頭をすっきりさせたいですか?

一週間前の本コーナーで、「瞑想」について書きました。そして昨日の午後、それを自分なりにやってみて、効果があるのを実感しました。

このところは六月としては気温が高く、湿度も高いので、体に疲れが残るような気がします。昨日の午後も、だるいので、ぼんやりとして時間を過ごしていました。

そんなとき、ふと、体のだるさは体そのものから来ているのではなく、頭から来ているのではと考えました。

本コーナーで瞑想について書いたときも、人は四六時中いろいろなことを無意識に考え、脳を疲れさせていることを知り、それを書きました。

私が参考にしたのは、朝日新聞土曜版にある「知っ得 なっ得」というコーナーです。本コーナーは、先週から四回にわたって、簡単にできる瞑想について書かれています。

疲れの原因が疲れた脳にありそうなことを思いついた私は、朝読んだそのコーナーをもう一度読み直しました。

コーナーの二回目となる昨日(15日)は、いつでも思いついたときにできる「ずぼらな瞑想法」について書いています。

今回の瞑想について取材に協力したのは、精神科医・心療内科医のかたわら、横浜にある禅寺の住職もされている川野泰周氏です。

川野氏が高校生の時、父が亡くなったそうですが、父は寺の住職だったそうです。ということは、川野氏が父のあとを継いだ寺が禅寺ということでしょう。

川野氏の指導により、未来でも過去でもなく、今現在、自分がしていることに意識を集中することで瞑想の効果が得られると書かれています。

例えば、料理でキャベツの千切りをしているとしましょう。瞑想を意識しなければ、あれこれといろいろなことを考えながら、キャベツを切り刻んでいるでしょう。

その間、脳は雑多な考えに占領され、それを処理するためにフル回転しています。PCのCPUが高速で演算処理をしているようなものです。これでは脳が疲れてしまっても仕方がありません。

そこで、ずぼら瞑想の発想が必要となります。

キャベツの千切りをするとき、普段は何気なくする単純な動作に、意識を集中するのです。そうすることで、意識は今現在に向かい、ほかの考えは入り込んできません。こうすることで、ストレスから開放され、脳をリフレッシュできるというわけです。

ご飯を食べるときも、一口一口よく噛んで食べることで、ご飯を噛むことに意識が集中されます。歯磨きをするときも同じです。そんな風に考えたら、日常のあらゆる場面で適用できます。

このように、ひとつの動作に意識を集中してほかのことを考えない状態は、立派な瞑想になると書かれています。

これを読んで私も早速試してみました。たとえば入浴時、髪の毛を洗いながらそれに意識を集中するというように。そんなことをしばらく続けると、頭の中が清々したように感じました。

この、ずぼら瞑想は即効性があるように感じます。難しいことは考えず、ただ、今自分がやっていることに意識を集中させるだけで、脳への負担が減り、疲れにくくなります。

横尾忠則1936~)が寄せられた人生相談に答えた『老いと創造 朦朧人生相談』をオーディオブックのAudible版で聴きました。

これまでにも感じていたことですが、横尾は、誰に教わったのでもなく、彼自身の「哲学」のようなものを持っています。だから、あらゆる相談に対し、通り一遍ではなく、彼自身の哲学から導き出したような回答をし、聴いていて感心することが少なくありません。

その横尾が、回答でたびたび語るのが、今現在に集中して生きるという考え方です。これは、ここまで書いた、ずぼら瞑想と同じことを、横尾が無意識に実践しているといえましょう。

横尾への質問のひとつに、占い師に、自分に起こる嫌な未来を聴かされ、不安になったというのがあります。

横尾自身35歳の時、頼んでもいないのに、東京と京都、大阪だったかに住むまったくつながりのない三人の占い師から、死ぬ年を占われたそうです。三人は一致して、横尾は五十歳で死ぬといってきました。

その時期、横尾はグラフィックでザーナーとして認められ、世界中の美術館からオファーを請けていたそうです。そんな横尾でしたが、占いの結果を無視できず、五十歳という年齢を意識せざるを得なくなり、その年が近づくごとに恐怖が募ったそうです。

そんなおり、横尾が四十四歳の時、ニューヨーク近代美術館ピカソ18811973)の作品を見ていたとき、突如、これからは美術作品を描こうという考えが湧き上がったそうです。

横尾は偶然の出会いや考えに忠実に従う、従えるところがあります。彼は、自分の中に湧き上がった考えも、誰かから請けた天啓のように受け取り、その考えに従って、画家宣言をし、活動の場を、グラフィックデザインから純粋絵画へと変えます。1980年のことです。

このときのことが、人生相談の最後に詳しく語られています。

世間では、ピカソに影響を受けたことにされていますが、その時、横尾はピカソには感心がなかったそうです。

のちに多摩美術大学の学長になる人に誘われ、行く気もなかったもの、横尾がその美術館で個展をしたこともあり、また、暇だったので美術館に行ったそうです。

今世紀最大のピカソ展とかされ、会場へ着いてみると大変な人出で、人並みに揉まれるように会場へ入ったそうです。

すると、入って10分もしないうちに、人並みに揉まれていた横尾に、「グラフィックデザインはもう終わりだ。これからは美術だ」との天啓のようなものが降りてきたそうです。

そのときのことはいろいろな場所で語ったものの、天啓といっても信じてもらえないだろうと思い、ピカソに影響を受けたことにして、それが定説のようになりました。

横尾は絵画を描くことに熱中し、気がついたときには五十歳を超していたといいます。絵を描く今そのときに意識を集中したことで、占い師にいわれたことをすっかり忘れ、死亡宣告されたはずの五十歳を何事もなく通過したということです。

横尾は、美術に転向していなかったら、死への恐怖に怯え、心筋梗塞か何かで、占いの通り五十歳のときに死んでしまったかもしれないと語ります。

誰もが、まだ起きていない未来に不安を抱いたりします。横尾はそんな質問に対しても、何かが起きたら、起きたときに何かをすればいいのであり、起きていない未来に不安を感じる必要はないと回答しています。

過去に起きたことをいつまでも考えることも同じです。過去は済んだことで、あとになってそれを変えることはできません。できないものを今考えても仕方がないです。

ということで、今このときに自分の全神経を集中して生きようということです。

朝日の土曜版にあった「瞑想のススメ」には、次のように書かれてています。

「無心になって何かをする」ことが習慣化すると、「今、この瞬間」やるべきことに意識を集中させることができるようになる。

私は昨日の午後、それらしきことを実践し、すぐにその効果を感じました。今日も、起きてから、それを意識して生活を始めました。

これを続けて習慣化できたら、これから始まる梅雨の時期も、快適な心身で過ごすことができそうです。

川野氏が書かれた『ずぼら瞑想』をAmazonの電子書籍版で読見始めました。

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