2011/12/27 来る新年に使いたいカメラ・キカイさんの場合

本日も、本コーナーは思いつきの独り語り「気まぐれトーク」の形式にて更新しています。なお、トークは前日の夜に行っています。

本日分の内容につきましては、音声ファイルでご確認下さい。で、そうされない場合は、下にトークを要約して書き起こしていますので、それをお読みになって、トークのだいたいの流れをご想像下さい。

なお、音声ファイルはMP3方式にて紹介しています。再生箇所は前後に自由に移動させることができるますので、下の書き起こしで見当をつけ、聴いてみたい部分だけを“つまみ聴き”するようなこともできます。ご自由にお楽しみ下さい(^ー^)ノ

インディの鞭の気まぐれトーク〔2011.12.26〕

トークを要約した書き起こし

今回も夜にトークをしている。が、今夜(26日)のところは、トークをする予定は全くなかった。

本コーナーの私のトークは「気まぐれトーク」というぐらいで、気が向けばトークをするし、トークをしようと思っていても気が向かなかったらトークをしないという、それこそ気まぐれな形ですることになる。今回は、たまたま「気まぐれの風」が吹き、このようなトークをしてしまったことになる。

トークを始めた時刻は、いつもより30分以上遅い午後8時ちょっと過ぎ。本サイトで夜に更新する「天気コーナー」(現在、本コーナーはありません)の更新を済ませた私は、録画してあったBS-TBSの番組「吉田類の酒場放浪記」をしばらく見、そのまま首尾よく眠ってしまうつもりだった。

なお、この「吉田類の酒場放浪記」という番組だが、私自身はデジタルのBS放送を受信できるようになった昨夏に番組の存在に気づき、以来、ほぼ毎週おつきあいしている。番組は2003年から続いているそうで、すでに丸7年以上続く老舗番組のようだ。

番組はいたってシンプルな店構え。イラストレーターで俳人の吉田類さん(1949~)が全国各地に酒を求め、肴(さかな)を求めて放浪し、出会った酒場で店の主人や客たちと旨い酒と肴で楽しいひとときをすごし、その様子がそのまま紹介される趣向になっている。

毎週、一時間内の番組で四つの酒場めぐりをするが(うち、再放送分がふたつ、三つ?)、ふたつ目の酒場まで見たところで急にトークをしたくなった。吉田さんのおしゃべりと番組の作りのちょうど良いぬる燗(?)が見ていた私もリラックスさせ、トークの気分を呼んだのかもしれない、ということにしておこう。

そんなわけで、気まぐれの気まぐれでトークをスタートさせてしまったため、特別何か話したいことがあって始めたのではない。もっとも、いつものトークも今回とほとんど変わらない。ということは、いつも何の目的もなくダラダラ話していることになりそうだ。

そうはいっても、何かしらトークの芯のようなものは必要だろうと、今発売中のカメラの月刊誌『アサヒカメラ』を手元に持ってきた。

今月号は「増大号」とつけていながら、中身はいつもの号より薄く感じる。また、表紙の写真が個人的にはあまり受け付けない。若い女の子。今は「女子」などといういい方が流行っていると聞く。

まあ、この「女子」といういい方について個人的な感想を述べておけば、「おひとりさま」に似て、女性をおだて上げる戦略的な匂いを感じないではない。

昔は、女子といえばせいぜい中学・高校ぐらいまでの女子生徒を指していたと思うが、今は三十路(みそじ)に達した元女子までも「女子」「女子」と祭り上げているらしい。結局のところ、大切な購買層である女性たちに「女子=自分はまだまだ若い」と錯覚させ、それを購買意欲につなげたいという売り手側の思惑以外の何ものでもないだろう、と元男子の私は邪推してみたりする。

それはともかく、『アサヒカメラ』の表紙を飾っている女性たちは正真正銘の女子といっていいだろうか。揃いも揃って、下着姿。5人揃えば、中には自分の好みの女子がいたりするものだろうが、ひとりもいない。個人的にはカルそうな女子は好みではない。と、ここで私の好みは持ち出すべきではなかった。

表紙と巻頭を飾る写真を撮ったのは、あのイメージだけ巨匠の篠山紀信1940~)。人それぞれ好みがあるだろうが、私は、申し訳ないが、彼はあまり好きな写真家ではない。今回の写真も、特別出来がいいようには思えなかった。紀信ファンの方には重ね重ね申し訳ない。

『アサヒカメラ』は毎号特集を組むが、今発売中の1月号は、新年にあわせて「2012年 初夢カメラ」という大枠の特集をまず組み、その下に三つほどコーナーを設ける形を採っている。

その一番最初の特集について話してみることにする。そこでは、「2012年、コンテスト選者が使いたいカメラ」ということで、プロの写真家のかた5人と編集部が選んだ5台のカメラについてそれぞれの思い入れが語られている。

ちなみにこの「選者」というのは、カメラ月刊誌に付き物の写真コンテストで、入賞作品や入選作品を選ぶ選者を指す。現在、『アサヒカメラ』には次の5部門がある(カッコ内は現在の選者を務める写真家|2012年に使いたいカメラ)。

この中で、「組写真」の部門だけ選者の名前の紹介がまだ済んでいなかった。ということで、その選者を紹介しながら、その選者が来たるべき新しい年に使いたいというカメラの話に持っていくことにする。

