2002/09/16 なぎなたにかける女性

今日の産経新聞・地方版にちょっといい話が載っていますので紹介してみたいと思います。

「風が吹くとき 汗の記憶」と題された連載コーナーで、スポーツ(に限らないのか?)に打ち込む個人を一人ずつ紹介しているのですが、今日は「なぎなた」にかける女性(30)についての記事です。

まず、本文の前に一回りもふた回りも大きな文字で綴られた文章が読む者の目を引きます。そこには、彼女のかつての心の迷いが次のように綴られています。

「もう普通の女の子になろう」。自由を求めて進学した大学。「周りはみんな輝いている」。妙なあせりと、いらだちがこみ上げてきた。

現在、千葉県船橋市に在住されているという彼女は、9歳の時、近所の道場から声を掛けられたことがきっかけで、「ただ何となく」なぎなたを始めることになったそうです。

彼女はやがて、読み通りに相手に一本を決めたときのこみ上げてくる満足感に魅了されるようになり、また、彼女自身が認める“男勝りの性格”も手伝って猛練習を重ね、着実に成果を挙げていったようです。

その後、千葉女子高校へ進学した彼女は、二年連続で国体選手にも選ばれ、千葉県内では屈指のなぎなた選手へとなっていくことになります。

しかし、そんな彼女にも迷いが生じ始めます。

自分の周りの友人たちが楽しそうに高校生活を送っているように見えるのに対し、自分はといえば自宅と学校、そして道場の往復だけ。

「なんで、私は棒(なぎなた)なんて振っているんだろう?」。氷のように冷たい道場の床を一歩踏み込んだ足に痛みが走り、見ると、足の裏の皮が剥け、赤い血がにじんでいました。

「もう普通の女の子になろう」

彼女は体育大学への進学を取りやめ、女子大へ進みました。

大学へ進んだ彼女は別の道を求め、女子大のゴルフ部、スキー部、テニス部、と転々と渡り歩くことになりますが、どこでも満足感を味わうことはできなかったようです。

そんな彼女の意識が向かった先は、またしてもなぎなたで、校舎奥にあったなぎなた道場が彼女の行きついた場所となりました。

彼女の場合、離れたくても離れられないのがなぎなたという競技で、回り道をしながらも結局は彼女のいるべき場所へ戻っていったのかもしれません。

大学を卒業した彼女は、母校の高校の家庭科教諭として教壇に立つ現在も競技を続け、昨年、日本武道館で開かれた全日本なぎなた選手権では決勝戦まで進み、見事準優勝に輝いたそうです。立派なものですね。

その決勝戦で、彼女はスポットライトを初めて浴び、そのオレンジ色のライトが金色にも感じられ、思わず鳥肌が立つ思いだったそうです。

「ただ何となく」始めたはずのなぎなたですが、今では「何となくじゃない。私が決めた道なんだ」とまで確信を持てるようにまでなったとのことです。

記事に添えられた彼女の写真は、真剣そのものの表情でなぎなたを構え、とても凛々しく目に映ります。

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