ジャーナリストを名乗るなら覚悟を示せ

ジャーナリストといってもピンからキリまであります。日本に限っていえば、サラリーマン記者は、記事も書く会社員でしかないでしょう。何の覚悟も感じられません。

夏の高校野球が行われていますので、それを伝える記事に接すれば、私がいおうとすることはわかってもらえるだろうと思います。

たとえば、この記事に目を通してみてください。

これは、夏の高校野球の主催新聞、朝日新聞に勤めるサラリーマン記者が書いた記事です。これを書いた記者は、自分が書いた記事に己惚れているのかもしれません。

また、これを読んだ人が、「いい話だ」と“感動の押し売り”を、それと知らずに受け取ってしまったりするのかもしれません。

私は記事の見出しを見ただけで、嫌な気分になりました。

これは、昨日行われた準々決勝のひとつ、星稜と仙台育英の試合中にあったことです。星稜の先発投手が、暑さのために右手がつる異変が生じます。それを察知した対戦相手の仙台育英の選手が、スポーツドリンクの入ったカップを持ってマウンドに駆け寄ったという話です。

これはこれで褒められる行為ではあります。が、これを「心温まるいい話」として伝えてしまう朝日の記者には失望するよりほかありません。

どうして星稜の投手の指が、つったのか考えないのですか? 一年中で最も暑い時に、高校生に長時間高校野球の試合をさせているからではないですか。

新聞やテレビは、猛暑が予想されるときは熱中症への注意を盛んに呼びかけますが、その最悪のコンディションで高校生に過激な運動をさせているのですから、ギャップを感じないわけにはいきません。

この記事を書いた朝日の記者は、感動のニュアンスを伝える記事は書いてもいいでしょうが、それと同時に、猛暑の中で試合を強いている自分たちの無情さにも言及すべきです。そうでなかったら、ジャーナリズムとはいえないではないですか。

朝日新聞は全国に支社があり、それぞれの支社の記者は、地元から甲子園大会に出場するチームの様子を伝えます。結果がどうであれ、健闘を称えることは必要ですが、同時に、ジャーナリストであれば、真実を伝える義務もあります。

ところが、自分の会社が主催する大会であるため、暗部には目をつぶるか、そもそも暗部に気づかない記者も見受けられるように私には思えます。

千葉県の例でいいますと、今夏は習志野高校が県の代表となりました。結果は2回戦で山形代表の鶴岡東に5対9で敗れました。

その試合の翌々日の朝刊に、「習高 おごらぬ強さ」「『一枚岩』チーム成長」の見出しで同校の健闘を称える地元の記者が書いた記事が載りました。

その中段に、以下のような文章があります。

春の甲子園では3度、逆転勝ちし、県勢として24年ぶりに春の甲子園で準優勝。学年に関係なく、のびのびとプレーできるチーム作りが実を結び、「逆転の習志野」を印象づけた。

たしかにこうした面もあるでしょうが、ジャーナリストを自認するのであれば、千葉県大会の準決勝の逆転勝ちはどうだったのか、深堀して欲しいところです。

準決勝は、4年連続で甲子園出場を目指していた木更津総合と対戦しています。

この試合はリードする木更津を習志野が追う展開でした。後攻めの習志野は、9回裏が始まる時点で1点差で負けていました。

しかも、走者を出すことなく、アウトを2つ取られました。次打者以降が塁に出てヒットなどを続けない限り、負けが決定してしまう絶体絶命の場面です。

結果的にはここから同点に追いつき、延長戦の末に習志野がサヨナラ勝ちして甲子園へ駒を進めました。

私はこの試合を生中継するテレビで見ていました。どちらを贔屓することもなく、公平な目で見ていたつもりです。

試合は録画して残してありますが、これを書くにあたり、再生して確認することはしていません。ですから、あくまでも私の記憶だけでこれを書いていることをご了承ください。

もしかしたら私の記憶でそう勝手に解釈しているのかもしれませんが、木更津の投手がストライクを2つ取り、あと1つのストライクが決まれば勝敗が決する状況となりました。

ボールも何球かあったと思いますが、そこで投げ込んだボールを球審に「ボール」と判定されました。素人目には「ストライク」に見えなくもないコースでした。

そうした判定が、その打者だけで2度あったように記憶しています。結局は四球となり、2アウトから習志野は走者を出しました。これが習志野の逆転劇につながっています。

このあたりも含めて朝日の記者が習志野の粘り強さをいうのかもしれませんが、ジャーナリストであれば、球審のコース判定についても、少しは言及して欲しいところです。

習志野が夏の全国大会で2度の全国優勝も果たしているからか、千葉県の高野連は、昔から同校への贔屓が目に余ります。今夏の大会でもそれが感じられ、全国大会が始まる前に本コーナーでも書きました。

習志野高校は特別に優遇され、全試合が涼しい環境で試合ができるであろう第1試合でした。しかも、球場は、同校に最も近いZOZOマリンスタジアム(千葉マリンスタジアム)で1試合を除くすべての試合をしています。

同球場の試合は地元のテレビが中継するというおまけつきです。

ここまで1校を優遇するというのは異常といえましょう。

こうした同校の優遇を主催新聞である朝日新聞の記者が知らないわけがありません。これがもし、別の分野のことで、特定の個人なり組織なりが優遇されていることがわかったら、その実態を取材し、記事にするはずです。

どうして同じことを高校野球ではせず、同校の健闘を称えることばかりに力を注ぐのでしょう。

結局のところ、自分の会社が主催する大会であるため、それにケチがつくようなことを控える暗黙の忖度の結果でしょう。

新聞社の記者は、記事を書くサラリーマンと私が書いた理由が、なんとなくわかってもらえたでしょうか。

夏の高校野球も、残るは準決勝と決勝です。個人的には、奥川投手のいる星稜高校の優勝を期待しています。

同校が習志野と因縁があることは指摘するまでもないでしょう。春の大会で両校が対戦し、習志野が勝っています。が、試合後、星稜の林監督が、習志野のサイン盗み(走者や一塁、三塁コーチャーが盗んだサインの打者への伝達)を記者会見で訴え、騒動になったのは記憶に新しいところです。

表面上はあやふやにされたと思っていましたが、高野連(日本高等学校野球連盟)は裏で動き、大会が始まる前、集まった各校の監督にフェアプレイで試合するよう伝えたそうです。

また、バックネット下にある関係者の部屋に担当者が数名座り、全試合、不正が行われていないか目を光らせるようになったそうです。このことは、私が知る限り、テレビの中継でアナウンサーが降れていませんので、そんなことが行われていることを知らない人もいるかもしれません。

その結果かどうか、昨日の準々決勝で敗れた作新学院の2塁走者に紛らわし動きがあったとして、球審が注意する場面がありました。不正が行われたかどうかは不明のままです。

これまで野放し状態にあった行為への対策が遅ればせながら採られるようになったのであれば、習志野が春の大会に出場した意味もあるといえましょう。

習志野高校の行為を協議する審判団

星稜のほかには、一所懸命さが伝わってくる2年生エースの中森選手がいる明石商業も期待したいです。同校の挟間監督は、興奮してガッツポーズをしすぎるとかで大会本部から注意されたそうですが、個人的には嫌いではありません。

相手チームへの最低限の敬意は必要でしょうけれど、素直に感情が表に出てしまう、良い意味での直情型の監督なのだろうと私は理解しています。

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