ちなみに「組写真」というのは、プロの写真家がカメラの雑誌などで作品を発表するときは1枚でなく、数枚の写真を組んで紹介するように、素人の写真愛好者にも自分の作品を発表するような形で応募を募っている。

『アサヒカメラ』は3枚で組むことになっている。どのような3枚を選ぶかは応募者の自由。3枚の写真を使って何かストーリーを作ってもらってもいいだろうし、ひとつのことを3枚の写真を使って多角的に捉えることもできるだろう。

その選者を今務めておられるのは「キカイ」さん。

耳からだけの音で聞くとどんな字をあてるのかわからないかもしれない。私は、「キカイ」さんの作品を『アサヒカメラ』誌上などで目にしているが、はじめは「オニカイ」さんと読むのかと思ったりした。

漢字で書けば「鬼海」。鬼海弘雄(きかい・ひろお)19452020)が現在、『アサヒカメラ』の組写真部門の選者をされている。

正しい読み方がわからないといえば、鬼海さんの出身地名も、知らない人にはなかなか一度で正確に読むのが難しい。山形県のほぼ中央にある寒河江が鬼海さんの出身地。「さがえ」と読むそうだ。

鬼海さんは、先の大戦が終わった年に生まれているが(ちなみに、篠山紀信はその5年前の1940年の生まれ)、大学を卒業したあと、はじめは生まれ故郷に戻って県職員の職に就いたものの、その後どのようないきさつでか、トラックの運転手や造船所の工員、遠洋マグロの漁船員などの仕事をされたあと、プロの写真家になられたようだ。鬼海さんが主に撮影するのは市井の人々を真正面から捉えたモノクロームのポートレイト。

篠山紀信のような小細工は一際せず、真正面から被写体に向かい合う姿勢で写真を一枚一枚撮っている印象だ。

これは私の勝手な想像だが、様々な職業を経験したことが影響しているように思う。いろいろな世界を自分の眼で見、世の中にはいろいろな人がいることを知った上で撮すポートレイト写真は、そうした経験を持たない人より深くなるだろうと思う。様々な職業に就いたことが、組写真の選者にも活かされているかな?

その鬼海が新年に使いたいカメラとして選んでいるのは、スウェーデン生まれのカメラ。「ハッセルブラッド 500CM」。

鬼海が写真に興味を持つきっかけは、ダイアン・アーバス19231971)という女性の写真家の作品だそうだ。

Masters of Photography Diane Arbus Part 1

彼女が作品作りに使っていたのがこのカメラだったのだろうか。使うフィルムは、一般的な「135フィルム」ではなく、「ブローニー・フィルム」といわれるサイズのより大きなフィルムを使う中判カメラに属する。

ハッセルブラッドのカメラは、このフィルムを6×6㎝のサイズで使い、ピントグラスに結ばれる画像も実際に撮影できる写真も真四角になる特徴を持つ。

それだからか、カメラの形も四角い箱形。ボディの真上に付いているピントグラスを真上から覗き込むようにして構図を決め、フォーカスを合わせ、シャッターを切るスタイルになる。

ハッセルブラッド500CM+Cプラナー80mmF2.8

私もこのカメラには昔から憧れがあり、いつかは使いたいと思っていたが、実現できないまま年月は流れ、気がつけばデジタルの時代へと変わっていた。

この中判カメラを、鬼海は新年の幕開けに使い始めるわけではない。今も使うハッセルブラッド500CMを手に入れたのは1975年だそうだから、鬼海が30歳の年になる。

当時、そのカメラは60万円。今から36年前のことで、当時の物価水準を考えれば、個人が手に入れるにはあまりに高価なカメラだったろう。鬼海は並行輸入品を手に入れたそうだが、それでも30万円。

最後は、大学時代の恩師の「道具との出会いは単なる弾みだから、迷うことなく(自分が使いたいものを手に入れよ)」の助言に後押しされ、恩師にお金を借りて手に入れたという。

以来、この1台と1本のレンズである「プラナー 80ミリ F2.8」を40年近く使い続けている。だから、年が改まるからといってほかのカメラに浮気する考えはまったくなく、40年近く一緒に活動を続けてきたカメラとレンズを迷うことなく選んでいることになる。そこまで惚れ込んだカメラについて、鬼海は次のように述べている。

ハッセル(ブラッド 500CM)はなにしろホールドがいい。持っていてしっくりくる。また、ピントグラスがのぞきやすい。そしてシャッター音がいいんだね。あのバシャッという音を聞くと、いかにも写真を撮っていますという気分にさせてくれる。

毎日そのカメラに接するうち、今では体の一部のように感じているかもしれない。このカメラは故障が多いというような話もあるようだが、鬼海はアタリの個体に巡り会ったせいか、「一度だけシャッターがバラけることが起こった」以外は故障知らずで動いてくれているそうだ。

だからからか。「もうこいつは死ぬまで使うね」と鬼海にいわせている。

写真家によって道具のカメラに対する感じ方、考え方は千差万別。新しいカメラが出るとそれがすぐに気になる人もいれば、鬼海のように、昔ながらのカメラをずっと使い続ける人もいる。結局は、その人が使いたいものを使いたいように使えばいいだけの話で、正解はない。

そうした中で、今回は1台のカメラにとことん惚れ込んでいる鬼海の例をお話ししてみた。

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