プレーヤーを持たずにレコードを楽しむ方法?

私は運転免許を持っていません。正しくは、以前は持っていたものの、今は持っていない、になります。

二十歳前に運転免許は取得しました。免許をとったのですから、車を所有し、運転した時期もありました。

しかし、どんなことも、向き不向きがあります。私の場合は、お金をかけて運転免許を取得したにも拘わらず、車の運転には不向きであることに、自分で運転してみて気がつかされました。

歳をとったことで、だいぶ緩和してきたと自分では感じていますが、感受性が強かった年代、私はあることに、自分独りで悩みました。

それは、赤面恐怖症です。きっかけは、高校生時代であったように、自分では考えています。

中学時代までは、赤面することに「恐怖」した覚えがほとんどありません。

高校時代は電車通学していましたが、その頃は、ストライキで電車の運行が止まったり、間引き運転されるようなことが、春闘の季節によく起こりました。

私は学校へ通うのが好きな生徒ではなかったため、ストライキで休校になると、喜んだものです。

困るのが、中途半端に間引き運転される状態です。運転本数が少なくなることで、混雑するからです。

間引き運転によって込み合う電車で通学する途中、電車が急ブレーキをかけ、乗っていた乗客が前方に傾くようなことが起きました。

私の体も前方に斜めになり、私のすぐ前に立っていた若い女性会社員、あるいは、大学生に寄りかかる形になってしまいました。それが恥ずかしくて、自分の顔が赤くなったように自分で感じました。

もしかしたら、顔は、自分が考えるほど赤くはなっていなかったかもしれません。しかし、顔が赤くなったように自分では感じ、そのことを自分で恥ずかしく感じました。

これが自分では、赤面を「恐怖」することになるきっかけだと考えています。本当のところはわかりませんが。

その「恐怖」が、私の場合は、車を運転していても意識するところがありました。晴れて、陽射しが自分の右頬にあたると、そこがほんのり温かく感じます。

それが次第に、火照っているように感じ、今度は、自分の顔が赤くなっていくように感じたりします。

こうなると、車の運転どころではなくなり(?)、車から出て、どこかへ自分の姿を隠したくなります。

このあたりの感覚は、社交的になるまでの江戸川乱歩1894196)に似ていなくもありません。

これは極端な書き方ですが、これに通じるような心境になり、それがひいては、車の運転が自分には不向きであるように考えるようになりました。

それが災いし、運転免許の何度目かの更新をせず、運転資格を自分で放棄する形となりました。

こんな私ではありますが、車という乗り物に対する興味は失わず、今はBS朝日で放送されいる「カーグラフィックTV」で、私が好きなスポーツカーが取り上げられると、自分には縁がないにも拘らず、録画し、熱心に見ることをしています。

自分では車の運転をしないのに、車を何台も所有する人がいたら、それが真の意味での「車好き」なのではないか、と考えることがあります。

ずいぶん昔に聞いた話ですから、今は違うのかもしれませんが、タレントの堺正章氏(1946~)も、「真の車好き」なのでは、と想像したことがあります。

その話の中で、堺氏は車の運転免許を持っていないと話されていました。そうであるのに、自宅の車庫には外国の高級車が何台も並んでいる、というような話でした。

堺氏自身の話だったかどうかは記憶があやふやですが、車のボンネットを開け、エンジンを眺めながら飲むアルコールは格別、という話でした。

私は子供の頃からヘリコプターという乗り物も好きです。私の場合は、どんなヘリコプターでもいいというわけではなく、つるっとした風防を持つ、米国のベル社の「ベル47」のようなヘリコプターが大好きなのです。

Bell 47 Helicopter Classic Ride!

昔、朝日新聞の土曜版に、上で書いたタイプのヘリコプターに惚れ込んだ人が、それを何機もコレクションする話が載っていました。

それを読んで、とても羨ましく感じました。自分の所有物になったヘリコプターを見ながら飲むアルコールは格別でしょう。

こんな話を書こうと思ったのは、昨日の日経新聞である記事を読んだからです。その記事の見出しを知ると、私がここまで書いた理由が見えてくる(?)だろうと思います。

「聴けなくてもレコード購入 ミリオンセラー生むZ世代の所有欲」という見出しです。

音楽を楽しむ環境が、ぐるぐると変化しています。

蓄音機の時代は遠慮して、レコード盤で音楽を楽しむ時代が長く続きました。そのあとは、コンパクトディスク(CD)などのデジタル録音盤に変わり、今は、モノを所有せず、ネット配信で音楽を楽しむ時代です。

この急激な変化により、レコード盤は完全に運命を終えた、と一般の人々の多くも考えたでしょう。

そうそう。思い出しました。音楽を楽しむ環境の変化のひとつに、本コーナーで書いたばかりの、AppleiPodに代表される、デジタルオーディオプレーヤー(DAP)に環境が切り替わることもありました。

それを使い出した私は、アナログのレコード盤の曲もデジタル化し、私が使うiPod classicに登録し、それで聴けるようにしました。

AmazonのKindleに代表される電子書籍が登場すると、それまで紙に印刷されていた書籍を電子書籍化する人が続出しました。私は面倒くさいこともあって、自分が所有する紙の本はそのままにしています。

アナログレコードも、iPod classicでも聴けるようにはしましたが、元のレコードは、そのまま所有し続けています。そのうち、また、風向きが変わって、アナログレコードが見直されることもあるだろう、と考えて。

私の当てずっぽうの想像があたったとはいいませんが、日経の記事で伝えられるように、アナログレコードが新鮮に思える、いわゆる「Z世代」の若者を中心に、アナログレコードに関心を持ち、購入する人が登場しているそうです。

かつてのように、レコードが大人気になり、売り上げが大幅に増えるとは考えませんが、レコードは消えることなく、これからも残り続ける可能性があります。

【アナログレコードのすすめ】好きな音楽は「自分の物」にする!

