原発M&Dマネー

原子力発電所がある自治体に、原発を稼働させてもらっている電力会社がお礼の意味を込めて金を渡す話なら昔から聞きますが、立場が逆になり、原発がある自治体の側から電力会社の幹部連中に礼金を渡していたことが発覚しています。

それを伝える朝日新聞が、昨日の紙面で「原発と関電マネー(上)原発誘致 得た『特別待遇』 『Mさん』と呼ばれた元助役」の見出しで伝えています。

この問題の舞台は、日本海に面した大飯郡高浜町にある高浜発電所です。その原発を持つのは関西電力です。

現在は、1号機から4号機まで4基の原子炉があります。1号機の設置許可が下りたのは1969年12月で、1974年11月に営業運転を開始しています。

その後、10年足らずの間に2号機、3号機、4号機と着実に原子炉を増やし、現在に至っているというわけです。現在は、1号機と2号機は定期点検中にあり、3号機と4号機の2基が稼働中ということです。

高浜発電所
高浜発電所(Google Earth Proで取得した画像)

今回の問題で一躍クローズアップされた人物が「Mさん」と呼ばれた人です。森山栄治という人物が「M」と呼ばれた人で、今年の3月、90歳で亡くなっています。

穿った見方をしますと、存命中は問題の発覚をさせず、まるで亡くなるのを待って問題が表面化したようにとれなくもありません。

改めて福井県の地図を見ますと、県の西半分は海外線が入り組んだリアス式海岸で、これが福井県の地形を特徴的なものにしています。そしてその部分はそっくり嶺南と呼ばれる地域にあたり、江戸時代に小浜藩と呼ばれた地域がほぼこれに当てはまるということです。

私がその土地の成り立ちを確認したのは、そのあたりに昔、城があったかどうか知りたかったからです。やはり、思った通り、小浜城があったことを知りました。

本日の豆訂正
高浜発電所があるあたりは、かつては小浜藩といわれた地域で、小浜城があるというようなことを書きました。しかし、よくよく調べると、それは今の小浜市にあり、高浜町からは離れています。これではさすがに、城の近くに同和地区があるという話の辻褄が合わなくなります。

それでもう一度町について書かれたウィキペディアで確認しました。すると、「江戸時代中期以降は 小浜藩の一部となり、一国一城令により高浜城は廃城となった」と書かれているのに気がつきました。若狭高浜藩という藩の城になるのでしょう。この城は若狭高浜駅を北へ向かった海岸線にあったようです。森山氏が生まれたのは町内の西三松ですが、隣駅に三松駅があります。それが西三松のあたりになるのであれば、城からも近いといえば近いでしょうか。

それを知った上で朝日の記事を見ていきますと、やっぱりそうだったのか、と合点がいきます。

現在の高浜町は1955年に1町(高浜町)3村(青郷村和田村内浦村)が合併して誕生しています。その当時のことを、朝日の記事は次のように書いています。

(合併して誕生した高浜町は)「それぞれ(1町3村)が借金だけを持ち寄ってできたような町」。森山氏の助役時代に町長を務めた田中通氏(93)はそう話す。

ネットの事典「ウィキペディア」で確認しますと、森山氏は現在の高浜町の西三松の出身となっています。成人して京都で役人をしていたところ、1969年12月といいますから、高浜発電所の原子炉1号機の設置許可が下りた時期に合わせて、高浜町の町長に請われて高浜町の役人になっています。

ということで、1974年11月14日に原子炉1号機稼働までの期間、関西電力と高浜町の間に入り、“調整”に力を発揮したのでしょう。

同町がある周辺の地域には主だった産業がなく、住民は仕事を求めて町を離れざるを得ない状況にあったようです。町としても収入減が乏しく、それが原発誘致に動いたものと思われます。

その寒村への原発誘致に動いた森山氏は、町民には“偉人”のように映ったりもしたのでしょうか。郷土史に記された森山氏の次のような功績を紹介しています。

原発誘致に献身的に取り組み、住民との対話をつくし、活動実績は誠に顕著

私は、次に紹介された功績に引っかかるものを感じました。

人権問題の啓もう啓発活動により町民に意識付けを行ったことは大きな意義があった

原発を巡る金銭授受疑惑の話に唐突のように「人権問題」の話が混じり込み、違和感を持ちました。

しかし、この話が出てきたことで、「ははん。そういうことか」と納得する人もいるでしょう。私もそんなひとりでした。

高浜町に原発を誘致したのは、同町が「頑丈な土地の地盤をもつ」からと記事では書いていますが、それだけの理由で同町に決まったわけではなかったでしょう。

数十年も昔、原発誘致について伝えるNHKのドキュメンタリー番組を見ました。その中で、被差別部落(部落問題)であれば原発を作りやすい、というようなことを伝えていたのを今も憶えています。

