画素数競争に背を向けて

デジタル技術が発達し、動画の撮影や再生が一般的になりました。それ以前、動画の再生を別にすれば、動画の撮影は一部の人に限られていました。

私は昔から、映像に強い興味を持ちます。今は動画といわれるものを、昔は映像といいました。それを楽しめるのは、映画館のスクリーンと、テレビ放送が始まって以降のテレビ受信機によってでした。

その当時、映画作品やテレビ番組の制作に関らない一般の個人は、スクリーンやテレビ画面に映る映像を見るだけであることが一般的で、自らそれらを撮影する人は極めて限られました。

そんな中、映像に人一倍興味を持った私は、自分でも映像を撮影してみたくなり、個人が唯一扱えた8ミリ映画を趣味としました。

このように、一般個人には8ミリ映画が唯一扱える映像システムでした。そのあとに登場したのが、カメラとレコーダーが一体になったビデオカメラです。

それ以前は、ビデオカメラとビデオレコーダーが別々になったビデオ撮影装置があり、それも私は使っていました。しかし、カメラもレコーダーも大きくて重い(総量が15キロとか20キロぐらいだった〔?〕記憶があります)ため、外へ持ち出して使うのは現実的ではありませんでした。

それが、技術の進歩によって、のちに一般的になる、家庭用のビデオカメラが登場しました。ただ、このカメラが出回ってからも、それを使って撮影する姿を街中ではあまり見かけなかった印象があります。

今は、デジタルカメラには必ずといっていいほど動画撮影機能が搭載されています。さらには、スマートフォンでも動画の撮影ができるようになり、個人の動画撮影が一般的になりました。

そんな人の中で、ミラーレス一眼カメラ(ミラーレス)や動画撮影に特化したカメラで動画を撮影する人がいます。その中の何割かは、フィルムのムービーカメラで撮影したような映像を求め、動画の編集段階で、たとえばDaVinci Resolveなどを使い、フィルムっぽい映像に加工することをしています。

ネットの動画共有サイトのYouTubeでも、そうした動画を撮影し、編集した動画が公開されています。そうした動画は、「シネマティック」な動画といわれています。

私はもっと具体的に、「フィルムルック」と呼んで、フィルムで撮影されたような動画に見せる加工の仕方をあれこれ試しています。

そのために、昔にフィルムのムービーカメラで撮影された「新日本紀行」を見ては参考にしています。それらを見ると、フィルムで撮影された映像は、ビデオカメラで撮影された映像とは、明らかに違います。

フィルムという物質に映像の1コマ1コマが定着していることで、ビデオの映像とは違うのでしょうが、それに、デジタルカメラで撮影した映像を似せるにはどうしたらいいのか、と考えてしまいます。

この水曜日(18日)の夜、いつも録画して見る「名探偵ポワロ」が放送され、録画した番組を再生させて見ました。この番組は、フィルムのムービーカメラで撮影されています。

今回は、英国のほかに、フランスでも撮影されています。そこに写る空の色にしても、ビデオとフィルムでは、青の見え方が違います。

一言でいえば、ビデオカメラで青空を撮ると、透明感のある青色になります。同じ青空をフィルムのムービーカメラで撮ると、不透明な青色に見えます。

これらの違いが、すべての色に当てはまります。ということは、発色を不透明なマットに見えるようにすることが、デジタル映像を「フィルムルック」に近づけるヒントになりましょう。

シネマルックとフィルムルックはちょっと意味が違う【カメラ雑談】

デジタルで撮影する映像は、より高精細なものへと向かっています。昔に登場したハイビジョンの倍の画素(ピクセル)数の1080i(フルハイビジョン)が登場し、それが今は、4K解像度や8Kへと進んでいます。

フルハイビジョンが4Kになったと聞けば、動画を記録する撮像素子の大きさが倍になったように勘違いする人もいる(?)かもしれませんが、撮像素子の大きさは関係がありません。

同じ大きさの撮像素子であっても、画素ひとつの大きさを半分にすることができれば、倍の画素数にすることができます。

ということで、今競われているのは、いかに、小さな撮像素子に、より多くの画素をのせることができるか、といったようなことです。

たとえてみれば、電車の1両に、より多くの乗客を詰め込むようなものです。満員電車に乗るのが不愉快なように、画素が詰め込まれることで、ひとつの画素が本来持つ「ゆとり」のようなものが失われかねません。

その競争は、「フィルムルック」な映像を求める層とは、逆の方向に向かっていることになります。

デジタルで撮影した映像を「フィルムルック」に見せるには、綺麗に写りすぎることが問題となります。

そのため、動画編集ソフトの機能を使い、たとえば、「ブラー」のエフェクトで、カリカリに写っている映像のピントをわざと甘くしたりします。

ほかにも、画面の周辺光量が落ちたように見える「ビネット」を追加したり、フィルムが古くなって退色したように、色味を暖色や寒色気味にしたりします。このように、撮ったばかりの映像に「ダメージ」を与え、綺麗に写りすぎるデジタル映像をわざと汚します。

ものは試しと、本コーナーで、ソニーのミラーレスを使って[Cine1]ガンマで撮影した映像に「ダメージ」のエフェクトを加えてみました。

フィルムダメージの研究

小さな画面では違いがわからないでしょうか。もっと大胆に「ダメージ」を加えてもいいのかもしれません。

システマティックにカラーコレクション(カラコレ)しただけの動画を、参考のために、下に埋め込んでおきます。これは、ビデオルックな映像の一例といえましょう。

私が求めるフィルムルックな映像とは対極的なルックですね。

Cine1ガンマの研究(2023.1.18)

ふたつの動画を並べて見てすぐに気がつくのは、青空の色です。この違いについてはすでに書きました。

自分なりに、「フィルムルック」に加工した青空のほうが、ポワロで写っていた空の色に近いように思います。

「フィルムルック」に加工するのであれば、[S-Log2]ガンマでなく、[Cine1]ガンマでも実現できそうです。

カラコレ前のCine1ガンマ動画

映像好きとしては、画素競争に背を向け、綺麗すぎる映像に「ダメージ」を与えることも楽しみのひとつになってしまいます。

EASY フィルムルック |コダック 2383 |解決のチュートリアル

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