本コーナーで何度か、人生相談を話題として取り上げました。
今回も相談をある人といいますか、元、人だった人(?)から受けたりするという話を少ししてみます。
「へっつい」というものがあります、というか、かつてありました。今もあって、使っている家があるかもしれません。
「へっつい」を漢字で書くと「竈」と書くのだそうですね。私はこの漢字を書いたことがありません。読み方を知らずにこの漢字を何と読むのかと訊かれたら困ってしまうかもしれません。
ただ、上で書いたように、「へっつい」を漢字で書くと「竈」ということですから、「へっつい」と答えて置けば間違いなさそうです。
「竈」の別の読み方は「かまど」です。こちらが一般的な読み方であり、人に説明するのにもわかりやすいでしょう。つまり、「へっつい」というのは「かまど」のことです。
「かまど」といっても、それを知っている人や使ったことのある人は、高齢者に限られるでしょう。私が幼い頃、家でそれを使っていたような記憶がありますが、私の記憶違いかもしれません。
まだガス台がない時代は、家庭で熱を使った料理をするのは手間がかかりました。ヤカンの水を沸かすにしても、ガス台がない時代にそれをするのを想像すると、手間がかかるのが想像できるでしょう。
水を熱するためには、熱を起こさなければなりません。要するに、燃えるものに火をつけて燃やし、その熱を発するものの上にヤカンを置くなり、吊るすなりしなければならないということです。
家の中でそんな火を起こしたら危ないということで生まれたのが「かまど」であり「へっつい」ということです。
その「へっつい」が出てくる古典落語に『へっつい幽霊』があります。その噺を昨日の午後、mazonが提供するオーディオブックのAudible版で聴きました。
空き時間に何か楽しめるものはないかと探し、15分程度にまとまったこの噺を、古今亭志ん朝(1938~2001)がラジオ放送のために録音したのが音源のようです。
15分だったら手軽に聴けるというので楽しみました。
それを聴いた時点で私は「へっつい」がどんなものか知りませんでした。
ともあれ、その「へっつい」がとある道具屋にあるのをひとりの職人が見つけます。道具屋の話では、どういうわけか、この「へっつい」は、買っていった人が、速い人は翌日、遅くとも二日も経たないうちに戻しに来るのでこまっているという話です。
職人の親方は、好奇心が旺盛なたちで、そんなこというなら、俺がもらっていこうともらうことを決めます。
それを道具屋に家まで運んでもらったその晩、丑三つ時に目が覚めます。親方はひとり暮らしです。
真っ暗な中、台所のほうがほんのり明るいというので行ってみると、そこに若い男の幽霊がいて、「うらめしー」と親方にいったのでした。
普通ならそこで、女の人なら「キャー!」とかいうところ、親方はびくともしないで、「なんだ? てめえは」と声をかけます。
幽霊のほうでも、自分を見て驚かないことに驚いて、その後、親方に幽霊が身の上話を始めます。そして、親方にあることを「相談」するのです。
ネットの事典ウィキペディアで「へっつい幽霊」を引くと、元々は上方落語の演目のひとつだったようですね。志ん朝の話には若旦那が出てこないなど、違う点がいくつもあります。
志ん朝は噺を自分なりに脚色して演じているのでしょう
幽霊が親方にどんな「相談」をするかなどは、実際に噺を聴いて確認してください。
志ん朝の落語といえば、今夜10時45分から、NHK Eテレの「おとなのEテレタイムマシン」の時間枠で、志ん朝が演じた落語『四段目』が放送されます。1988年に収録されたものだそうです。
私は録画し、明日にも見ること、いや、聴くことにします。