新年になって本コーナーで最初に更新したときは、写真撮影における露出設定で、「感度分の16」を知っているだけで、晴れた日の外での撮影がぐんと楽になることを書きました。
この実に貴重な設定方法は、昨年の年の瀬、ネットのYouTubeで”2B Channel”を運営されている、プロカメラマンで写真家の渡部さとる氏(1961~)の動画で教えてもらいました。
これは、昨年得た知識の中で最も有益なもののひとつです。
「感度分の〇〇」については、その知識を得て以降、何度か本コーナーで書きました。もう一度ここで繰り返して書いておきます。
ISO感度はいくつでも構いません。シャッター速度を感度と同じ数字の速度にし、あとはレンズのF値をf/16にするだけです。これで、世界中どこへ行って撮影しても、晴れて快晴であれば、真っ青な空が撮影できる、というわけです。
ISO感度が100であれば、シャッター速度は1/100秒。ISO400であれば、1/400秒といった具合です。その上で、F値をf/16にするだけです。
私もこの設定を試して撮影してみましたが、何とかのひとつ覚えでこの設定にするだけで、抜けるような青空に写ります。
この「感度分の〇〇」にはバリエーションがあります。
晴れた空に雲が少しかかってきたようなときは、同じ感度と速度のまま、F値だけを1段下げ(レンズの絞りを開け)、f/11にすると、適正な露出になります。ということで、これは「感度分の11」になりましょう。
この設定で、雪景色を綺麗に撮影できるそうです。関東南部はめったに雪が降らず、雪の積もったところへは行かない私は、まだこの設定は実際に試してはいません。
同じ感度と速度を使ったバリエーションにはもうひとつあります。
それは、「感度分の5.6」です。
ここまで書いたことがわかれば説明がいらないでしょう。それでも説明しておけば、感度と速度を同じように設定し、F値をf/5.6にする設定方法です。
この設定は、日陰を撮影するときに有効です。おもしろいことに、これは晴れた日だけでなく、曇りの日にも有効だそうです。雨の日はどうなのかは、自分で実際に試してみることにしましょう。
これらの設定が写真撮影で有効であることはわかりました。それを頭の中で考えるうち、私は動画撮影時にも応用できるのでは? と思いつきました。
昨日の関東南部の当地は、快晴の空となり、実験するには絶好の日和(ひより)でした。そこで、午後2時過ぎ、庭に出て撮影してみました。その結果の動画を下に埋め込んでおきます。
撮影は、ソニーのミラーレス一眼カメラ(ミラーレス)のα7 IIを使い、24-240ミリのズームレンズで、Logモードにして撮影しています。また、撮影した動画ファイルを、見た目に近いような明度と彩度になるよう、自分なりのカラーコレクションをしました。
色相だけは撮ったままで、手を加えていません。
また、カメラ内で色の出具合を自分で調整することはまったくしていません。工場出荷状態です。
撮影は手持ちで行っています。カメラボディのほか、レンズにも光学手振れ補正が入っており、ブレが低減されているように思います。大きくて重いレンズですが、動画撮影では重宝です。
撮影時のデータを、ソニーの純正ソフト、”Catalyst Brawse”に残るデータを画像にして、下に貼りつけておきます。

録画フォーマットは、趣味で撮影する動画ですので、なるべくファイルサイズを大きくしたくないということで、XAVC Sではなく、AVCHDを選んでいます。ビットレートも16Mbps押さえています。
カメラで設定できるシャッター速度は、1/1600secの次は1/2000secのはずですが、データでは1/1700secとなっています。私は1/1600secを選びましたが、カメラの中で、それが1/100sec速い1/1700secで記録したようです。
動画の撮影におけるシャッター速度は、フレームレートの約2倍程度が適当とされています。
動画は、連続して撮影した静止画によってできています。フィルムのムービーカメラは、1秒間に24コマ撮影します。ということは、1秒あたり、24枚の写真をフィルムで撮影しているのと同じです。
このように撮影された写真を、1秒間に24コマの速度で映写することで、動きのある映像になります。
デジタルカメラでシネマティックな映像作りを目指す人は、フィルムのムービーカメラに倣い、24fpsで動画を撮影する人が多くいます。
フィルムのムービーカメラは、フィルムに1コマずつ画像を定着させるため、回転式のシャッターが使われています。円盤状の回転式シャッターは半円状で、それが交互にフィルム面を通過していきます。
