今週水曜日(25日)の朝日新聞に興味深いインタビュー記事がありました。「交論 『巨大地震注意』を考える」と見出しがついた記事です。
本記事では、お盆休暇の前に、突然のように発表され、社会を混乱させただけと個人的には感じた南海トラフ巨大地震発生の可能性が高まったとして国が発表した注意喚起について、専門家ふたりに考えを訊き、まとめています。
その中で私は、鷺谷脅(さぎや・たけし)氏(1964~)のお考えに共感しつつ、興味深く読みました。
鷺谷氏は地殻変動学者です。
鷺谷氏は地震につながる地殻変動を専門とされる学者ですが、今回の取材で次のように、率直に考えを述べられています。
地震予知は困難であり、地震の起きる場所や規模の予測には限界がある
2011年3月11日に東日本大震災が発生しました。その地震のあと、日本地震学会が、臨時委員会を設けました。そのとき、委員長を務められたのが鷺谷氏です。
鷺谷氏はそのとき、地震学の実力に見合った行動計画をまとめました。その前提は、地震の予知は極めて難しいということでしょう。
今回発表された臨時情報は、東日本大震災のあとに、南海トラフ地震の想定が、マグニチュード(M)9に見直されたことに関っていると鷺谷氏は述べています。
そのことで、南海トラフ地震の想定震源域がそれまでよりも広げられました。西端は日向灘まで含むようになりました。
鷺谷氏は、あとで加えられた日向灘の地震活動は、もとから南海トラフの活動域にある四国以東とは特徴が違うとの考えをお持ちだそうです。
ともあれ、想定区域に加わった日向灘で、今回の発表の前に大きな地震が発生しました。それを受け、M8クラスの地震が起きる可能性が高まったとし、今回の発表につながりました。
しかし、確率が高まったといっても、小数点以下の話です。今回のことでいえば、0.1%が0.5%になったとされました。
1/1000、1/500の確率ということです。これをどれだけ危険視するかです。1.500なら、起きるのは1回で、499回は起きません。1/1000なら、999回が空振りに終わります。
そのことについても、鷺谷氏は次のように述べています。
1%に満たない確率は、社会・経済活動を変えてまで対応すべきリスクでしょうか。私は、この情報体形は作るべきではなかったと思っています。
あの時の対応を思い出すと、東海道新幹線が運行を停止し、多方面に大きな影響を出しています。これは、過剰な対応だったと素人の私も感じました。
政府が情報を出し、マスメディアはそのまま伝え、多くの関係機関や国民がそれに従うことが起きました。そのことについても、鷺谷氏は警鐘を鳴らしています。
情報を出すことで政府が国民をコントロールしようとする印象もあり、危ういことです。
今回のことでマスメディアが反省することができるのなら、次からは、大本営発表のように政府と一緒になって国民を煽るのではなく、たとえば鷺谷氏のようなお考えを持つ専門家の異なった見方も記事と一緒に報じると、受け手の対応も変わるでしょう。
今回の臨時情報が出されたあと、鷺谷氏は地震学会で議論を呼びかけたそうです。しかし、反応は芳(かんば)しくなかったとのことです。
鷺谷氏がそのように語っているわけではありませんが、私が想像するに、学者が国の対応に逆らうことで、国から睨まれることを避けているのでしょう。
長い物には巻かれろで、お上には従って、自分の研究だけ続けられればいいといったところなのではないですか。
東日本大震災のあと、臨時委員会で委員長をされた鷺谷氏のお考えを加えてのことでしょう、2013年に内閣府の専門家委員会は、「地震予知は困難」との報告書をまとめたそうです。
これにより、東海地震の予知を前提とした社会・経済活動を止めるといった体制がなくなり、日本の地震学を縛っていた地震予知の期待から解放されたと鷺谷氏は感じられたそうです。その決定を好意的に受け止めたのでしょう。
ところが、今また、名前を変えた臨時情報の仕組みができてしまいました。そのことで、一度は解放された地震予知への期待が再び持たれるようになります。そのことで、その分野の専門家の学者がまた縛られることになると鷺谷氏は心配されています。
今回の臨時情報が出たあと、それらを伝える記事に添えられたコメントに目を通した限り、国の方針に素直に従う人が多かった印象です。今後も同じような情報が出されるたび、同じような構図になることが想像できます。
それを良い方向へ変えていくには、国民一人ひとりが、自分なりの判断基準を持つことが必要です。
新コロ騒動でも同じ構図でした。多くの国民は国の方針に従いました。その結果、まったく意味がないどころか、害悪でしかない、存在しない新コロウイルスのために作られたことにされているワクチン(似非ワクチン)の摂取を受け入れてしまいました。
今後は、それが国の方針であっても、あるいは国の方針だからこそ、一度立ち止まり、自分の頭で考えてみることです。
たとえば巨大地震の臨時情報の場合も、国はあんなことをいっているけれど、そもそも、地震予知は困難だという専門家もいるじゃないか。予知が難しいのであれば、今後一週間以内に地震が起きるという情報は本当に正しいのか? というようにです。
マスメディアもそうした考えを人々が持つように後押しをしてくれればいいのですが、現状は反対です。政府と一緒になって国民をコントロールするようなことをしています。
あのときもマスメディアは、地震発生の確率が高まったとはいっても、500回のうち起こる確率は1回で、499回は起こりませんと添えるべきでした。
それだけで、受け手の印象は百八十度違ったでしょう。
今後、地震予知の情報を国が出したら、鷺谷氏のお考えを思い出し、地震予知が困難であることを前提にした報道をお願いします。