そこで伝えられたのは東北地方でしたから、廃炉の運命となった福島原発か、宮城の女川原発のことだったかもしれません。

森山氏について記述されたウィキペディアに目を通しますと、肩書の一つに「元人権教育家」とあります。真の意味の人権であれば尊重されて然るべきです。しかし、この場合の人権は意味合いが異なることに注意すべきです。

歴史的な背景から、西日本にはいわゆる被差別部落や特殊部落と呼ばれた同和地区が点在します。そうした地区はランダムにあるわけではなく、多くはかつて城があった近くに残ります。

この認識があったため、高浜発電所がある福井の嶺南地方にもかつては城があったのだろうかと気になり、かつては小浜城があったことを確認し、納得した次第です。あとの更新で、小浜城を高浜城に訂正していますが。

概して、城の南に同和地区があるという記述を読んだことがあります。それがすべてに当てはまるかどうかはわかりません。

その記述を読んだのはそれほど昔のことではありません。長崎原爆(長崎市への原子爆弾投下)の裏側を描いたNHKEテレの「ETV特集」で初めて知った話を本コーナーで取り上げました。本サイトの独自ドメイン移行に伴う手違いでその投稿は消えてしまいましたが、更新の過程で同和地区について知識を得る中で知りました。

森山氏のウィキペディア内「人物:人権教育活動」の項目には次のように書かれています。

関西電力人権教育研修講師として、定期的に大阪、京都、福井で関西電力役員や県庁吏員を相手に教鞭を執り、「先生」と呼ばれて関西電力の専属担当者を従え、懇親会で幹部連中と交流も持った。氏を「先生」と呼ぶ人権教育の教え子には八木誠関西電力会長や、岩根茂樹関西電力社長などがいる。
福井県客員人権研究員として、同和問題等の人権問題の調査研究に従事したほか、福井県人権施策推進審議会委員、高浜町教育委員長等も歴任し、1996年には法務省人権擁護局長感謝状を受賞した。2010年高浜町教育委員を任期満了に伴い退任。

同和地区で育った人々は、世が進むにつれて自分たちや先祖が味わった差別の保証を訴えるようになります。それはそれで当然のことではありますが、それが行きすぎますと、自分たちを差別したものたちに権力を持つようになり、それが同和利権同和利権の真相)と呼ばれるものに変質することが少なくありません。

この手の「人権教育」につけられた教育は名ばかりで、実情は、被差別を笠に着た恫喝の類いであろうと想像します。その恫喝教育を受けた関電の現会長や社長が、森山氏に決して逆らえない構図が目に浮かびます。

この手の利権に政治家が絡まないことは考えられません。大手マスメディアがこの問題を大きく取り上げた以上、政治家の関与が少しでも疑われれば報じる義務があります。

福井県選出の国会議員としてまず頭に浮かぶのは、元防衛相の稲田朋美氏です。稲田氏といえば、父の椿原康夫氏の存在を抜きには語れません。

そのあたりにつきましては本コーナーで取り上げたこともありますが、父の康夫氏は、福井の同和地区に生まれたことが知られています。

森山氏は、高浜町にある原発警備会社「オーイング」の筆頭株主で、2017年まで取締役をしていたとウィキペディアに記述されています。また、オーイングの関連企業「アイビックス」の吉田敏嗣社長は、稲田氏の後援会長だそうですから、森山氏人脈と深い関係にあると見て間違いありません。

間もなく国会が始まりますが、野党はこの問題を取り上げ、森山氏との関係を稲田氏から訊いてみると、相当強い効き目を感じるはずです。

これから先は大手マスメディアの本気度が試されますが、期待しても良いのでしょうか。

今月1日、民主主義を支える使命を果たすためとして、新聞社に税の軽減措置が適用されました。それを受け、1日の紙面に日本新聞協会の決意を示す次のような見解が載っています。

最近では、不確かでゆがめられたフェイクニュースがインターネットを通じて拡散し、世論に影響するようになっています。そうした中で、しっかりとした取材に基づく新聞の正確な記事と責任ある評論の意義は一段と大きくなっています。

この決意があるのであれば、今回の原発マネーをめぐる真実の姿も、包み隠さず報道してもらえると信じていいのでしょうか。今回紹介した朝日新聞の記事中には、同和のどの字も入っていないなど、及び腰の印象を持ちますが。

しかし、真実の姿を伝える使命を与えられたことで税制の優遇を受けているわけですから、決意通りの報道を期待して待つことにします。

信じて待っていますよ、新聞屋さん。同和問題の裏側にもしっかりとメスを入れてみてちょうだい。本当に覚悟があるのであれば。

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