写真を撮る時、あなたはどのようにして適正露出を得ていますか?
私はフィルムの時代から、写真撮影を趣味としています。フィルムで撮っていたときは、一眼レフカメラのヤシカ・コンタックRTSとRTS IIが私のメインカメラでした。
このほかに、サブカメラとして、コンパクトカメラやインスタントカメラも、使っていました。
私が使っていたコンパクトカメラは、コニカのBiG miniというカメラです。今もそのカメラは手元にあるので、どんな仕様か確認します。
カメラには単焦点レンズの35ミリF3.5がついています。これにフィルムを入れて使うので、ISO感度は、フィルムを選んだ時点で固定されます。
BiG miniを使うときはフルオートで、被写体をファインダーに収め、ただシャッターを切ったように記憶します。ということで、BiG miniで撮る時は、露出は気にしなかったことになりましょう。
今回、露出について書いてみようと思ったのは、ネットの動画共有サイトYouTubeで次の動画を見たことです。
本動画の配信者は、YouTuberの草分け的なひとりのジェットダイスケ(愛場大介 〔1974~〕)氏です。彼の動画はたまに見ることをしています。その彼が、写真撮影時の露出決定において、ISO感度をどのようにしているか視聴者に問い、彼自身の取り組み方を語っています。
本動画を見ると、彼はISO感度はオートにしているようです。
本動画を見たことで、私もISO感度について語ってみようと思い、本更新をしています。
ISO感度の設定については、本コーナーでも何度となく書いているように、私はISO感度は自分で設定するISO感度マニュアルです。
フィルムの時代の話に戻ります。フィルムの時代にはISO感度オートはもちろん成立しません。使うフィルムによって、ISO感度は決定してしまうからです。
私はコダックのコダクローム64というフィルムが好きで、こればかり使っていました。このフィルムは、一般的なネガフィルムではなく、ポジフィルム(リバーサルフィルム)です。
撮影が終わったフィルムが現像から上がってくると、1コマごとにマウントされており、それをスライドプロジェクターでスクリーンに投射して楽しむほか、ライトボックスに載せ、ルーペで観察することもできます。
映画のフィルムの1コマを抜き出したような感覚です。
一眼レフカメラのコンタックスRTSおよびRTS IIで撮るときの露出露出決定要素のひとつであるISO感度は、コダクローム64のときはISO(当時は「ASA感度」といっていました)64固定で、これは変更のしようがありません。
あとは、レンズの絞りを優先する絞り優先AEで撮ることがほとんどでした。
フィルムの時代も今のデジタルの時代も、カメラが露出を決めるときは、カメラに内蔵されている反射光式露出計が働きます。ですから、カメラに任せておけば、常にこちらが求める露出が得られる、かと思いきや、そんなことはありません。
デジタルの時代になっても、カメラ内の反射光式露出計は、それほど向上していません。
たとえば、晴れた屋外で、風景の写真を撮る場面を想像してみてください。太陽を背にした順光であれば、カメラの露出計もそれほど狂いません。
ところが、太陽がある方角にカメラを向けて撮る逆光の場合はどうでしょう。
空と陸地をファインダーで収めた場合は、空の明るさに引きずられ、陸地は暗くなってしまうことが多いです。
ましてや、逆光や反逆光で手前の人物を撮ろうと思ったら、人物は陰の部分が多くなってしまいます。
そんなとき、人物を明るく撮りたいのであれば、ストロボを炊いたり、レフ版で人物に反射光をあてることで、人物を背景の明るさに負けない明るさにすることを選びます。
ただ、ポートレイト撮影でなく、スナップ撮影でそのような工夫をするのはなかなか難しいです。
そうでなくても、写真を撮る時、自分が撮りたいものが何かで、露出の決定方法が異なります。そして、自分が撮りたいものに露出を合わせます。
逆光や反逆光の状態で人物を撮りたいのであれば、背景を露出オーバーにして、人物に適度の露出を合わせます。
このような撮影は、カメラ内蔵の反射光式露出計が万能ではないため、ISO感度がオートのままではこちらが望む露出はほとんどの場合得られません。
正直な話、フィルムからデジタルに移っても、私は、デジタル一眼レフカメラ(デジ一)を使っていたときは、ISO感度がオートで使えるカメラであれば、私もオートにしていました。
