今月21日、マスメディアが一斉に報じたニュースがありました。山梨県で、迷惑になるほど賑わっていたある撮影スポットに、地元の自治体が黒い幕を設置し、撮影ができないようにする措置に出たことを伝えるものです。
同県富士河口湖町にあるローソン河口湖駅前店を、同店の駐車場と、前を走る道路を挟んだ手前から見ると、富士山がコンビニエンスストアの上に載ったように見えることから、ここ二年ほど、恰好の撮影スポットになっていました。
タイから日本に観光に来た人がそこでコンビニ越しの富士山を撮影し、それをSNSに投稿して注目を集めるようになったそうです。
そのことで、その撮影スポットが人気となり、海外からばかりでなく、国内からの観光客もそれに興味を持ち、周辺は混雑し、周囲の私有地に立ち入る人も現れるなど、地元の住民が大迷惑を被るようになったということです。
そのため、地元の自治体がその対策に乗り出しました。コンビニ越しに富士山が見渡せる場所に、目隠しするように、幅20メートル、高さ2.5メートルの黒い幕を今月21日に設置しています。
ここまでのことは本コーナーで当日に投稿しています。
どんなこともそうだと思いますが、何かの対策をしたときは、その結果の検証が必用です。今回の場合では、設置した撮影防止幕がどの程度の効果を上げているか、あるいは上げていないかを検証することです。
同じことは自治体だけでなく、マスメディアにも必用です。
幕を設置する工事があった日、NHKは中継車を出すことまでして中継したそうです。それだけ力を入れて報じた割りには、そのあとどうなったかを報道するところが表向き目立ちません。
そんな折、昨日の日経新聞にその続報が載りました。「富士山 目隠しの幕に穴」の見出しを見ただけで、その後どうなっているかが想像できます。
幕が設置されることを報じた記事がYahoo!に上がると、幕に穴が開けられることを心配するコメントが早速見られました。その悪い予想が想像以上に早く当たってしまいました。
日経の記事には、幕に開いた穴を通して撮影した、コンビニに載ったように見える富士山の写真が添えられています。写真には撮影した日付があり、それが24日となっています。
その後、28日に現地を取材すると、穴は約10個に増えていたそうです。
撮影を防ぐために設置された幕はビニールの糸を織ったような構造になっているのでしょうか。記事には「何者かが撮影目的で幕の網目を指で押し広げたとみられる」とあります。
おそらくは、幕を設置した地元自治体は、設置後、毎日幕がどうなっているか確認していたのでしょう。町によると、設置した翌日の22日には最初の穴を確認したとのことです。
町の担当者は、「まさかこんなに早いとは」と取材に話しています。
町としてはこれ以上の対応は難しいでしょう。幕に開けられた穴を修復し、幕に触れないよう張り紙で注意を促す方針のようです。
ただ、それがどの程度効果があるのかは疑問です。
それは別にして、この幕を巡る騒動のその後を報じたのは、私が気がつく限りでは、今回紹介した日経のみです。私の家ではほかに朝日と産経、地方紙をとっていますが、それを報じた記事をその三紙では見かけませんでした。
もしも報じていたとすれば、私が気がつかないほど小さな扱いだったのでしょう。
騒げるときだけ騒いで報じ、あとは知らない振りでは、無責任に感じます。
それにしても、他の人と同じような写真を撮ることに熱心な人の気持ちが私にはよくわかりません。何かを表現するなら、他の人と違う表現をしてこそです。
しかし、こんな理屈をいっても、通じない人にはまったく通じないことでしょう。