円盤が開いた部分が回転してきたときにフィルム面にレンズからの光が届き、フィルムが感光します。反対に、半円の閉じた部分が回転してくるとレンズの前が塞がれ、フィルムへ光が届かなくなります。その間にフィルムが1コマ送られます。
この動作を、1秒間に24コマ撮影するのであれば、24回繰り返されます。
このような仕組みのため、回転式シャッターの開角度が180度であれば、ムービーカメラにおけるシャッター速度は、必然的に2倍の1/48秒になる、というわけです。
日中、外で写真を撮影しようと思ったとき、1/50秒というシャッター速度は選ばないでしょう。止まっている被写体であればいいですが、動きがあるものであれば、シャッターが開いている間の動きも定着されているため、被写体ブレが生じてしまうからです。
写真においては、特別の意図がない限り、「モーションブラー」は失敗写真になってしまいます。
しかし、それが動画であれば、このモーションブラーが必要不可欠となります。これがあることで、動画を再生した時に、動きが滑らかに見えるからです。
それを得るため、動画撮影時のシャッター速度は低速度であることが望まれます。
それを守り、私も、ミラーレスで動画を撮る時は、24fpsと1/50secをセットで考えていました。
同じ設定でLog撮影をしようとすると、困ったことが起きます。
私が使うα7 IIの場合、最低ISO感度がISO1600です。この感度と1/50secのシャッター速度で日中、陽射しの強い条件で撮影するのは至難の業です。F値をどんなに絞っても、露出オーバーになってしまうからです。
その対策として、動画撮影において、レンズからの光量を下げる効果を持つ、NDフィルターがどうしても必要になります。
そんなことをしていた私の頭に、渡部さとる氏に教えてもらった「感度分の〇〇」を応用できないか? という考えが浮かんだのです。
それで、好天に恵まれた昨日の午後、その設定で撮影して見ると、NDフィルターなしで、適正な露出を動画撮影でも得られることが確認できました。
昨日のその時刻、当地は風が出ていましたが、風にそよぐ木々の動きが、速いシャッター速度にも拘らず、ギクシャクしているようには私には見えません。
その応用で、日陰になっている部分を「感度分の5.6」で撮る、つもりでした。しかし、何を勘違いしたのか、次のような設定で動画の撮影をしてしまいました。
- ISO感度:ISO1600
- シャッター速度:1/400sec
- F値:5.6
設定を間違えたことは、撮影したファイルのデータを見ることで気がつきました。それでも、撮影した動画は、適正に近い露出で撮影できており、カラーコレクションも適正に行えました。
日陰を撮影するのであれば、シャッター速度は1/1600secのままでよかったのです。
どうやら、渡部氏に教えてもらった、露出設定の話が頭の中で混じり合ってしまったようです。
渡部氏は、窓から光が射し込むような条件での撮影は、次のような設定が良いと話されていました。
- ISO感度:ISO400
- シャッター速度:1/60sec
- F値:f/5.6
渡部氏が写真を撮る時における基準のISO感度はISO400にされているようです。それを、ISO1600固定のLogモード撮影では、ISO400より、2段分高感度であることになります。
そこで、F値は固定のままですから、唯一変更できるシャッター速度で2段下げる必要があり、次のような設定で動画を撮影したのです。
シャッター速度は1/1600秒のままで良いのでした。
この設定から、シャッター速度を1/250秒にすれば、窓から陽が射しこむような条件で使えるでしょう。
ほかには、食卓を撮影するときの露出として、渡部氏に次のような設定を教わりました。
- ISO感度:ISO400
- シャッター速度:1/30sec
- F値:f/2.8
この設定は、裸電球ひとつで照らされたような、暗い光の条件であれば、応用できるでしょう。
これを、ISO1600で使うのであれば、基準のISO感度がISO400に比べて2段分高いことを頭に置いて設定しなければなりません。シャッター速度とF値の組み合わせ、幾通りもできます。
仮に次のような設定でもいいでしょう。
- ISO感度:ISO1600
- シャッター速度:1/50sec
- F値:f/4.0
シャッター速度は2倍の1/60秒ではなく、あえて、本来の速度である1/50秒にしてみました。
ともあれ、このように、場面場面での露出設定のパターンを自分で決めておけば、動画撮影時に設定に迷わずに済むでしょう。
晴れた日中に撮影するときは、F値をf/16やf/11まで絞ることになりますが、強い陽射しの下で、絞りを開けて撮る必要性は感じませんので、絞った撮影でも問題ないでしょう。
個人的には、このような露出設定を利用し、動画を気楽に撮影して愉しもうと考えています。