デルス・ウザーラ(オリジナル・サウンドトラック)

リクエストカード(279-1)
リクエストカード(279-2)

山本さん、こんにちは。お寒うございます。今回は、一年中で最も寒い頃とされる「大寒」の翌日に「真冬の映画」で募集する回宛てにお願いします。予報では、今年の「大寒」はそれほど寒くならないかもしれないという話ですが、実際はどうなりますか。▼さて、このテーマを聞いて、私は黒澤明監督の『デルス・ウザーラ』が思い浮かびました。黒澤監督は、前作が興行的に振るわず、本作までの間に5年間の空白ができ、その間に自殺未遂を起こしているそうです。公開されたのは1975年ですから、1910年生まれの黒澤さん65歳のときの作品になります。 ▼作品の舞台は、広大な国土を持つロシアの東のはずれにあたるシベリアです。地図で確認しますと、日本海を挟んだ向こう岸になります。時代は1900年代のはじめ。作品は1部と2部に分かれており、ここでも5年間の空白ができますが、その間に日露戦争が起こっています。そんな時代を描いた作品です。▼タイトルの『デルス・ウザーラ』は人の名前です。空白となっていた地図を埋めるため、探検隊がその地方にやって来ます。そこで出会う男の名がデルス・ウザーラ(=マクシム・ムンズク)です。人っ子ひとり住まないような密林で、探検隊の前に突如現れた彼は、家も家族も持たず、ひとりでそこに生きていました。(→ 2に続きます)


【メッセージ2】:(→ 1の続き)  人間は自分ひとりで何でもできそうに考えたりします。でも、本当にそうなのか? とこの作品を観ると考えさせられてしまいます。 ▼たとえば、何の準備もせずに、文明から遠く離れた自然の中に、ひとり取り残されたらどうでしょう。昨日憶えた知識は役に立ちますか? 銀行に預けたお金はあなたの命を救ってくれますか?▼探検隊の前にひとりで現れたデルスという男は、自分の体ひとつで生きています。文明から遠く離れた大自然の中で生きてきたためか、生き方が謙虚です。彼の眼に映るものすべてに生命が宿り、太陽を指さして「一番偉い人」、月を「二番目に偉い人」といいます。火も水も風にも生命を感じ、敬意を表します。▼隊長(=ユール・ソローミン)がデルスと湖へ調査に向かうシーンがあります。天候が急変し、猛烈な風がふたりを襲います。周囲は見渡す限り何もない平原です。誰に助けを求めることもできません。雪が強風で吹き飛ばされ、地面が氷のように磨かれていきます。文明人の隊長にはなす術がありません。ふたりを待つのは死です。デルスは自分たちの命を自分たちで守るための行動に出ます。▼現代も、文明から離れたところに自然は残ります。寒い季節にひとりでそこへ行く勇気はありません。

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