は、光の状態で、他人には見えないと思っている部分が見えているかもしれないことに注意した方がいいように感じます。
常にズボンを履いている男性は、逆光で、見せたくない部分が透けて見えることは少ないでしょう。
三番目のテクニックはストロボを使った撮影です。
この方法も有効ですが、ストロボの発光量は、普段から使い慣れないと難しいです。
Ryo氏がストロボを使って撮影した画像は、レフ版のときと同じで、光が強すぎのように感じます。顔が明るくなり過ぎて、逆光で撮った意味が薄れています。
これも、作例として撮っただけで、普段の撮影では、もっと慎重に発光量を決めているのだろうと思います。
私は絵を描き、17世紀のオランダの画家、レンブラント(1606~1669)を最も敬愛しています。
「レンブラントライト(レンブラントライティング)」といったいい方があるように、レンブラントは光の扱い方を研究しました。
それは初期の作品にも表れており、自分を描いた自画像の広い部分が陰に沈んでいたりします。
そのような作品に憧れることもあり、私は、逆光や反逆光で人物を撮るのであれば、人物の顔を暗くするのを好みます。そして、顔の一部に光が当たって明るくなり、その明暗の差で顔を立体的に表現したいと考えます。
ポートレイト撮影でも、光の効果を念入りに調節し、それを実現することはできます。
Ryo氏の場合は、もっとライトな感覚を目指しているのでしょう。プロの写真家であれば、写真を掲載する雑誌に合わせた作風にしなければなりません。
レンブラントのように、コントラストが強い写真にしていまったら、ほかの写真とつり合いが取れなくなることもあるでしょう。
ということで、Ryo氏の作風を批判したいわけではないことをご理解ください。個人的な好みを書いたまでですので、ご理解ください。