日経の記事で興味深かったのは、「なぜレコードを買うのか?」の問いで得られた結果です。

IFPIというところが世界の4万4000人に実施した2022年度版「音楽との関わり方調査」からの抜粋があります。

回答は、同じ人がいくつにも答えられる複数回答形式だった(?)のでしょう。ひとつの回答は、レコードを購入する理由として「レコードを眺めていたい(から)」というのがあり、そのパーセンテージは41%です。

記事では、そのあたりのことが、具体的に書かれています。

それによれば、2022年にレコードを買った人の半数が、レコードを再生するためのレコードプレーヤーを持っていないそうです。

日本のオーディオファンは極みへ

これは、車を運転しないのに、車を所有するのと同じことになります。

具体例として、ローリング・ストーンズのアルバムを購入した20代の大学生の感覚を次のように伝えています。

再生できなくても、(アーティストを)応援したいから買う。

応援したいということは、そのアーティストが好きであることが前提でしょう。車を運転しない人が、車を応援したいために買うことはないでしょうが、それでも根っこの部分には、買って応援したくなるほどその車が好き、という気持ちが、自分でも気がつかないだけで、あるということになりましょうか。

私はアナログレコードも使った世代ですが、特別の思い入れはありません。その後にCDが登場すると、すぐに乗り換えました。音楽を便利に聴けるようになったからです。

レコード盤にこだわる人は、レコード盤でしか出せない音がある、というようなことをいいます。私は音にこだわることがないため、音楽が聴ければそれでいい、と考えるたちです。

こんな考え方を持つため、ストリーミング配信の音楽であっても、楽しめます。それでいて、レコードとCDはそのまま所有し、気が向けば、レコードでも聴くし、CDでも聴き、今また、iPod classicでも聴くことが再開した、といった具合のスタンスです。

アナログレコードが「プチ復活」するニュースは、定期的に見聞きするようになっています。そうした報道を見るにつけ、ビデオテープの需要が復活することはないだろうか、と期待したい気持ちがあります。

こちらは、完全にデジタルに移行し、それが密かに人気になっているという話は聞きません。

私は、本コーナーで繰り返し書くように、昔から映像が好きで、ビデオデッキで録画したテレビ番組のビデオテープを多数所有しています。

こうしたビデオも、この先、過去に録画したビデオ映像は見られなくなる、という、ある種の「脅し」で、デジタルにダビングさせるような動きがありました。

私は、その「脅し」にはのらず、今も、昔に録画したままのビデオテープを1000本以上所有しています。

最も多かった頃は、この2倍以上あったと思いますが、保存方法が悪く、カビがはえるなどして、処分して今の本数になっています。

映像でも画質にこだわらない私は、120テープを3倍速(3倍ゆっくり録画し、再生させる)にして使いました。このモードであれば、120分のテープに6時間録画できます。

今はテレビ番組をハードディスクドライブ(HDD)に録画し、保存する番組はブルーレイディスク(BD)に保存していますが、録画モードは5倍速です。

レコードのように、ビデオテープが復権し、ビデオデッキがまた製造されるようになるといいのですが、こちらは望み薄でしょうか。

日経の記事に戻れば、音楽を作って送り出す側は、音楽配信のサービスだけでは、稼ぐことが難しいそうです。

記事には、Googleで音楽事業に携わったカレン・ケレハー氏が登場しています。ケレハー氏は、アナログレコードの復活を予想し、2018年に、「ゴールドラッシュ・バイナル」というレコードを製造する会社を創業し、その最高経営責任者をしています。

そのケレハー氏が、アーティスの苦しい事情を、次のように代弁しています。

(再生回数に応じて収益を分配する音楽配信の仕組みでは)ひと握りの有名歌手しか稼げない。レコードは一過性のブームではない。消費者とアーティストの双方にとって、感情的で経済的な価値がある。

音楽配信だけではとてもやっていけないアーティストは、ライブ活動や、Tシャツなど、グッズ販売に収入の活路を求める状況にあるそうです。

そして、そこに、自分たちの音楽をアナログレコードに吹き込んで売るという、よりダイレクトな手段が復活する道が見え、それには期待した気持ちが強くあるでしょう。

受け手の側にも変化が生まれ、「(レコードのように)形のあるものが音楽を奏でる『希少な体験』を求めてレコードを買う」が少しずつ広がってきている、というわけらしいです。

Z世代に影響を受け、そのうちに私も、お気に入りのアーティストが、アナログレコードでアルバムを発売するようなことがあれば、それを購入するようなこともあるかもしれません。

私の場合は、眺めるだけで満足せず、レコードプレーヤーに載せて、音楽を楽しむでしょうけれど。

そういえば、レコードしかなかった時代、レコード盤をプレーヤーでかければかけるほど摩耗してしまうから、との理由で、カセットテープに録音し、テープで音楽を聴く、という人がいるのを知りました。

私は、摩耗は気にせず、レコード盤で聴いていましたね。

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