私は今も、キヤノンのEOS 30Dというデジ一を持ち、たまに使っています。この30DにはISO感度がオートで使えません。自分でISO感度を選んで使う仕様となっています。
以前聞いた話では、デジタルカメラをカメラメーカーが作るにあたり、技術部門の人は最後まで、ISO感度をオートにすることに反対だったそうです。
それは、フィルムの時代からの考え方に固執し、新しい考え方に更新できなかったからではありません。それだけ、写真を撮る人に、ISO感度を意識して欲しいとの願いからでしょう。
私がデジタルカメラでISO感度オートを使わなくなったのは、ミラーレス一眼カメラを使うようになってからです。ミラーレスには電子ビューファインダー(EVF)のついている機種が多くあります。
私はペンタックスのPENTAX Qというカメラも使っています。これもミラーレスですが、QにはEVFがついていません。背面の液晶モニタを見ながらの撮影になります。
EVFのないカメラを使う人がいますが、私は、EVFのないカメラは使いにくいです。Qにしても晴れた屋外でモニタを見ると、太陽光が反射して、ほとんど使うことができません。
そんなことで、私は、Qを使うときはISO感度をオートにしています。
私がEVFを重視するのは、露出の状態を確認できるからです。これが、デジ一にはない絶対的な強みです。このファインダーがあるから、私はマニュアル露出にしているのです。
日常的にマニュアル露出で撮っている人も、人それぞれで、露出の設定の仕方は異なるでしょう。
ジェットダイスケ氏の露出に関する動画に寄せられたコメントを見ると、大半の人はISO感度をオートにしていることがわかりました。
コメントの中には、マニュアルでISO感度を操作する人に対して、考え違いをしている人がいます。
ISO感度をマニュアルで使う人は、フィルムの時代の感覚が抜けきらず、あらかじめデジカメのISO感度を、フィルムの感度としてあるISO400などに固定して使っていると想像する人がいます。
そして、そんな使い方しかできない人は、デジカメのISO感度オートの便利さが理解できないデジタルに不向きな人というような誤った考えを持ってしまっているようです。
あらかじめISO感度を決めて撮る人もいるでしょう。私もケースバイケースで、たとえば「感度分の16」のように、あらかじめISO感度を決めて撮ることもします。
しかし、私の場合は、ISO感度は、露出決定の一番最後にするのが基本です。
「感度分の16」の応用で、シャッター速度を1/200秒、ISO感度をISO200程度にし、レンズのF値をf/4.0ぐらいにして、まず、被写体の明るさをEVFで確認します。
晴れた日の日陰の部分であれば、この設定のままで、適正露出に近いことが多いです。あとは、自分が撮りたいものの露出を自分が望みたいようにするため、ISO感度を変更するだけです。
同じような撮り方であれば、ISO感度オートでも撮れるのではと考える人がいるでしょう。しかし、私の実体験では、オートでは私の望むような露出にならないことがほとんどです。
ISOオートの人で、EVFに映る画像を確認しながら、自分の望む露出と違うときは、どのように露出を修正しているのでしょうか? おそらくは、露出補正で露出の補正をするでしょう。
私は、露出補正を使うぐらいなら、はじめからマニュアル露出を選び、ISO感度で最終的な露出にするほうがはるかに簡単だと考えています。
私は今、キヤノンのミラーレス一眼カメラのEOS RPを使っています。
RPは、操作に使えるダイヤルがふたつしかありません。だから、私のようにISO感度も含めて、自分で操作をしようとすると、使えるダイヤルがひとつ足りません。
そのため私は、キヤノンRFレンズについているコントロールリングにISO感動を変更するための機能を割り当てています。このようにすると、RPであっても、フルマニュアル露出が自由に設定でき、快適です。
誰がどんなことをいっても、自分がそれを便利に使っているなら、そのまま使い続ければいいです。
私は、マニュアル露出で撮るからこそ、ISO感度はどうしてもマニュアルです。マニュアル露出を選びながら、ISO感度をオートにしてしまったら、マニュアル露出にする意味がないからです。