人生相談は生きるヒント

朝日新聞土曜版に「悩みのるつぼ」というコーナーがあります。よくある人生相談です。

この土曜日(8日)にそのコーナーに寄せられた相談は、相談者がご自分を「こじらせ女子」と称する女性です。年齢は37歳です。

新聞にある相談内容を見ると、昨年、三年間交際した相手との婚約を破棄したそうです。

相手の男性というのは会社の経営者です。彼女曰く、その相手は高学歴で、収入も多く、見た目も誰からも羨ましがられるほど素敵です。

彼女はこの男性と付き合い始めてから、それまでしていた仕事をやめ、彼の会社の手伝いをしました。

そのまま順調にいけば、彼女は自分の人生を幸せに感じられたことでしょう。ところが、別れてしまいます。

彼と別れた理由を一言でいえば、彼の人間性を信じられなくなったことでした。

彼女のいい分だけしか書かれていませんが、それを信じれば、彼は「仕事をしていく中でつかなくていい嘘を重ねる」「彼女の趣味や友人関係にまで口出しをする」「モラルハラスメントの傾向を持つ」ということになります。

それらの理由で彼との婚約を破棄したのであれば、彼女は自分を責めることはなさそうです。それでも彼女が悩み、新聞の相談コーナーに相談するのは、自分を大切に育ててくれた家族に申し訳ない気持ちと、自分はこの先幸せになれるのだろうかと不安な気持ちからです。

彼女は自分を「こじらせ女子」と「卑下」しています。

昨今は「○○女子」というのが流行です。「こじらせ女子」は、語感から何となくはわかります。でも、どこかで聞いたそんなパターンに自分を当てはめるのは必要ないように思います。

十人いれば十通りの生き方なり考え方があります。自分は自分だと開き直っていればいいです。考え方や生き方を他人と比較してみても始まりません。

今回の回答者は、政治学者の姜尚中氏(1950~)です。概ね、常識的な回答です。それを読んだ彼女が、どの程度それに納得するかはわかりません。

姜氏は回答の締めくくりに次のようにアドバイスしています。

おそらく、あなたには、他者の個性を尊重しながらも、自分はこうしたいという、夏目漱石18671916)の言う「自己本位」という生き方がヒントになるのではないでしょうか。

人生相談で思い出すのは、本コーナーで書いたばかりの横尾忠則1936~)の『老いと創造 朦朧人生相談』という、横尾への人生相談と相談に対する横尾の回答をまとめた本です。

Amazonの電子書籍版が出ています。定価は1265円です。同じ相談本には、プロのナレーターが朗読したオーディブックのAudible版があります。こちらは1750円です。

Audibleは、先月一カ月間、無料で利用したばかりです。その期間に横尾の人生相談本のAudible版があることに気がつけば、無料で聴けたところでした。

そんなことを考えていたら、Audibleから三カ月間50%オフで利用できるとの案内が入りました。通常は月額1500円のところ、一カ月750円の料金で三カ月間サービスを利用できるという内容です。

私は早速利用を始め、横尾の人生相談の回答をAudibleで聴き始めました。一つひとつの質問に対して、横尾自身が生で回答するように聴こえ、なかなか楽しめます。

実際問題、この本は、編集者が横尾を訪問し、それぞれの質問を横尾に直接ぶつけ、それに対して横尾が話して回答したことを録音し、文字起こして作られたものでしょう。

だとすれば、オーディオブックとして聴くのには絶好といえそうです。

そんな考えもあって、文字で書かれたものを読むよりも、本書は、耳で聴いた方が自然に感じられます。

横尾の回答は、彼自身の考え方や生き方が反映されたものです。一般的でないことが多いように思われますが、それだからこそ、新鮮な感覚で、取り入れてみたい考え方が少なくありません。

横尾の人生相談の回答を聴いて、何か感じることがあれば、本コーナーで取り上げることをしましょう。

昨日聞き始めたばかりですが、昨日聴いた中では、横尾は1970年から日記をつけ始め、それが53年間続いているということです。

その部分をもう一度聴いて確認しました。さまざまな相談へ回答しており、一回の回答は長くても10分程度、短い回答は2分足らずです。それを耳で簡単に確認できるので、Audible版は便利です。ちなみに、日記についての質問と回答は【4分27秒】です。

横尾はそれ以前も日記をつけようと思ったものの、長続きしなかったそうです。今に続く日記をつけ始めたきっかけは、乗っていたタクシーが追突され、その後遺症(むちうちか何か?)で、一年半仕事ができなかったことです。

無為に過ごしているように感じられたのでそれを日記に残しました。英国製の日記帳を気に入り、同じ日記帳が53冊になりました。

何かを表現することを仕事にする人は、マメなところがあります。どんなことも記録に残しておきたくなり、横尾は見た夢も日記に書きます。

長期の旅行に出れば、その日に見たことを日記に書き、旅日記になります。

文字で書くだけでなく、スケッチをしたり、映画やコンサート、観劇に行けば、そのチケットを貼り付けます。新聞や雑誌の記事を切り抜いて貼ることもします。

また、テレビで見て気になったことや、誰かの言葉を書き残すこともします。

スマートフォンで撮った写真をプリントし、貼ることもします。

日記を続けるコツは、義務感を持たないことだと横尾はアドバイスします。書くことがない日は一行でも構いません。何日も空白だっていいです。書きたいことがたくさんあれば、1ページ文字で埋めてしまうこともあります。

こうあらねばならないと自分で自分に制約をつけず、自由な気分でいることが必要です。

私は日記はつけませんが、本サイトの本コーナーの更新が、私には日記代わりとなりそうです。そのときどきに思ったことをただ書いているだけだからです。

これも、私には生活の一部のようになっており、これからもやめるつもりはありません。本サイトの運営を始めて25年、四半世紀です。

朝日の人生相談コーナーに相談した「こじらせ女子」とご本人が書く女性も、横尾の人生相談本を読むことで得られることが多くありそうな気がします。

誰の回答であっても、自分のためになりそうなことは、どんどん取り入れるといいです。

個人的には、横尾の何でも受け入れる生き方が大いに参考になります。

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